中国と南ア、アフリカ近代化支援イニシアチブ G20ヨハネスで共同発表
中国と南アフリカ政府は2025年11月22日、G20ヨハネスブルク・サミットで「アフリカ近代化支援協力イニシアチブ」を共同発表しました。アフリカ連合のG20正式参加や国連創設80周年という節目の年に、アフリカの近代化をどのように支えるのか、その青写真が示されています。
G20ヨハネスブルクで生まれた新たな枠組み
今回のイニシアチブは、南アフリカ共和国政府と中華人民共和国政府が、2025年11月22日にヨハネスブルクで開かれた第20回G20サミット期間中に共同で打ち出したものです。公式名称は「アフリカ近代化支援協力イニシアチブ」で、アフリカの近代化を後押しする包括的な協力の方向性を示しています。
文書は、アフリカ連合が掲げる長期開発ビジョン「アジェンダ2063(The Africa We Want)」と、その7つの願望、さらに域内貿易を加速させるアフリカ大陸自由貿易圏の実現を強く後押しすることを明記しています。また、アジェンダ2063を具体化するための「第2次10カ年実施計画(STYIP)」を重要な節目と位置づけ、着実な実行へのコミットメントを再確認しました。
イニシアチブは「近代化はすべての国が追求しうる共通の目標であり、不可侵の権利だ」と位置づけ、いかなる国も近代化への道のりから取り残されるべきではないと訴えています。近代化を、アフリカの経済・社会・技術面の変革を促し、包摂的で持続可能な発展を実現する「道」であり「エンジン」だと捉えている点が特徴です。
前文では、中国の役割にも触れています。G20リオデジャネイロ・サミットで示された「グローバル発展のための八つの行動」や、G20杭州サミットで採択された「アフリカと後発開発途上国の工業化支援イニシアチブ」への中国の貢献を評価。さらに、「中国式現代化」がグローバル・サウス、とりわけアフリカにとって新たな選択肢となり得るとし、中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)がこの25年間、アフリカの近代化を後押ししてきたと高く評価しています。
また、外交関係を有する53のアフリカ諸国からの輸入品について、100パーセントの税目を対象とするゼロ関税措置を中国が打ち出したことにも言及し、一方的な関税措置が保護主義を強め、グローバル・サウスの国々に困難をもたらしているとの懸念が示されています。
アフリカ連合(AU)のG20加盟を歓迎し、その地域統合の取り組みを支持するとともに、議長国としてアフリカの優先課題をG20議題に位置づけた南アフリカの役割も評価しています。そのうえで、「幅広い協議と共同貢献、共通利益」の原則や「開かれ、グリーンでクリーンな協力」のビジョンに基づき、中国・アフリカの質の高い一帯一路協力とアジェンダ2063の連携を一層強化していく方針が示されています。
さらに、創設80周年を迎える国連に対しては、2030アジェンダの実施加速や、アフリカへの資金・技術・能力構築支援の拡大、国際社会におけるアフリカの発言力・代表性の強化を求めています。グローバル発展イニシアチブの枠組みのもとで戦略協調を深め、「共有未来を持つ発展のグローバル共同体」を築くことも呼びかけました。
アフリカ近代化を支える6つの原則
イニシアチブは、国際社会がアフリカの近代化を支援する際に守るべき「協力の原則」として、次の6点を掲げています。
- 公正と衡平:アフリカ諸国の主権と領土保全を尊重し、アフリカの人々が自ら発展の道や社会制度を選ぶ権利を認め、内政不干渉の原則を徹底すること。
- 開放性とウィンウィン:広範な協議と共同貢献、共通利益の原則に基づき、アフリカ諸国がグローバルな産業・バリュー・サプライチェーンにより良く統合され、経済のグローバル化の果実を共有できるよう支援すること。
- 人間中心:開発の過程で人々の生活を保障・改善し、生存と発展の権利を重視するとともに、ガバナンス、民主、人権、正義、法の支配が尊重されるアフリカを目指すこと。
