中国が軍備管理白書を公表 核政策とAI・宇宙安全保障をどう位置づけるか
中国の国務院新聞弁公室は11月27日、最新の白書「新時代の中国の軍備管理、軍縮、不拡散」を公表しました。国際ニュースとして注目されるこの文書は、中国の軍備管理や核政策、そして宇宙・サイバー・AIといった新たな安全保障分野での立場を体系的に示しています。
白書の概要:中国の軍備管理政策を包括的に整理
今回の白書は、序文と結論、付録に加え、以下の五つのパートで構成されています。
- 緊迫する国際安全保障環境の分析
- 中国の軍備管理・軍縮・不拡散に関する立場と政策
- 国際的な軍備管理への具体的な貢献
- 宇宙・サイバー・人工知能(AI)など新領域の安全保障ガバナンス
- 不拡散と平和利用をめぐる国際協力の強化への呼びかけ
白書は、中国の政策と実務を整理するとともに、宇宙空間やサイバー空間、AIなど「新時代」の安全保障課題についての考え方も打ち出しています。全体を通じて、中国は「世界平和の建設者、世界発展の貢献者、国際秩序の擁護者であり続ける」と強調しています。
「防御的な国防政策」と国防費の位置づけ
白書はまず、中国の国防政策が「防御的性格」を持つことをあらためて明記しています。これは軍事力整備や軍事行動の基本的な指針であり、攻撃ではなく防衛と抑止に重点を置くという立場です。
国防費については、「公開性」「透明性」「合理性」「節度」を掲げたうえで、国内総生産(GDP)に占める割合で見れば、軍事力の大きい国々と比べて相対的に低い水準にあると説明しています。軍拡競争ではなく、必要最小限の防衛力を維持するという姿勢を示した形です。
核政策:先制不使用と「最小限の抑止力」
白書の中でも、とくに国際社会の関心が高いのが核政策です。中国は次のような立場を改めて打ち出しました。
- 核兵器の「先制不使用」を一貫して堅持する
- 核戦力は国家安全保障に必要な「最小限の水準」にとどめる
- 核兵器の安全な管理・運用・統制を重視する
白書は、中国が他国に対して核兵器による威嚇を行ったことはなく、自国領土外に核兵器を配備したことも、他国に「核の傘」を提供したこともないと述べています。「中国の核兵器は他国を脅かすためではなく、防衛と自衛のためのものだ」と位置づけています。
さらに、中国は核兵器国5か国(中国、フランス、ロシア、英国、米国)に対し、「相互の核兵器先制不使用」の約束を結ぶよう呼びかけています。白書によれば、こうした合意は戦略的な誤算を減らし、核軍拡競争を防ぎ、世界的な戦略の安定に資するとしています。
不拡散とミサイル・化学兵器への対応
核不拡散と原子力の平和利用
大量破壊兵器の不拡散をめぐって、白書は「政治的・外交的手段による解決」を重視する立場を示しています。制裁や圧力よりも対話や交渉を通じて核問題を処理していくべきだという考え方です。
同時に、原子力エネルギーの平和利用の権利を支持するとし、科学技術の平和利用を各国が安全かつ責任ある形で進めるための国際協力を推進していくと述べています。
ミサイル・ミサイル防衛
ミサイルとミサイル防衛システムについて、中国は「他国の正当な安全保障上の利益を損なう配備」に反対する姿勢を明確にしました。ミサイル技術はあくまで自衛目的に限定されるべきだとし、軍事的優位を追求するような配備や技術開発に対して懸念を示しています。
化学兵器と日本への呼びかけ
化学兵器をめぐっては、中国が化学兵器禁止条約(CWC)に基づく義務を履行していることを説明したうえで、条約の枠組みに沿って関連する国際問題を処理すべきだと指摘しています。
そのうえで白書は、日本が第二次世界大戦中に中国に遺棄した化学兵器について言及し、「戦後に2,000人以上の中毒被害をもたらし、人命・財産、環境に深刻な脅威を与えてきた」としています。日本に対し、これら遺棄化学兵器を完全に廃棄することは、「歴史的・政治的・法的な責任」であり、CWCが定める国際的な義務でもあるとし、速やかな処理を促しています。
宇宙・サイバー・AI:新たな安全保障フロンティア
今回の白書が特徴的なのは、宇宙空間、サイバー空間、AIなど「新たな領域」を安全保障とガバナンスの観点から明確に取り上げている点です。これらは人類の発展にとってのフロンティアである一方、新たな戦略的リスクや対立の火種にもなり得ます。
中国は、こうした新領域について次のような枠組みづくりを提案しています。
- 全ての国が幅広く参加する「普遍的な」ガバナンス枠組みをつくる
- 国連が中核的な役割を果たし、国際ルールや基準を形成する
- その過程で、途上国の代表性と発言力を高める
デジタル技術やAIをめぐる議論では、先進国と途上国の間でルール形成の主導権をめぐる緊張も指摘されてきました。白書は、そうした中で多くの国が参加する包摂的なガバナンスを強調し、力の論理ではなく協議と合意に基づく仕組みを打ち出そうとしています。
国際協力と「多極化する世界」へのメッセージ
白書の結びでは、「世界がどう変わろうとも、中国は世界平和と安全を守る揺るぎない力であり続ける」と強調し、国際協力の拡大を呼びかけています。具体的には、次のようなビジョンが示されています。
- 「平等で秩序ある多極化した世界」の構築
- 万人に利益をもたらす「包摂的な経済グローバル化」の推進
- 「人類運命共同体」の構築を進めるため、平和と安全を共同で守る
軍備管理や軍縮の議論は、とかく専門的・技術的になりがちです。しかし今回の白書は、具体的な核政策や不拡散措置だけでなく、宇宙・サイバー・AIといった新領域を含む「グローバルな安全保障ガバナンス」の青写真を示すことで、今後の国際議論のたたき台の一つになりそうです。
軍縮や国際秩序をめぐる価値観が揺らぐ中で、中国がどのような役割を果たしていくのか。今回の白書は、その自己イメージと優先課題を読み解く手がかりとなっています。
Reference(s):
cgtn.com








