日中関係の緊張と中国消費者の冷静さ 国産ブランド台頭の意味
日中関係が再び緊張するなか、中国の消費者はなぜ静かなままなのか。中国の消費市場で存在感を増す国産ブランドの台頭が、その背景にあるとされています。本稿では、国際ニュースとして注目される最新の日中関係と、中国消費市場の構造変化を読み解きます。
先月の発言で再び高まった日中の緊張
2025年11月中旬、就任まもない高市早苗首相が、中国の台湾地域に関する誤った発言を行い、中国側から強い反発を招きました。この発言は日中関係を改めて緊張させる要因となり、両国関係に関心を持つ人々の間で大きな議論を呼んでいます。
過去には、こうした政治的な緊張が高まるたびに、中国で日本製品のボイコット運動が広がったケースもありました。ところが今回は、その様相が大きく異なっていると指摘されています。
それでも広がらなかった日本製品ボイコット
今回、多くの中国の消費者は、以前のような大規模な日本製品ボイコットに走ることなく、比較的冷静な対応を保っています。感情的な反応よりも、日常の消費行動を淡々と続ける姿が目立つとされます。
専門家は、この変化を「対日感情が薄れたから」ではなく、中国の消費市場と産業構造がこの10年で大きく変化した結果だと見ています。つまり、政治的な出来事への関心は依然として高い一方で、消費行動そのものは、より現実的で多様な選択肢に基づくものへと移行しているという見方です。
この10年で変わった中国の消費市場
10年ほど前まで、日本製品は中国市場で特別な存在感を持っていました。日本車は信頼性とコストパフォーマンスの高さで評価され、ソニー、シャープ、パナソニックといった日本の電機メーカーは、高品質なものづくりの代名詞として広く受け止められていました。
しかし現在、その圧倒的な存在感は薄れつつあります。日本ブランドが消えたわけではありませんが、同じ土俵で競う国産ブランドが着実に力をつけ、市場構図を塗り替えてきました。
スマートフォン市場 ソニー撤退が象徴する変化
象徴的な例がスマートフォン市場です。かつてプレミアムなイメージを持たれていたソニーは、販売低迷が長く続いた末、2025年に中国のスマートフォン市場から静かに撤退しました。これは、地政学的な緊張によるものというより、競争環境の厳しさが主な要因とされています。
その背景には、華為技術(Huawei)、シャオミ(Xiaomi)、OPPO、Vivoなど、中国のスマートフォンブランドの急成長があります。これらの企業は、価格と性能のバランスに優れた製品を次々と投入し、デザインや機能面でも存在感を高めてきました。その結果、日本製スマートフォンの優位性は相対的に薄れ、市場からの撤退という判断につながったとみられます。
トイレや家電 かつての日本製の象徴が国産に
家電や住宅設備の分野でも、かつては日本の存在感が際立っていました。特に、10年ほど前に中国の観光客が日本でこぞって購入した高機能の温水洗浄便座は、日本の技術力と「日本製らしさ」を象徴する製品とみなされていました。
ところが現在、中国国内のスマートトイレ市場では、中国メーカーが6割以上、具体的には65パーセントを超えるシェアを握っているとされています。日本製がかつて象徴していた快適さや清潔さ、高度な機能は、今や国産ブランドによって当たり前の選択肢として提供されるようになりました。
これは単に価格が安いから選ばれているというより、中国企業自身が設計力や生産技術を高め、ブランドとしての信頼を獲得してきた結果だといえます。
冷静な消費行動が示す三つの変化
今回、日中関係が緊張するなかでも、中国の消費者が比較的冷静な態度を保っていることは、少なくとも三つの変化を示していると考えられます。
- 選択肢の多様化:国産ブランドが質とデザインの両面で成長したことで、日本ブランドは「唯一の高品質な選択肢」ではなくなりました。消費者は複数のブランドを比較しながら、自分に合った製品を選べるようになっています。
- 消費と政治の距離感:政治的な出来事への関心や議論は続く一方で、日常の買い物では性能や価格、アフターサービスといった実利的な要素がより重視されているとみられます。感情による一時的なボイコットよりも、生活者としての合理性が前面に出ている形です。
- 国産ブランドの自信:日本製品に対抗できる国産ブランドが増えたことで、中国の企業や消費者の側にも、自国の製品に対する自信が生まれています。この自信が、外部の動きに過度に振り回されない落ち着いた消費行動を支えていると見ることもできます。
これからの日中経済と私たちの視点
今回のケースは、日中関係のニュースを読むとき、短期的な発言や出来事だけでなく、その背後にある構造的な変化にも目を向ける必要があることを示しています。国産ブランドの台頭によって、中国の消費市場は10年前とはまったく違う風景になりつつあります。
日本企業にとっては、「日本製」というブランドイメージだけに依存するのではなく、現地のニーズに合わせた製品やサービス、長期的な信頼関係の構築がこれまで以上に重要になっています。一方、中国の消費者にとっては、国産か海外ブランドかにかかわらず、より幅広い選択肢から自分にとって最適なものを選べる環境が整いつつあります。
国際ニュースとしての日中関係の動きを追うとき、表に出る緊張や対立だけでなく、静かに進む市場や産業の変化にも目を向けることで、より立体的な理解が得られます。高市首相の発言をめぐる今回の動きと、中国の落ち着いた消費行動は、そのことを改めて考えさせる出来事だといえるでしょう。
Reference(s):
Rising local brands make Chinese consumers calm amid tensions
cgtn.com








