中国ICU最前線から学ぶ、多臓器不全との闘いの実践知
多臓器不全は、集中治療の現場でいまも世界中の命を奪い続ける難敵です。この国際ニュースの背景にある中国のICU最前線の動きを手がかりに、集中治療の最大の脅威とどう向き合うのかを考えます。
多臓器不全という世界共通の課題
多臓器不全は、突然発症し、急速に進行し、治療が難しいことが特徴です。重症敗血症をきっかけに起こる場合、死亡率は30%から100%に達し、後遺症による障害も30〜40%にのぼるとされています。各国の医療システムにとって、いまも最大級の負担となっている疾患のひとつです。
各国の集中治療の現場では、次のような共通のボトルネックに直面しています。
- 多臓器不全に進行するハイリスク患者を、どれだけ早く見つけられるか
- 心臓、肺、腎臓など複数の臓器に対する治療を、どう矛盾なく統合するか
- 限られた集中治療ベッドやスタッフ、機器の中で、どう最善の転帰を目指すか
人口が多い中国ICUが抱えるプレッシャー
人口が多い中国では、基層病院(一線の一次医療機関)とトップレベルの医療センターのあいだで、治療能力に大きな差が存在します。そのため、重症患者がどこで、どのように治療を受けるかによって、命の行方が左右されやすいという強いプレッシャーにさらされています。
こうした現実のなかで、中国の集中治療コミュニティは、現場での試行錯誤を通じて独自の道を切り開いてきました。多臓器不全という世界共通の難題に対し、中国のICU現場から生まれた実践知が、国際的にも注目されつつあります。
「単独プレー」から多職種・多分野の統合へ
従来の集中治療では、心臓なら循環器、肺なら呼吸器、腎臓なら腎臓内科といったように、個々の臓器ごとに診療科が分かれ、縦割りの治療になりがちでした。しかし、多臓器不全の本質は、体の一部ではなく全身のバランスの崩れにあります。
体全体をみるチーム医療へ
浙江大学医学院附属第二医院の包括的ICU(Comprehensive ICU)を率いるHuang Man医師は、次のように指摘します。
多臓器不全の課題を克服するには、診療科や病院、さらには国境をも越えた協働の理解と技術革新が必要だといいます。集中治療に20年以上携わってきたHuang医師は、個々の医師や一つの病院だけの努力では、この全身性の病態には太刀打ちできないと痛感しているとされています。
だからこそ、複数の診療科、看護師、リハビリ専門職、検査部門などが一体となった多職種・多分野の統合が鍵になるという視点です。臓器ごとにソロで治療するのではなく、患者一人ひとりの全身状態を中心に据えたチーム医療への転換が求められています。
中国ICUの実践から見える3つの教訓
中国の集中治療コミュニティが多臓器不全と向き合う実践を重ねるなかで、国や地域を問わず共有しうるポイントが浮かび上がっています。
- 臓器ごとではなく「全身」を単位に診る
多臓器不全は、個々の臓器の障害の寄せ集めではなく、全身のバランスが崩れた結果として起こります。治療計画も、心臓・肺・腎臓といった臓器単位ではなく、循環や代謝、免疫などを含めた全身状態を軸に組み立てる発想が重要になります。 - ハイリスク患者の早期識別と、複数臓器治療の同時進行
重症敗血症から多臓器不全に進行すると、死亡率は30%から100%に達しうるとされます。その前段階で、誰が危険な状態に向かいそうかを早く見抜き、呼吸管理、循環管理、腎代替療法など複数の治療をタイミングよく同時進行させることが、生存率を左右します。 - 一次医療機関と高度医療センターの連携を前提にする
基層病院とトップレベルの医療センターとのあいだに治療能力の差がある状況では、重症患者をいつ、どのように搬送し、どの段階で高度な集中治療につなぐかが大きな課題になります。現場レベルでの連携体制づくりや、標準的な治療プロトコルの共有などが、実務的な焦点となっています。
これからの集中治療に求められる視点
多臓器不全は、一国だけで解決できる問題ではありません。中国のICU最前線での経験が示しているのは、治療技術そのものの高度化に加え、診療科や施設、国境の壁を越えた協働のあり方を問い直す必要性です。
国際ニュースとして伝えられる中国ICUの取り組みは、各国の医療者にとって、自分たちの集中治療の体制やチームづくりを見直すヒントにもなりえます。多臓器不全という難題にどう立ち向かうかという問いは、中国だけでなく、世界の集中治療を共有して結びつけるテーマになりつつあります。
Reference(s):
cgtn.com