- 多様性と包摂性:近代化の過程で各国が固有の文化的特徴を伸ばし、文化的自信を高めることを支援しつつ、人類共通の価値を提唱し、文明間の対話と相互尊重、共存を促すこと。
- 持続可能な発展:人と自然の生命共同体というビジョンに基づき、経済発展、環境保護、社会発展を統合的に進めること。共通だが差異ある責任の原則を踏まえ、公平で開かれた形でアフリカのグリーン・低炭素転換を支援すること。
- 平和と安全の重視:共通・総合・協調・持続可能な安全保障観に立ち、「アフリカの問題にアフリカの解決を」という理念を支持し、対話と協議による紛争解決と、包摂的な発展を通じた紛争の土壌解消を図ること。
協力の重点分野:6つの近代化ビジョン
具体的な協力分野として、文書は6つの観点からアフリカの近代化を支えるとしています。それぞれのポイントをかいつまんで見ていきます。
1. 公正で公平な近代化の実現
まず「公正で公平な近代化」では、アフリカ各国が自国の文化的特徴や発展ニーズに基づいて独自の近代化モデルを模索することを支持しています。そのうえで、途上国同士がガバナンスや近代化、貧困削減に関する経験を共有し、コンセンサスを形成することを呼びかけています。
協力の際には「アフリカ発、国内主体性、アフリカ主導」という原則を掲げ、三国間・多国間協力でもアフリカ側の主導性を尊重する姿勢を明確にしました。また、国際金融システムの改革を加速し、国際金融機関や民間債権者による債務救済や猶予への積極的な参加を促すとともに、アフリカ開発銀行の役割強化やアフリカ向けの開発資金拡充も訴えています。
2. 開かれたウィンウィンの近代化
「開かれた近代化」では、中国とアフリカ諸国との間で、共同発展を目指す経済パートナーシップ協定の締結を進めることを支持しています。その狙いは、互恵的な形で共通の発展を実現することにあります。
また、アフリカのインフラ開発の青写真とされる「アフリカのインフラ開発計画第2期優先行動計画(PIDA-PAP2)」への支援を強調し、世界水準で強靱なインフラ整備を通じて地域統合と工業化を後押しする方針を示しました。
資源分野では、グリーンインフラやグリーンマイニング(環境負荷の少ない鉱業)での国際協力拡大を提唱。製錬技術の向上や、鉱業の上流・下流産業と関連インフラの整備を通じて、アフリカの鉱物資源の付加価値を高めることを目指します。その際、透明性が高く安定した重要鉱物のバリューチェーンを構築し、資源が地域の繁栄や持続可能な発展に資するよう、経済・社会・環境面での堅固なセーフガード(保護措置)を求めています。
さらに、再生可能エネルギーへの投資拡大やエネルギー施設の高度化、グリーン産業、電子商取引と決済、科学技術、人工知能などの分野でイノベーション協力を進め、高品質な協力を推進していくとしています。
3. 人間中心の近代化
「人間中心の近代化」では、まず食料安全保障への対応が挙げられています。アフリカにおける伝統的な食用作物の生産拡大や、肥料・農薬・小型農業機械の現地生産を、市場メカニズムを通じて支援する考えです。
保健分野では、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(すべての人が必要な医療にアクセスできる状態)の推進やHIV/エイズ対策への資金・技術支援を継続すること、アフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC)やアフリカ医薬品庁(AMA)の発展、現地の製薬産業の育成を後押しすることが掲げられています。
さらに、貧困削減や農村開発の分野で協力を強化し、各国の実情に応じた貧困削減の取り組みを支えるとしています。企業に対しては、アフリカの製造業への投資拡大と地域的なバリューチェーン構築、資源の現地加工・付加価値化を支える公正なパートナーシップの構築、社会的責任の履行、技術移転や人材育成などの経験共有を呼びかけています。
4. 多様で包摂的な近代化
文化と価値観の面では、ウブントゥの哲学や汎アフリカ主義、「人類運命共同体」のビジョン、平和五原則といった理念を称賛し、グローバル・サウスの近代化に長く深い精神的支えを提供し得るものだと位置づけています。
