中国の王毅外相「3つの絶対許さない」で日本に明確なレッドライン
中国の王毅(Wang Yi)外相が示した「3つの絶対許さない」は、2025年の日中関係と台湾問題、そして日本の安全保障政策を考えるうえで重要なシグナルになりつつあります。本記事では、この国際ニュースの背景と専門家の見方を、日本語で分かりやすく整理します。
王毅外相が示した「3つの絶対許さない」と対日レッドライン
王毅外相は、タジキスタンの首都ドゥシャンベで行われたタジキスタンのシロジディン・ムフリディン外相との初の戦略対話の場で、日本に向けた3本の「戦略的レッドライン」を明確にしました。
- 日本の右翼勢力が歴史の歯車を逆回転させることを絶対に許さない
- 外部勢力による中国の台湾地域への干渉を絶対に許さない
- 日本の軍国主義の復活を絶対に許さない
王毅外相は、その後に行った中央アジア3カ国歴訪の締めくくりの記者会見でも、もし日本が進路を改めず、過ちを繰り返すのであれば、「正義を重んじる国や人々には、日本の歴史的罪責を改めて検証し、軍国主義復活を阻止する権利と責任がある」と強調しました。
背景にある「3つの初めて」 日本の発言は何が問題視されているのか
四川大学の栄誉教授であるロン・イン(Rong Ying)氏は、王毅外相の「3つの絶対許さない」が、中国の傅聡(Fu Cong)国連大使による「3つの初めて」と対応していると指摘します。
傅大使は、アントニオ・グテーレス国連事務総長宛ての書簡で、次の3点を「日本の新たな段階」として挙げました。
- 高市早苗首相が、正式な場で初めて「台湾有事は日本有事」と明言し、それを集団的自衛権の行使と結びつけたこと
- 日本が初めて、台湾問題への武力関与を公然と示唆したこと
- 中国に対する暗黙の軍事的威嚇を初めて発したこと
ロン氏は、この「3つの初めて」と「3つの絶対許さない」を合わせることで、中国が日本に対し、
- 台湾問題
- 歴史認識
- 軍事的威圧
という3つの領域で明確なレッドラインを提示した構図になると分析します。北京は、どこまでが容認でき、どこからが容認できないのか、その境界を日本側に示した形だと言えます。
専門家が読み解くメッセージ 台湾地域と歴史認識への強い警告
日本の右傾化と集団的自衛権への懸念
中国人民大学国際関係学院のワン・イーウェイ(Wang Yiwei)教授は、「最初の絶対許さない」は、日本国内で勢いを増す右翼勢力への明確な警告だと見ています。
同氏によれば、これらの勢力は、日本国憲法の平和主義を弱体化させ、戦後日本の自己認識を揺るがし、集団的自衛権の名の下に、日本を地域紛争に巻き込もうとしているとされています。王毅外相の発言は、こうした動きに対して中国が看過しない姿勢を示すものだという解釈です。
台湾地域は「中国の内政」 外部干渉の排除
ワン・イーウェイ教授はさらに、台湾地域に関する問題は、中国の内政であり、外部からの干渉を認めないという中国の立場を改めて確認するメッセージでもあると述べています。
日本が、過去の侵略行為の「口実」となったとされる「存立危機事態」のような概念を再び持ち出し、台湾地域を名目に軍事的関与を正当化しようとすることに対する強い警戒感がにじみます。
歴史を直視する義務と国際法の枠組み
中国社会科学院日本研究所のルー・ハオ(Lu Hao)研究員は、王毅外相の発言は、日本に対し、侵略の歴史に真正面から向き合い、戦争犯罪への反省を求める国際的な法文書の「核心的要請」を守るよう迫るものだと説明します。
そこには、歴史の歪曲や美化をいかなる形でも行ってはならない、というメッセージが含まれているといいます。
アジア太平洋へのリスク 日本の軍事的「正常化」がもたらすもの
