中国の「人工太陽」計画、商業核融合へ現実味 第15次五カ年計画の柱に
中国が進める核融合エネルギー研究「人工太陽」計画が、2026年から始まる第15次五カ年計画の重要テーマとして、現実味を増しています。中国共産党中央政治局は今週、2026年の経済運営を分析・検討する会議を開き、第15次五カ年計画の「好スタート」を強調しました。政策面での後押しを受けて、中国の核融合研究は次の段階へと進もうとしています。
「人工太陽」とは何か――核融合エネルギーの基礎
国際ニュースでたびたび取り上げられる中国の「人工太陽」とは、太陽と同じような核融合反応を地上で再現しようとする実験プロジェクトを指します。核融合エネルギーは、軽い原子核同士を高温・高密度の状態で融合させ、大量のエネルギーを取り出す技術です。
核分裂による原子力発電と比べて、長寿命の放射性廃棄物が少なく、資源も豊富であるとされ、将来の「クリーンエネルギー」の有力候補として期待されています。一方で、超高温のプラズマを安定して閉じ込めることなど、技術的なハードルは極めて高く、世界各国が長期的な研究開発を続けている分野でもあります。
第15次五カ年計画と科学技術戦略
2025年12月現在、中国は2026年から始まる第15次五カ年計画に向けて準備を加速させています。最近公表された提言では、科学技術の強化、エコロジー文明(環境と経済の調和を重視する理念)、そして「未来産業」の育成が大きな柱として示されています。
今回開かれた中国共産党中央政治局の会議でも、2026年の経済運営を検討する中で、第15次五カ年計画の出だしをいかに力強いものにするかが議論されました。核融合を含む次世代エネルギー技術は、こうした政策の方向性と重なり合う分野であり、「人工太陽」計画にとっても追い風となっています。
なぜ中国は核融合に力を入れるのか
中国が核融合エネルギーの研究を戦略的に位置付ける背景には、いくつかの狙いがあります。
- エネルギー安全保障の強化:安定的で国内で賄えるエネルギー源を確保することは、長期の経済発展に直結します。
- 脱炭素とエコロジー文明の実現:二酸化炭素を出さない電源として、核融合は気候変動への対応に貢献すると期待されています。
- ハイテク産業の底上げ:核融合研究には、超伝導材料、精密製造、デジタル制御など多くの先端技術が必要で、関連産業全体のレベルアップにつながります。
- 長期的な競争力の確保:実用化まで数十年を要する可能性があるからこそ、早い段階から投資を続けることで、将来の国際競争力を高める狙いがあります。
デュアン・シュールー氏が描く「数十年」のロードマップ
中国核工業集団公司(China National Nuclear Corporation)のチーフサイエンティストであるデュアン・シュールー氏は、中国が今後どのように核融合エネルギー研究を進め、数十年スパンで商業化に近づいていくかを分析しています。
同氏の議論は、中国が核融合を商業化するまでの過程を段階的に描いたものと整理できます。大まかには、次の三つのステップに分けて考えることができます。
1. 基礎研究と実験装置の高度化
まずはプラズマ物理や材料科学などの基礎研究を引き続き強化し、「人工太陽」と呼ばれる核融合実験装置の性能と安定性を高める段階です。ここでは、より長く、より高い出力で核融合反応を維持できるかどうかが鍵になります。
2. 実証プロジェクトへの橋渡し
次に、研究室レベルの成果を基に、将来の発電を想定した実証的なプロジェクトへとつなげていく段階があります。ここでは、エネルギーをどのように取り出し、電力システムと統合するのかといった工学的な課題が前面に出てきます。
3. 商業炉と産業化への準備
最終的には、商業用の核融合炉の設計や、関連する産業・サプライチェーンをどのように整備するかが焦点になります。デュアン氏は、こうしたステップを視野に入れながら、今後数十年のうちに商業核融合に近づいていく道筋を検討しているとみられます。
「人工太陽」がもたらす波及効果
核融合エネルギーが本格的に商業化されるまでには時間がかかりますが、「人工太陽」をめぐる研究開発は、すでにさまざまな領域に波及効果を生んでいます。
- 超伝導磁石や高性能材料などの先端技術の開発
- 高出力電源や真空技術といったインフラ技術の高度化
- 膨大な観測データを解析するための人工知能(AI)やシミュレーション技術の活用
- 関連分野で活躍する高度専門人材の育成
こうした積み重ねは、中国にとっての「未来産業」づくりにも直結しており、第15次五カ年計画の成否を左右する要素の一つとなりそうです。
日本と世界が注目すべきポイント
中国の「人工太陽」計画は、中国国内のエネルギー戦略にとどまらず、国際エネルギー市場や技術協力のあり方にも影響を与える可能性があります。日本を含む周辺国や各国の研究機関にとっても、今後の動きから目が離せません。
- 長期的なエネルギーミックス(電源構成)をどう描くのか
- 核融合の安全性やルールづくりを国際的にどう議論していくのか
- 材料、デジタル技術など周辺分野で、どのような協力や競争が生まれるのか
2025年の今、「人工太陽」はまだ実験段階にありますが、政策と技術の両面で着実に現実味を増しつつあります。エネルギー転換と産業戦略が交差するこの分野の動向は、今後も継続してフォローしていく価値があると言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








