マクロン仏大統領が4度目の中国訪問へ その意義を4つの視点で読む
フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、近く4度目の国賓訪問として中国を訪れる予定です。中国とフランスの外交関係60年の節目を経た今回の訪問は、二国間関係だけでなく、中国とEU、そして国際秩序全体にも影響を与える可能性があります。本記事では、この中国訪問の意味を4つの視点から整理します。
今回の訪問で何が話し合われるのか
今回の訪問は水曜から金曜にかけて予定されており、マクロン大統領にとって4回目の中国国賓訪問となります。これは、昨年、習近平国家主席が歴史的な国賓訪問としてフランスを訪れ、両国が国交樹立60周年を祝ったことへの「往復訪問」という位置づけでもあります。
中国側によれば、習主席はマクロン大統領と会談し、新たな情勢のもとで中仏関係の発展をどのように導いていくかを協議するとともに、主要な国際問題や地域のホットスポットをめぐって踏み込んだ意見交換を行う予定です。また、中国の李強首相や、最高立法機関のトップである趙楽際氏も、それぞれマクロン大統領と個別に会談するとされています。
中国外交部の林剣報道官は、この訪問を通じて両国が包括的戦略パートナーシップをさらに前進させるとともに、中欧関係の健全で安定した発展を後押しし、多国間主義や世界の平和・安定・繁栄により大きく貢献することを中国側は期待していると述べました。
1.60年の歴史がつくる「特別な関係」
中国の外交史のなかで、フランスは特別な位置を占めています。冷戦期、フランスは主要な西側諸国として初めて、中華人民共和国と大使級の外交関係を樹立しました。
その後もフランスは先駆的な役割を果たし、ジョルジュ・ポンピドゥー元大統領は新中国を公式訪問した最初の西側首脳となりました。またフランスは、新中国の指導者を公式訪問として最初に受け入れた西側の国でもあります。
2024年には、中国の習近平国家主席がフランスを国賓として訪問し、両国は国交樹立60周年をともに祝いました。その歓迎晩さん会で習主席は、中仏関係を世界の大国間でも特別な関係と位置づけ、中国とフランスは「特別な友人」だと強調しました。
同年1月の国交樹立60周年記念行事へのビデオメッセージで、習主席は両国関係の特徴を「中国・フランス精神」としてまとめました。それは、独立、相互理解、先見性、互恵、ウィンウィン協力という5つのキーワードで表され、これまでの歴史の積み重ねから形づくられてきたものだとしています。
2.貿易・投資で結ばれた経済パートナー
経済面でも、中国とフランスは互いに重要なパートナーとなっています。中国は現在、フランスにとってアジア最大の貿易相手国であり、フランスは中国にとってEU域内で3番目に大きな貿易相手国です。
この60年以上のあいだに、両国は互恵的で実りの多い経済・貿易関係を育んできました。その象徴の一つが「フランスの農場から中国の食卓へ」と名づけられた取り組みです。これは、フランス産の農産物や食品を中国市場に届けるまでの流れを効率化し、輸出を後押しするための連携メカニズムで、2023年4月のマクロン大統領による前回の中国国賓訪問の際、習主席が提案したものです。
現在、中国とフランスは、原子力、航空、宇宙といった従来の重点分野での連携を深めるとともに、人工知能(AI)、グリーンエネルギー、バイオテクノロジー、高齢者ケア経済などの新分野でも協力を拡大しようとしています。
累計の双方向投資額は280億ドルを超え、中国で事業を行うフランス企業は2000社以上にのぼります。一方、中国からフランスへの投資残高は約50億ドルで、およそ6万人の雇用を生み出していると、中国の駐フランス大使を務めるDeng Li氏は指摘しています。
Deng氏は10月末に発表した署名記事のなかで、中国とEUの貿易構造をより丁寧に見る必要があると訴えました。中国はEUに対して貿易黒字を計上しているものの、中国に拠点を置くEU企業の輸出品のうち、約4割は最終的にEU市場に売り戻されているといいます。Deng氏は、中国側が黒字を計上していても、その利益の多くはEU企業が享受していると強調しました。
