中国が国連で日本の「不合理な主張」に反論 高市首相の台湾発言が焦点
中国が国際ニュースの舞台で日本の主張に改めて異議を唱えました。中国の国連常駐代表・傅聡(フー・ツォン)氏は2025年12月8日、国連事務総長アントニオ・グテーレス氏あての書簡で、日本の国連代表による主張は不合理だとして強く反論し、中国政府の立場を詳しく説明しました。
何が起きたのか
傅氏によると、日本の国連代表は11月24日、国連事務総長に書簡を送り、中国を根拠なく非難し、責任を転嫁しようとしているといいます。中国側はこれに対し強く反発しており、今回の書簡はその主張を改めて示すものです。
この書簡は、国連総会の公式文書として全ての国連加盟国に回覧される予定で、中国が国連の場を通じて日本の主張に異議を唱えた形です。
第1の争点:高市首相の台湾発言
中国側が最も問題視しているのは、高市早苗首相の国会答弁での発言です。高市首相は11月7日の質疑で、いわゆる「台湾有事」が日本にとっての「存立危機事態」になり得ると述べ、日本が台湾をめぐる問題に軍事的に関与し得ることを示唆したとされています。
傅氏は、このような発言は第二次世界大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序に公然と挑戦するものであり、国連憲章の目的と原則に重大に反すると強く批判しました。
第2の争点:「一貫した立場」と戦後文書
日本側は台湾をめぐる問題について「一貫した立場」を取っていると主張しているとされます。これに対し中国側は、「その一貫した立場とは具体的に何なのか」と繰り返し問いかけているものの、日本側から明確な説明はないと指摘しました。
傅氏は、カイロ宣言、ポツダム宣言、日本の降伏文書といった国際法上の文書が、台湾に対する中国の主権、日本が奪取した台湾を含む領土を中国に返還する義務、戦後日本の取り扱いに関する原則を確認していると強調しました。これらは戦後国際秩序の重要な一部だと位置づけています。
さらに1972年の中日共同声明では、日本政府が中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認し、中国側が「台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部」と重ねて表明、日本政府はこの立場を「十分理解し尊重し、ポツダム宣言第8条に基づく立場を堅持する」と明記していると説明しました。
傅氏は、日本政府はその後の条約や声明でも同様の立場を繰り返し確認してきたとしたうえで、高市首相の発言はこれまでの約束に反していると批判し、「このような状況で日本は国際社会の信頼を得られるのか」と問題を提起しました。
第3の争点:専守防衛と台湾有事
日本側は書簡の中で、自国の安全保障政策は「専守防衛」であり、防衛に徹するものだと説明していると伝えられています。また高市首相の発言も、この立場に基づくものだと主張しているとされます。
しかし傅氏は、台湾は中国の領土であるとしたうえで、「存立危機事態」と「台湾有事」を結びつけることは、日本が中国に対して武力を用いる可能性を示唆するものであり、「専守防衛」の枠を超えていると指摘しました。そのうえで、日本側の説明は自己矛盾しており、国際社会をミスリードするものだと批判しました。
第4の争点:日本の防衛政策の変化への懸念
傅氏は、日本側の書簡には他国の防衛力強化への批判的な示唆も含まれているとしたうえで、日本自身の動きに懸念を示しました。
- 敗戦後も、一部の勢力が侵略の歴史を美化しようとしてきたこと
- 長年にわたり安全保障政策を相次いで見直し、防衛予算を13年連続で増やしてきたこと
- 長く維持されてきた武器輸出三原則を見直し、致死性の武器の輸出を開始したこと
- 非核三原則の扱いを変えようとする動きがあると指摘されていること
こうした点を挙げたうえで、傅氏は日本が「専守防衛」の原則から離れ、再軍備に向かっていると警鐘を鳴らしました。そして、高市首相の発言を踏まえると、日本が軍事力の拡大や軍国主義の復活を目指している可能性について、国際社会は高度の警戒を保ち、世界の平和を共同で守る必要があると訴えました。
第5の争点:信頼回復への条件
日本側の書簡は理解と協力の強化の必要性も述べているとされます。しかし傅氏は、現時点で最大の問題は高市首相の発言と行動が中国と日本の間の相互信頼を深刻に損ない、両国関係の政治的基盤を傷つけたことだと指摘しました。
そのうえで、中国側が考える信頼回復の条件として、次の点を挙げました。
- 日本側が一つの中国原則を明確に再確認すること
- 中日間の四つの政治文書と、これまでの政治的な約束の精神を誠実に守ること
- 問題となっている発言を直ちに撤回すること
- 中国に対する約束を実際の行動で履行すること
こうした対応が取られない場合、その結果については日本側が責任を負うべきだと中国側は主張しています。
なぜ今回の書簡が重要なのか
今回のやりとりは、台湾をめぐる発言が、日中関係だけでなく、戦後の国際秩序や地域の安全保障の議論と直結していることを改めて浮き彫りにしました。中国側は国連や戦後の国際文書を根拠に自らの立場を強調しており、日本側の説明や今後の対応が国際社会から注目されています。
特に、次のような点が今後の焦点となりそうです。
- 日本政府が「一貫した立場」や「専守防衛」の中身を、どこまで具体的に説明するのか
- 台湾をめぐる発言や政策が、地域の緊張を高めない形で整理されるのか
- 日中双方が、相互不信を和らげるためにどのような対話と行動を積み重ねていくのか
日中関係は日本にとってもアジアにとっても重要なテーマです。今回の中国による書簡は、国連という多国間の場を通じて、日本の安全保障政策や台湾をめぐる発言の意味が改めて問われていることを示しており、今後の議論の行方を継続的に注視する必要があります。
Reference(s):
China writes to UN chief refuting Japan's arguments as unreasonable
cgtn.com