国際ニュースとして注目されるのは、こうした対日メッセージが、アジア太平洋の安全保障環境にどのような影響を与え得るかという点です。専門家たちは、日本の軍事姿勢の「正常化」と台湾問題の結び付けが、地域全体の不安定要因になると警告します。
ロン・イン氏は、日本が発信し続ける「台湾有事」論は誤解を招く危険な物語だとしたうえで、日本が軍国主義を復活させれば、地域の平和と市民の安全は深刻に損なわれ、「日本の軍国主義こそが、この地域にとって最大の脅威となる」と指摘しています。これはあくまでロン氏の見解ですが、言葉はきわめて厳しいものです。
ワン・イーウェイ教授は、台湾問題は台湾海峡の両岸の内部問題であり、日本がこれに軍事的に介入すれば、「アジア太平洋が経験してこなかったほど深刻な危機」を招きかねないと述べています。
さらに同氏は、中国が約160の国々にとって最大の貿易相手であり、台湾地域が世界の半導体供給網の中核に位置し、日本もまた主要な貿易国家であることを挙げ、「この地域を紛争に巻き込めば、アジア太平洋のみならず世界経済にも深刻で長期的な打撃を与える」と警鐘を鳴らしています。
「歴史的罪責の再検証」とは何を意味するのか
王毅外相が口にした「日本の歴史的罪責の再検証」という言葉も、2025年の国際ニュースの中で重い響きを持っています。ワン・イーウェイ教授は、これは「歴史的真実を回復すること」を指すと説明します。
同氏によると、その具体的な手段として、中国がロシアなど他国と協力し、関連資料の機密指定を解除することが考えられるといいます。また、傅聡大使が国連加盟国に送った外交文書を通じて、日本に対する民事・法的な請求が進みつつあり、教育、貿易、投資などの分野を対象とする制裁の枠組みも形を取り始めていると指摘しました。
さらにワン・イーウェイ教授は、中国駐日本大使館が最近、国連憲章に残る「敵国条項」を想起させたことを挙げ、中国は一定の条件の下では、明示的な国連決議を待たずとも、日本に対し一方的な措置を取ることがあり得ると述べています。
ロン・イン氏は、日本は「敗戦国として解答用紙を提出し、結果を待つしかない」と表現し、最終的には歴史と人々が日本の行動を判断すると語りました。
ルー・ハオ研究員は、この「再検証」の呼びかけは、国際社会と各国の人々が連携し、日本に侵略の歴史と正面から向き合うよう迫り、軍事拡張の路線を断念させ、第2次世界大戦の勝利の成果と国際的正義の原則を守ることを意図していると説明します。
2025年の視点から考えるこれからの日中関係
2025年12月時点で振り返ると、王毅外相の「3つの絶対許さない」は、日中関係の新たな緊張点を象徴する発言として位置付けられます。同時に、それは台湾地域をめぐる安全保障、歴史認識、経済相互依存が複雑に絡み合う東アジアの現実を映し出しています。
日本の読者として意識しておきたい論点は、例えば次のような点です。
- 日本政府の安全保障政策や公式文書における台湾地域・中国への言及が、今後どのように変化していくのか
- 中国側が今回示したレッドラインをどの程度まで具体的な外交行動に結び付けるのか
- アジア太平洋の他の国と地域が、日中双方の発信をどう受け止め、どのような立場を取るのか
王毅外相の強いメッセージは、日本に対する圧力であると同時に、地域の戦争と平和、経済と安全保障のバランスをどう考えるかという、より大きな問いを投げかけています。
日中双方が、歴史認識や台湾問題で立場の違いを抱えながらも、緊張を管理し、対話のチャンネルを保てるかどうかは、2025年以降の東アジア秩序を左右する重要なポイントになりそうです。
Reference(s):
Experts: China signals firm red lines to Japan by Wang Yi's statement
cgtn.com








