中国・青島港で水素電動タグボートが本格運航 港湾脱炭素の新ステージ
中国東部・山東省の青島港で、中国初となる水素電動タグボートが定期運航を開始しました。港湾物流の脱炭素と「静かな港」をめざす取り組みが、実際の現場レベルで動き始めています。
中国初の水素電動タグボート、その特徴は
今回定期運航に入ったタグボートは、今年6月に就航した新型船です。最大の特徴は、水素燃料電池とリチウム電池を組み合わせたハイブリッド方式の動力システムを採用している点です。
青島港によると、主な性能と特徴は次の通りです。
- 水素燃料電池と液冷式リチウム電池を組み合わせたハイブリッド電動システム
- 約9ノットの速度で12時間以上の連続運航が可能
- 従来のディーゼル式タグボートと比べ、騒音と振動を大きく抑制
タグボートは大型船の出入港をサポートするため、港内で頻繁に稼働します。その動力源を電動化することは、港湾全体の環境負荷を下げるうえで効果の大きい一手といえます。
操船性を高める「分割型操舵室」などの新設計
この水素電動タグボートは、環境性能だけでなく、安全性と操船性の向上も意識した設計になっています。
- 操舵室を前後に分け、2つの操船ステーションを配置した「分割型操舵室」
- 前後の視界を確保しやすく、狭い港内での細かな操船を支援
- 静粛性が高く、乗組員や周辺作業への負担を軽減
さらに、航行には中国国内で開発された「北斗(ベイダオ)」衛星測位システムを活用し、陸上にはインテリジェントな充電システムも整備されています。陸側の設備と組み合わせることで、電動船の運用を安定的に続けられるインフラづくりも進んでいることがうかがえます。
年間約1,500トンのCO2削減を見込む環境効果
青島港によると、この水素電動タグボートは、従来のディーゼル燃料のタグボートと比べて、年間で約1,500トンの二酸化炭素(CO2)排出削減が見込まれています。
タグボート1隻でこれだけの削減効果が期待できることは、港湾全体の脱炭素戦略にとっても意味があります。今後、同様の船が複数導入されれば、港としてのカーボンフットプリント(温室効果ガスの排出量)を着実に減らしていくことができます。
世界有数の港・青島港が進める「グリーンポート」化
青島港は、中国でも有数の大規模港です。今年の貨物取扱量はすでに7億トンを超えたと報告されており、世界的に見ても重要なハブ港の一つです。
その青島港が、水素電動タグボートを定期運航に投入したことは、単なる「新型船の導入」以上の意味を持ちます。港側は、この取り組みを自らのカーボンフットプリントを減らすための広い戦略の一部と位置づけています。
港湾運営においては、荷役機械、トラック、発電設備など、多くの場面でエネルギーが使われます。その中で、港の顔ともいえるタグボートをクリーンエネルギー化することは、対外的なメッセージとしても分かりやすく、「グリーンポート」をめざす姿勢を象徴するものだといえます。
なぜ水素電動タグボートが国際ニュースになるのか
今回の動きが国際ニュースとして注目される背景には、海運・港湾分野における脱炭素の重要性があります。港は世界の物流の結節点であり、環境負荷を減らしながら機能を維持・強化することが各地で課題になっています。
水素燃料電池とバッテリーを組み合わせたハイブリッド船は、完全なゼロエミッション船への橋渡しとなる技術の一つとみることもできます。まずは港内の短距離航行から実用化を進め、運用実績やノウハウを蓄積していくことで、今後の技術選択の幅が広がります。
青島港のケースは、次のような論点を投げかけています。
- 港湾でのクリーンエネルギー導入は、どの分野から進めるのが効果的か
- 水素・電動化インフラをどの程度まで港内に整備するのか
- 他の港湾や地域とどのような形で経験や技術を共有できるのか
中国東部の一港で始まったこの取り組みは、今後、他の港や船種にも波及していく可能性があります。日本を含むアジアの港湾が、どのような形でクリーンエネルギー化を進めていくのかを考えるうえでも、青島港の水素電動タグボートは注目しておきたい事例といえます。
Reference(s):
China's first hydrogen-electric tugboat to boost green port operations
cgtn.com








