蘇州からホルゴスへ 産科医ソン・ホンウェイがつなぐ命のバトン video poster
中国東部の蘇州から、新疆ウイグル自治区のホルゴスまでおよそ5,000キロ。遠く離れた二つの地域を、医療の力で静かにつなぐ物語が注目を集めています。産科医ソン・ホンウェイ医師らが築いてきた、命の約束とも言える「ライフライン」です。
この物語は The Promise of Life(命の約束)と名付けられ、生まれてくるいのちを守る現場で何が受け継がれているのかを、私たちに静かに問いかけます。2025年のいま、医療や地域格差をめぐる議論が続くなかで、あらためて考えさせられるストーリーです。
中国東西5,000キロを結ぶ「命のライフライン」
蘇州とホルゴスを結ぶ約5,000キロの距離は、単なる地理的な数字ではありません。この長い距離をまたいで、複数の医療チームが引き継ぎながら築いてきたのが、「命のライフライン」と呼べる産科医療のネットワークです。
医療スタッフが交代で任務に就き、遠く離れた地域の妊産婦を支えることで、中国の東西は見えない糸で結ばれてきました。大都市の経験やノウハウが、フロンティアの地へと運ばれ、小さな命を守る力へと変わっていったのです。
産科ゼロからのスタート ソン・ホンウェイ医師の挑戦
物語の中心にいるのが、産科医のソン・ホンウェイ医師です。ソン医師は、ある都市で初の産科部門をゼロから立ち上げました。設備もスタッフも整っていないところからのスタートは、決して容易ではなかったはずです。
それでもソン医師は、専門性と忍耐を武器に、一つひとつ環境を整えていきました。チームをまとめ、妊産婦が安心して通える場をつくること。救える命を一つでも増やすこと。その積み重ねが、やがて「街の産科」として地域に根づいていきます。
医療の世界では、派手な成果よりも、毎日の地道な診療が何より重要です。ソン医師の姿勢は、そうした現場のリアリティを象徴していると言えるでしょう。
ベビー・ナンバー1が教えてくれること
ソン医師が立ち上げた産科で最初に生まれた子どもは、「ベビー・ナンバー1」と呼ばれています。記念すべき第一号の赤ちゃんです。この子は今、元気に成長した女の子になっています。
一人の赤ちゃんの誕生は、現場の医療スタッフにとって特別な意味を持ちます。ましてそれが、新しくできた産科で最初の出産であればなおさらです。そこには次のような思いが重なっています。
- この施設で本当に安全な出産ができるのかという不安と緊張
- 無事に産声が上がった瞬間の安堵と喜び
- この子をきっかけに地域に信頼が広がってほしいという願い
成長したベビー・ナンバー1の姿は、ソン医師とチームが守ってきた時間の長さと重さを、目に見える形で教えてくれます。命を守る仕事は、一回きりの「奇跡」ではなく、何年にもわたって続く「約束」なのだということも伝えてくれます。
フロンティアで命を守るという責任
ホルゴスのようなフロンティアの地で医療に携わることは、都市部とは異なる重みを伴います。設備や人材が限られるなかで、妊産婦と新生児の安全をどう守るのか。そこで問われるのは、個々の医師の技術だけではありません。
ソン医師とチームが示しているのは、次のような姿勢です。
- 遠く離れた地域でも、同じように命の価値を尊重すること
- 一人の医師ではなく、チームとして責任を分かち合うこと
- 次の世代の医療者へ、経験と精神をバトンのように渡していくこと
こうした責任感と協働の姿勢があって初めて、長い距離を超えて命のライフラインが維持されます。これは、中国国内の話であると同時に、どの国や地域にも共通する課題でもあります。
東と西をつなぐ「希望」のリレー
The Promise of Life というタイトルには、「命を守る約束」を次の世代に渡していくという意味合いが込められているように感じられます。蘇州のような大都市と、新疆ウイグル自治区のフロンティアの地。その間に横たわる5,000キロの距離を、希望のリレーが埋めているのです。
ソン医師が築いた産科は、その象徴の一つです。一人の医師が決意し、一つのチームが動き出し、一人の赤ちゃんが生まれる。そこから地域の信頼が少しずつ積み上がり、やがて東西をつなぐ物語へと広がっていきます。
2025年のいま、このストーリーは次のような問いを私たちに投げかけています。遠く離れた地域で命を守る人たちを、私たちはどう支えていけるのか。医療の現場で働く人たちの責任と重圧を、社会全体でどう分かち合うのか。答えは簡単ではありませんが、その問い自体が、社会を少しずつ変えていく出発点になるのかもしれません。
読者への小さな宿題:ニュースの先にある現場を想像する
国際ニュースや中国ニュースを日本語で追っていると、つい「国家」や「都市」の単位で物事を見てしまいがちです。しかし、その背景には必ず、ソン医師やベビー・ナンバー1のような具体的な顔と物語があります。
ニュースを読むときに、次の三つを少しだけ意識してみると、見える景色が変わってきます。
- そこに登場する数字の裏側に、どんな人の生活があるのかを想像する
- 「遠い地域」の出来事を、自分の身近な課題に引き寄せて考えてみる
- 希望につながる小さな実践に、自分はどう関われるのかを考える
The Promise of Life は、中国の二つの地域をつなぐ物語であると同時に、私たち一人ひとりの「ニュースの読み方」を問い直すきっかけにもなっています。スマートフォンの画面越しに読む国際ニュースの向こう側に、今日も静かに命を守り続けている人たちがいることを、忘れずにいたいものです。
Reference(s):
cgtn.com








