紅楼夢の影絵劇が北京で初演 英仏語版で広がる中国文化
中国の古典小説『紅楼夢(Dream of the Red Mansion)』の一場面をもとにした新作の影絵劇が、2025年に北京で初演されました。英語版とフランス語版も同時に制作され、多言語で上演される中国文化コンテンツとして、国際ニュースの視点からも注目を集めています。
紅楼夢の一場面が影絵劇に生まれ変わる
今回上演された影絵劇のタイトルは、英語で"When Baoyu and Daiyu Shared the Pages of the Western Chamber"(宝玉と黛玉が西廂記をともに読むとき)。中国文学を代表する古典『紅楼夢』の中でも人気の高い一場面を切り出し、伝統芸能である影絵芝居として再構成した作品です。
物語の中心となるのは、『紅楼夢』の主要人物である賈宝玉(バオユー)と林黛玉(ダイユー)。二人が劇中で古典戯曲『西廂記』のページをともに読み進める、親密で繊細な場面が、影絵の光と影、音楽、語りによって立体的に表現されます。
これまで『紅楼夢』を題材にした舞台作品は、ドラマや京劇などさまざまな形で発表されてきましたが、影絵劇としての本格的な試みは長く「空白地帯」だったとされています。今回の上演は、そのギャップを埋める試みとして位置づけられています。
英語・フランス語版も制作 多言語で届ける影絵劇
この影絵劇の大きな特徴は、初演の段階から多言語版が用意されている点です。作品は中国語に加え、英語版とフランス語版へと翻訳されており、その制作には北京外国語大学の協力がありました。
多言語化によって、観客は次のようなかたちで作品に触れることができます。
- 中国語の語りを楽しみつつ、字幕やパンフレットで英語・フランス語の補助情報を得る
- 海外公演で英語版・フランス語版を上演し、現地の観客が自分の言語で物語を追える
- 語学教育や異文化理解の教材として活用し、文学と舞台芸術を一体的に学ぶ
中国の古典文学と伝統芸能を、多言語の舞台として発信することで、海外の観客にとってのハードルを下げ、物語そのものの魅力により直接的にアクセスしてもらう狙いがあります。
伝統影絵の革新と国際交流の「チャンネル」
中国民間文芸家協会で影絵分野を担当する林忠華(Lin Zhonghua)氏は、近年の影絵芸術における革新的な取り組みを評価した上で、この作品の意義を強調しています。
林氏によると、今回の『宝玉と黛玉が西廂記をともに読む』の多言語版制作には、少なくとも二つの大きな意味があります。
- 海外公演と文化交流の新ルートを切り開くこと
英語・フランス語版が用意されたことで、影絵劇が海外の劇場や文化イベントに参加しやすくなり、中国の古典文学や伝統芸能を紹介するための「新しいチャンネル」となり得ます。 - 影絵のレパートリーの空白を埋めること
長く影絵の題材として本格的に取り上げられてこなかった『紅楼夢』というテーマに挑戦したことで、伝統芸能の側から見ても、新たな作品群を生み出すきっかけとなります。
伝統芸能を守るだけではなく、新しい題材や形式を取り入れ、多言語化によって海外にも開いていく。このバランスをどう取るかは、多くの国・地域の文化政策に共通する課題でもあります。
日本の読者にとってのヒント
今回の影絵劇は中国国内の動きですが、日本の読者にとっても示唆に富むニュースです。とくに次のようなポイントは、考えるきっかけになりそうです。
- 古典とポップカルチャーの橋渡し
『紅楼夢』や『西廂記』のような古典を、影絵という視覚的で親しみやすい形式にのせることで、新しい世代にも届きやすくなります。日本の古典文学や伝統芸能にも応用できる発想です。 - 最初から「多言語」を前提にした企画
企画段階から英語・フランス語版を同時に設計することで、海外発信のスピードと質を高めることができます。日本のコンテンツ産業や舞台芸術が、アジアや欧米に向けて発信する際の参考にもなりそうです。 - 国際ニュースとしての文化報道
国際ニュースというと政治や経済に目が行きがちですが、多言語の舞台芸術や翻訳プロジェクトも、各国の価値観やソフトパワーを映し出す重要なトピックです。
スマートフォンで動画や短いコンテンツを楽しむことが当たり前になったいま、光と影だけで物語を紡ぐ影絵劇は、ある意味でとても「ミニマル」なメディアです。そのミニマルな舞台に、多言語の言葉と古典文学の厚みが重ねられたとき、どんな体験が生まれるのか。今後の展開を追いかけたい試みです。
Reference(s):
'Dream of the Red Mansion' shadow puppet play premieres in Beijing
cgtn.com








