国際ニュース:デジタル技術が世界のスマートエネルギーを加速 WIOTC2025
AIやIoTなどのデジタル技術が、世界のエネルギーシステムをより効率的で持続可能な「スマートエネルギー」へと押し上げつつあります。11月下旬に北京で開かれた世界インターネット・オブ・シングス大会(WIOTC)2025では、その最前線と課題が集中的に議論されました。
北京・WIOTC2025で見えた「デジタルエネルギー革命」
11月28〜29日に北京で開かれたWIOTC2025のスマートエネルギーフォーラムでは、デジタル技術がエネルギー産業にもたらす変化が主要テーマになりました。
大会執行委員会副主席の何強(He Qiang)氏は、デジタルエネルギー革命が「エネルギーデジタル経済のアップグレードを牽引する中核エンジンになった」と指摘しました。
何氏によると、
- ビッグデータはエネルギーシステムの運用を可視化し、透明性を高める
- 人工知能(AI)は需要予測や制御など、システムに「認知」と「意思決定」の能力を与える
- ブロックチェーンは分散型電源同士の取引を支える信頼基盤をつくる
こうした要素をモノのインターネット(IoT)がつなぐことで、統合されたデジタルエコシステムが形成されつつあるといいます。
ASEANのマイクログリッドから一帯一路まで、広がるスマートエネルギー
この変化は、中国国内にとどまらず、すでに世界規模で進行しています。
中国情報協会エネルギー工作委員会の王永傑(Wang Yongjie)氏は、技術融合が遠隔地でのエネルギー監視・管理を可能にしていると述べ、東南アジアのスマートマイクログリッドの事例を紹介しました。これらのプロジェクトは再生可能エネルギーによる電力を届けると同時に、中国製設備の輸出拡大にもつながっているといいます。
王氏は、130を超える国がカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を掲げる中で、市場の境界が薄れ、先進国で生まれたデジタルエネルギー技術が、新興国や一帯一路地域へと素早く広がっていると指摘しました。そのうえで「このプロセスにおける中国の役割は、単なる技術輸出にとどまらず、世界のエネルギーガバナンス構造そのものの再編という意味を持つ」と述べました。
AI×エネルギーを後押しする中国の政策目標
AIの活用を軸としたエネルギー分野の高度化も進んでいます。今年9月に公表された、AI駆動の高品質なエネルギー発展に関する中国の政策文書は、
- 2027年までに、エネルギーとAIを統合したイノベーションシステムを構築する
- 2030年までに、エネルギー分野で世界をリードするAI応用を実現する
という目標を掲げています。今後数年で、政策面からもエネルギーとデジタルの一体化が一段と加速しそうです。
現場で進むAI活用:予測、制御、点検まで
政策の後押しを背景に、AIはすでにエネルギーの現場で具体的な成果を出し始めています。
BOE Energy Technologyの韓暁燕(Han Xiaoyan)社長は、同社の取り組みとして次のような事例を挙げました。
- 発電量と電力消費の精緻な予測
- 収益と効率を最大化するためのインテリジェントな電力ディスパッチ(運用指令)
- 再生可能エネルギー発電所における故障診断の高度化
- 大規模AIモデルを活用した運用Q&Aシステムによる、オペレーション効率の改善
韓氏は、こうした実装が、AIを理論概念から生産性を生むツールへと押し上げていると説明しました。
残る課題:レガシーシステム、データ安全保障、投資回収
一方で、課題も少なくありません。王氏は、
- 最新のセンサーと連携できない老朽化したシステムが残っていること
- 国境をまたぐエネルギー取引でのデータ漏えいリスク
- 一部市場での現地運用支援が十分でないことによる投資回収の遅れ
などを、デジタルエネルギーの普及を阻む要因として挙げました。技術だけでなく、制度やビジネスモデルを含む包括的な対応が求められているといえます。
オープンプラットフォームと国際標準づくりの重要性
こうした課題への処方箋として、王氏はAIや「デジタルツイン」(現実空間を仮想空間に再現する技術)に関するオープンな技術プラットフォームの構築を提案しました。
狙いは、
- 各国でばらばらに進む技術標準をすり合わせ、相互認証を進めること
- 中小企業がグローバル市場で展開しやすいイノベーションエコシステムを育てること
にあります。標準化とオープン化が進めば、スマートエネルギー分野での協力余地はさらに広がるとみられます。
読者への視点:スマートエネルギーは「インフラ×デジタル」の次のフロンティア
今回のWIOTC2025の議論からは、スマートエネルギーが単なる電力インフラの更新ではなく、デジタル経済の新しい土台として位置づけられつつあることが浮かび上がります。
日本を含む各国の企業や技術者にとって、注目したいポイントは次の3つです。
- エネルギーとデジタルの統合は、今後10年の国際競争力を左右する基盤になり得る
- アジアや一帯一路地域で進むプロジェクトは、ビジネス機会であると同時に、国際協調の実験場でもある
- オープンな標準づくりとデータの安全な扱い方が、スマートエネルギーの信頼性を決める鍵になる
北京での議論は、AIやIoTといったデジタル技術が、エネルギーという「社会の血流」をどう変えていくのかを考えるうえで、重要な示唆を与えています。今後の政策動向と現場のイノベーションを、引き続き追っていく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