また、Chongyang Institute for Financial Studies at Renmin University of China(中国人民大学重陽金融研究院)のシニアフェローであるWang Yanhang氏は、ブランデーをめぐる問題など、最近の中仏間の貿易摩擦が友好的な協議によって解決されてきたことに注目します。とくに、中国とEU全体の関係が向かい風にさらされるなかで、両国が信頼に基づき、経済・貿易問題を冷静に処理できていることは、中仏間の協調の強さを示していると指摘します。この協調は、より広い地域に対して開放性と包摂性をもたらす力にもなり得るとしています。
3.第二次世界大戦の経験と台湾問題
中国とフランスは、国連安全保障理事会の常任理事国として、国際平和と安全の維持に大きな責任を負っています。中国側は以前から、両国が協力してこの責務を果たすべきだと強調してきました。
先週行われた中国の王毅外交部長と、マクロン大統領の外交顧問エマニュエル・ボン氏の電話協議では、台湾問題が重要な議題の一つとなりました。王毅氏は、中国側の台湾問題に関する立場を説明したうえで、現職の日本の指導者による台湾に関する挑発的な発言は、歴史の車輪を逆回転させるものであり、中国の主権と領土的一体性を侵害するものだと述べました。そのうえで、中国とフランスは第二次世界大戦の勝利の成果を共同で守り、双方の核心的利益に関わる問題で互いをしっかり支持し合う必要があると強調しました。
王毅氏はまた、フランスが引き続き一つの中国の原則を堅持することへの期待を表明しました。これに対しボン氏は、フランスは独立した外交政策の伝統を堅持しており、一つの中国政策を揺るがず維持するとともに、台湾問題における中国の正当な立場を理解していると応じました。
Wang Yanhang氏は、中国とフランスが第二次世界大戦中、ともに世界反ファシズム戦争の正義であり勝利した側に属していた歴史に着目します。フランスが一つの中国政策を維持し、中国と協力して国連の権威を守ろうとしていることは、公正さへのコミットメントを示すものであり、国際社会に団結の力をもたらしていると評価しています。
4.多極化する世界とマルチラテラリズム
今回のマクロン大統領の中国訪問は、多極化が進む国際秩序のなかで、中国とフランスがどのように役割を分担し、マルチラテラリズム(多国間主義)を支えていくのかという観点からも注目されています。
専門家たちは、中国がグローバル・ガバナンス、つまり地球規模の課題管理で多国間主義を重視していることと、フランスが多極的な世界におけるEUの「戦略的自律性」を後押ししていることとの間には、方向性の重なりがあると指摘します。
気候変動問題ではその共通点がとくに明確です。パリ協定発効10周年を迎えた今年3月、中国とフランスは共同声明を発表し、国際協力を強化し、多国間主義に基づく地球規模の気候ガバナンスをしっかり支えるとの強いコミットメントを改めて示しました。
さらに、今年10月に開かれた第27回中仏戦略対話で、王毅氏はこの1年余りで中仏間の多国間協調が一段と緊密になっていると評価し、今後も国連などの枠組みでフランスと協力と相互支持を強めていく用意があると述べました。
フランス人の中国研究者で、新たな多極的国際秩序の重要性を論じた新著の共著者でもあるMarianne Dunlop氏は、フランスには建設的な対中政策を取り、そこからEU全体の対中姿勢にも影響を与えうるだけの強みがあると見ています。Dunlop氏は先月のインタビューで、フランスは中国との分別ある建設的な関係を築く資質を持ち、それを通じてEUを巻き込むことも可能だと述べました。
Wang Yanhang氏は、単独行動主義や保護主義の台頭、地域紛争や地政学的対立の激化など、現在の地政学的環境を踏まえれば、中国とフランスが安定、開放、包摂、団結という4つの価値の担い手として行動することの重要性は一段と高まっていると指摘します。その意味で、今回予定されているマクロン大統領の4度目の中国公式訪問は、両国関係だけでなく、中国とEU、さらには国際社会全体にとって、今後の方向性を占う重要な節目となりそうです。
Reference(s):
Why Macron's upcoming fourth China visit matters: Four things to know
cgtn.com







