少林寺カンフーで文化交流 世界の初心者を育てる国際クラスの素顔 video poster
何世紀にもわたって受け継がれてきた少林寺のカンフーは、いま世界各地から集まる弟子たちにどのように伝えられているのでしょうか。少林寺の国際クラスで指導にあたるコーチ・Shi Yanxiang(シー・ヤンシアン)さんは、「本物の基準」を守ることこそが、文化交流を本物の学びへと変える鍵だと考えています。
世界から弟子が集まる「少林寺国際クラス」
中国の知恵とされるカンフーや禅の精神を学ぼうと、少林寺の国際クラスには、文字通り世界中から「完全な初心者」が集まります。武道経験のない社会人や学生もいれば、映画やアニメでカンフーに憧れた人もいます。
Shi Yanxiangさんは、そうした多様な背景を持つ弟子たちを受け入れながらも、少林寺の伝統そのものを変えてしまうことはしません。あくまで軸は「少林の精神」であり、そのうえで一人ひとりの出発点に合わせた指導を行っています。
「本物」であることが文化交流の条件
Shi Yanxiangさんは、「文化は、本物の基準が守られているときにこそ本当に交換される」と考えています。形だけを真似る「体験」にとどまってしまえば、それは娯楽としての消費で終わってしまいます。
彼が重視するのは、少林寺の本質を崩さないことです。動きの正確さだけでなく、礼節、呼吸、集中力、そして長期間の鍛錬を前提とした心構えまで含めて「少林カンフー」ととらえます。その本質が守られているとき、弟子たちの学びは言葉や国境の壁を超え、中国文化への理解へとつながっていくといいます。
そうして初めて、弟子たちは中国の知恵や価値観を、自分の身体と経験を通じて実感することができます。文化が「情報」ではなく「生きた体験」として交換される瞬間です。
初心者をカンフーマスターへ導く指導術
国際クラスに来る多くの人は、いわば「カンフーのルールも知らない完全なルーキー」です。そこから本格的な修行者へと成長していく過程で、Shi Yanxiangさんは次のようなポイントを大切にしているとされています。
- 徹底した基礎づくり
まずは柔軟性や姿勢、立ち方といった基礎から始めます。派手な技に飛びつくのではなく、地味な反復を通じて体と心の土台をつくっていきます。 - 型と礼節をセットで教える
蹴りや突きの「かたち」だけでなく、あいさつや礼、道場でのふるまいも重視します。技と礼節がそろって初めて、少林カンフーの一部を身につけたと言える、という考え方です。 - あきらめない心を育てる
カンフーのトレーニングは厳しく、筋肉痛や疲労は避けられません。Shi Yanxiangさんは、その「つらさ」こそが少林の精神に触れる入口であり、粘り強さを身につけるチャンスだと見ています。
こうしたプロセスを通じて、初心者たちは少しずつ技を身につけていきます。しかし、目標は単に高度な技ができるようになることではありません。自分の限界を乗り越えようとする姿勢そのものが、「カンフーマスター」への道だとされているのです。
少林寺で起きている文化交流のかたち
Shi Yanxiangさんが強調するのは、カンフーの鍛錬を通じて、弟子たちが中国の知恵と向き合うことです。そこには、次のような学びが含まれています。
- 身体を通じた理解
言葉で説明される哲学や歴史だけでなく、毎日の稽古の積み重ねを通じて、弟子たちは忍耐や集中といった価値を「体で知る」ようになります。 - 粘り強さへの共感
厳しいトレーニングの背景には、長い年月をかけて技と精神を磨いてきた人々の歴史があります。その粘り強さは、国や文化を超えて共感されるものです。 - 相互尊重としての文化交流
弟子たちは中国文化への敬意を学び、少林寺側は多様な背景を持つ人々と向き合います。そこに生まれるのは、一方的な「文化輸出」ではなく、双方向の対話としての交流です。
こうしたプロセスが積み重なることで、少林寺の国際クラスは、観光でもイベントでもない「日常としての国際交流」の場になっていきます。
私たちの日常に引きつけて考える
少林寺の国際クラスで起きていることは、遠い世界の話のように聞こえるかもしれません。しかし、その根底にある問いは、私たちの生活にもつながっています。
- スキルだけでなく、その背景にある価値観や歴史をどこまで理解しようとしているか。
- 短期的な成果ではなく、長く続けるプロセスそのものを大事にできているか。
- 別の文化に触れるとき、それを「消費」していないか、それとも「学び」として受け止めているか。
Shi Yanxiangさんが示すのは、「本物の基準」を守りながら門戸を開き続けるというスタンスです。その姿勢は、語学学習やビジネス、クリエイティブな活動など、私たちが何かを学び、伝えようとするときにもヒントを与えてくれます。
世界各地から集まる初心者たちが、少林寺で汗を流しながら中国文化の深い部分に触れていく。そのプロセスこそが、国境を越える時代の新しい文化交流のかたちなのかもしれません。
Reference(s):
The Man Who Turns Rookies into Kung Fu Masters | The Spirit of Shaolin
cgtn.com








