中国が「未来技術予測2049」初公表 AIとエネルギーの10大ビジョン
中国南西部・雲南省のテンチョン科学者フォーラムで、「Tech Predictions and Future Visions 2049(未来技術予測とビジョン2049)」と題した報告書が発表されました。人工知能(AI)からエネルギー、医療まで、2049年の世界を見据えた中国初の包括的な未来技術予測です。
中国初の長期「未来技術予測」が示すもの
この報告書は、長期的な技術の見通しをまとめた中国初の国家レベルの試みとされています。テンチョン科学者フォーラムセンターやHuawei戦略研究院、China Mobile研究院、上海AI研究所、Tencent研究院、国家電力投資集団(SPIC)イノベーションセンターなどの研究者や専門家が、過去1年にわたり議論を重ねて作成しました。
テーマは「人工知能(AI)、デジタルヘルス、持続可能な発展」で、2049年の社会を形づくると想定される「10のテクノロジービジョン」が提示されています。フォーラム自体は12月5〜7日に雲南省で開かれ、「科学とAIが世界を変える」をテーマに国際的な協力と交流を目指しました。
10の「テクノロジービジョン」概要
報告書が示す10のビジョンは、日常生活から産業構造、エネルギー、医療、空間活動まで幅広い分野を網羅しています。それぞれの要点をかんたんに整理します。
1. 人間の知能を増幅する超知能AI
第1のビジョンは、AIが「技術的特異点」を超え、人工超知能へと進化するというものです。脳とコンピューターがシームレスにつながるブレイン・マシン・インターフェースにより、人間の認知力や創造性、複雑な意思決定が大きく拡張される未来が描かれています。
2. 汎用ロボットが家庭と産業のパートナーに
第2のビジョンでは、特定用途に限られたロボットではなく、幅広い仕事をこなす「汎用ロボット」が家庭や工場、さまざまな産業分野で人間の相棒として活躍すると想定されています。
3. 空飛ぶクルマとAIがつくる新しいモビリティ
第3のビジョンは、空飛ぶクルマが都市の移動手段として普及し、AIが管理する高度な交通システムが安全と効率を支える未来です。都市空間の設計やインフラのあり方も大きく変わる可能性があります。
4. 高精度デジタルツインによる「鏡像世界」
第4のビジョンでは、都市や産業、自然環境が高精度にデジタル上に再現される「ミラーワールド(鏡像世界)」が登場します。現実世界の動きをシミュレーションし、予測・最適化することで、防災や都市計画、産業運営の高度化が期待されています。
5. ビット・脳型・量子が融合する計算の時代
第5のビジョンは、従来のデジタル計算(ビット)に加え、脳の仕組みを模した計算と量子計算が組み合わさる「ハイブリッド計算の時代」です。汎用量子コンピューターが実現し、「計算の自由」が得られる世界が想定されています。
6. エージェント同士がつながる「インターネット・オブ・エージェンツ」
第6のビジョンでは、AIエージェント(代理となって考え、行動するソフトウェア)がネットワークの基本単位となる「インターネット・オブ・エージェンツ」の登場が語られています。デジタル空間と物理空間がインテリジェントなインフラで統合され、人とモノ、サービスの関係が再定義されるとしています。
7. 新素材と室温超伝導をめざす計算材料科学
第7のビジョンは、計算材料科学の進展により、性質を自在に設計できる「自律的な材料」やプログラム可能な構造体が生まれ、室温超伝導の実現にも近づくというものです。エネルギー損失の少ない送電や新しい電子機器などへの応用が期待されます。
8. 家庭や車が「小さな発電所」になる核融合エネルギー
第8のビジョンでは、商業規模の核融合エネルギーが実現し、家庭、車両、各種デバイスが小型の発電所のように機能する未来が描かれています。これにより、カーボンニュートラルなエネルギー時代が本格的に到来するとしています。
9. 分子医療とAIがつくる「プログラム可能な健康」
第9のビジョンは、AIと分子医療、合成生物学が融合し、健康状態を細胞や分子レベルで精密にコントロールできる「プログラム可能な健康」の実現です。一人ひとりに最適化された予防や治療、パーソナライズド医療が当たり前になる社会像が示されています。
10. 陸・宇宙・深海を行き来する「多領域共生」
第10のビジョンでは、人類が陸上だけでなく、宇宙空間や深海など複数の領域を自由に行き来する「多領域共生」の時代に入るとされています。宇宙開発や深海探査が日常の経済活動や生活とより密接に結びつく未来です。
具体的な「未来の暮らし」シナリオも
報告書は、これらのビジョンを補う形で、健康、教育、モビリティ、金融、製造、エネルギー、環境保護などにわたる10の「未来の生活シナリオ」も描いています。AIやロボット、次世代エネルギーが、私たちの仕事や学び方、移動の仕方、医療の受け方をどのように変えるかを具体的にイメージする内容です。
「未来へのドアをノック」する試み
中国科学院の院士で復旦大学の前学長である楊玉良氏は、この報告書を「未来のドアをノックする最初の一打」だと表現しました。まだ多くのビジョンは初期段階にありますが、「文明レベルのインパクトを持つフロンティア分野の方向性を示している」と評価しています。
楊氏はまた、各分野のより詳細な予測に向けて、世界の英知を結集し、人類の進歩に新しいアイデアをもたらしたいとの期待を語っています。テクノロジーの未来を一国だけで完結させるのではなく、国際的な対話と協力を前提に描こうとしている点も特徴と言えます。
日本の読者にとっての論点
今回の報告書は、中国の長期技術ビジョンの一端を示すと同時に、2049年の世界像を共有する「たたき台」としても読むことができます。日本の読者にとっては、次のような問いを投げかけています。
- AIやロボット、核融合などの技術が前提の社会で、どのようなスキルや学びが重要になるのか。
- エネルギーや医療、都市づくりのビジョンを、アジアや世界全体の持続可能性とどう結びつけるのか。
- 国や企業、研究機関は、長期の未来像をどのようなプロセスで市民と共有していくべきか。
テンチョン科学者フォーラムは、「科学とAIが世界を変える」というテーマのもと、国際的な協力を深める場として位置づけられています。今回の「未来技術予測2049」は、その出発点として、どのような未来を望み、どのように備えるのかを考える材料を提供していると言えます。
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Reference(s):
China unveils first national forecast of future technologies
cgtn.com








