中国でインフル流行ピークへ 子ども守る医療体制とワクチン強化
中国でこの冬、インフルエンザの流行がピークに近づいています。17の省が「高い流行レベル」に達するなか、当局は子どもや高齢者、妊産婦など脆弱な人々を守るため、医療体制の強化に動いています。
17省が高い流行レベルに 今季の特徴は「子ども中心」
中国の国家衛生健康委員会(NHC)は直近の金曜日、全国でインフルエンザの報告が増加しており、31省級地域のうち17省で流行レベルが高水準、残る地域でも中程度の水準にあると発表しました。2025年12月上旬の時点で、今季のインフルエンザ流行はすでに本格化しています。
外来や救急を受診したインフルエンザ様疾患(ILI)患者のうち、インフルエンザ検査が陽性だった割合は51%に達しています。ILIとは、38度以上の発熱に、のどの痛みやせきが伴う状態を指します。
特に5〜14歳の子どもでは、他の年代よりも陽性率が顕著に高いとされ、学校を中心に感染が広がっている様子がうかがえます。
中国疾病予防管理センター(China CDC)国家インフルエンザセンターの王大燕センター長によると、現在流行しているウイルスはインフルエンザA(H3N2)型が主流で、全体の95%以上を占めています。A(H1N1)型やB型も散発的に確認されていますが、新たな病原体や未知の感染症は見つかっていないと説明しています。
最新の監視データに基づき、専門家は全国的な流行のピークが12月上旬から中旬にかけて訪れると見込んでいます。今季は、学校や高齢者施設などでの集団感染が昨年を上回るペースで増えており、警戒が強まっています。
大病院の混雑を避けるため 医療資源を面で「総動員」
こうした状況を受けて、NHCはとくに大都市を中心に、各地域に医療資源の総動員と連携強化を指示しています。狙いは、大病院への負荷を軽減しつつ、患者が身近な医療機関で適切な治療を受けられるようにすることです。
具体的には、次のような対策が進められています。
- すべての必要な発熱外来を開設し、診察室や病床を増設
- 平日の夜間や週末も診療時間を延長し、受診しやすくする
- 各医療機関の診療スケジュールを公表し、住民が事前に受診計画を立てやすくする
- 検査を先に行い、その結果を踏まえて診察する「先検査・後診察」の運用で待ち時間を短縮
さらに、小児科や内科の専門医を地域の病院やクリニックに派遣し、地域医療の診療能力を底上げしています。伝統中国医学と西洋医学を組み合わせた診療も取り入れ、重症化が疑われるケースは迅速に高次医療機関へ紹介できるよう、紹介ルートや専門家によるカンファレンス体制も整えられています。
国家レベルや地域レベルの医療センター、大型の感染症専門施設は、重症患者の受け入れと緊急対応の「ハブ」としての役割を一段と強化しています。
医薬品や物資の確保も重要な課題です。NHCは、抗インフルエンザ薬、解熱剤、小児向けの薬剤などの供給管理を強化し、各病院には必要な機器や資材を十分に備蓄するよう求めています。
子どもと妊産婦を守る 母子保健体制のフル稼働
今季のインフルエンザ対策では、子どもと妊産婦を支える母子保健の現場が重要な役割を担っています。冬の流行期に医療サービスを安定して提供するため、各地の母子保健機関が体制を強化しています。
2025年11月末までに、中国全土の二級・三級の母子保健病院1,763施設すべてで小児診療が行われており、そのうち74.3%が夜間診療、92.5%が週末診療を提供しています。さらに3,304の病院が「子どもにやさしい」施設基準を満たしているとされます。
ワクチン接種も着実に進展
感染予防の柱となるインフルエンザワクチンも、母子保健機関を通じて接種が進められています。2025年7月1日以降、認定を受けた1,473の母子保健機関で、合計124万2,000回分のインフルエンザワクチンが接種されました。
子どもや妊婦はインフルエンザが重症化しやすいとされることから、こうした場を通じてワクチン接種の機会を確保することは、医療現場の負担軽減にもつながります。
「親向け講座」で生活者の行動も変える
医療だけでなく、日常生活のなかでの予防行動を広げる取り組みも進んでいます。中国各地の母子保健機関の82%以上で、保護者を対象にした「親学校」のような健康教育プログラムが実施されています。
このプログラムでは、個人でできる感染対策、薬の正しい使い方、ワクチンの意義、呼吸器感染症の予防などがテーマとして取り上げられています。2025年9月以降だけでも約2万2,000回の講座が開かれ、およそ1,500万人の保護者、教師、生徒が参加しました。
また、保育園や幼稚園との連携も進んでいます。母子保健機関の9割超が近隣の園とパートナーシップを結び、呼吸器感染症を防ぐための定期的な衛生教育や研修を行っています。子どもが多く集まる場でのクラスター(集団感染)を防ぐねらいがあります。
なぜ「脆弱な人」を守ることが社会全体の安心につながるのか
今回のインフルエンザ流行では、5〜14歳の子ども、高齢者施設の入所者、妊産婦など、体の弱い人々をどう守るかが大きな焦点になっています。これには、次のような理由があります。
- 子どもや高齢者は免疫力が弱く、重症化しやすい
- 学校や高齢者施設は人が密集しやすく、ひとたび感染が広がると一気にクラスターになりやすい
- 重症例が増えると、集中治療室(ICU)や救急医療への負荷が高まり、他の病気の患者にも影響が出かねない
こうした背景から、中国の当局は今季、早い段階から脆弱な人々を念頭に置いた対策を打ち出し、医療・ワクチン・健康教育を組み合わせた「多層的な防御」を固めつつあります。
私たちにできるインフルエンザ対策は
インフルエンザの流行が続くなか、専門家は次の3つをとくに呼びかけています。
- タイミングよくワクチンを接種すること:流行期に入ってからでも、接種による重症化予防効果は期待できます。
- こまめな手洗いと咳エチケット:石けんを使った手洗い、せきやくしゃみをする際にマスクや肘で口と鼻を覆うなど、基本的な衛生習慣を徹底します。
- 早めの受診:高熱や強いだるさ、呼吸が苦しいといった症状が出た場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療につなげることが重要です。
中国の当局は、流行の動向を引き続き注意深く監視し、すべての人、とくに脆弱な人々がタイムリーで効果的な医療を受けられるよう、対応を続けています。今後も、医療体制の整備と市民一人ひとりの行動変容が、インフルエンザの影響を抑える鍵となりそうです。
Reference(s):
China strengthens response for vulnerable groups amid flu peak
cgtn.com