また、グローバル文明イニシアチブを評価し、「断絶より交流を、衝突より相互学習を、優越より共存を」という考え方を支持。教育、観光、スポーツ、若者や女性、シンクタンク、メディア、出版、文化など幅広い分野で、アフリカとの交流と協力をさらに拡大することを提案しました。
中国とアフリカの研究者が50カ国から参加して共同発表した「アフリカ・中国ダルエスサラーム・コンセンサス」にも触れ、今後も共同研究を一層拡大していく意向が示されています。
5. 環境と調和した近代化
気候変動の文脈では、国連気候変動枠組み条約、京都議定書、パリ協定、COP30の成果などの目標と原則の重要性を再確認し、各国が自国の事情に基づき、公正で秩序立ち、衡平な形でエネルギー転換に取り組むアフリカの努力を尊重するよう求めています。
先進国に対しては、政府開発援助(ODA)と気候資金に関する約束の履行を強化し、アフリカへの資金・技術・能力構築支援を増やすべきだと明確に要請しています。また、中国が南南協力や一帯一路の枠組みのもとで進めてきた気候変動対応の実務的な取り組みを評価し、グリーン開発におけるアフリカとの協力を強化して、経済・社会・環境の調和ある発展を促すことを呼びかけました。
6. 平和と安全に支えられた近代化
平和と安全保障では、中国がグローバル安全保障イニシアチブの枠組みの下でアフリカと進めてきた先駆的な協力や、アフリカの角における平和と発展に関する構想の積極的な実施、アフリカ側の要請に基づく地域の热点問題の仲介などを評価し、アフリカの平和と安定への貢献を高く評価しています。
国際社会に対しては、アフリカ諸国の集団安全保障メカニズム構築を支援し、国連安全保障理事会決議2719に基づき、アフリカ主導の平和支援活動への財政支援を行うよう求めています。また、世界の対テロ資源をアフリカにより多く配分し、テロ対策の政治化に反対するとともに、薬物・武器・人身取引などの越境組織犯罪に対抗するための法執行協力の強化も呼びかけました。
さらに、国連および安全保障理事会における途上国、特にアフリカ諸国の代表性拡大を訴え、中国が安保理改革においてアフリカの期待に応える特別な取り決めを優先課題として支持する立場を明確にしています。
なぜ今、「アフリカ近代化支援」なのか
文書全体を通じて浮かび上がるのは、「アフリカの近代化はアフリカ自身が主導しながらも、国際社会が協調して支えるべき共通課題だ」という認識です。アジェンダ2063やアフリカ大陸自由貿易圏といった大きな構想を実現するには、インフラ、産業、人材、制度、そして平和と安全を含む包括的な支援が不可欠だという問題意識がにじみます。
同時に、国連創設80周年と2030アジェンダの実施期限が近づく中で、開発と気候変動、平和と安全保障を切り離さずに捉えるアプローチが強調されています。イニシアチブは、グローバル発展イニシアチブ、グローバル安全保障イニシアチブ、グローバル文明イニシアチブといった枠組みと連動しながら、グローバル・サウスの連帯を打ち出す内容になっています。
読者が押さえておきたい3つの視点
今回の「アフリカ近代化支援協力イニシアチブ」は、日本を含む国際社会に対しても、次のような問いを投げかけているように見えます。
- アフリカ発・アフリカ主導という原則を尊重しながら、各国はどのように近代化支援に関わるべきか。
- 工業化や資源開発と、グリーン転換や気候変動対策をどのように両立させるのか。
- 開発、平和、安全保障、文明間対話を一体で捉えるアプローチは、今後の国際秩序やグローバル・ガバナンスのあり方にどのような影響を与えるのか。
アフリカの近代化をめぐる議論は、遠い地域の話にとどまりません。グローバル・サウスが国際社会の中でどのような位置づけを得ていくのか、そして世界全体の持続可能な発展をどのように実現していくのかを考えるうえで、今後の動向を丁寧に追っていく必要がありそうです。
Reference(s):
Initiative on Cooperation Supporting Modernization in Africa
cgtn.com








