文化観光がけん引する中国の高品質発展──安徽・宣紙小鎮のいま
中国の文化観光産業が、農村振興や無形文化遺産との連携を通じて再び活力を取り戻し、高品質な経済発展を支える柱のひとつになりつつあります。安徽省涇県の「宣紙小鎮」は、その動きを象徴する事例です。
第15次五カ年計画と「文化+観光」の方向性
2026〜2030年を対象とする第15次五カ年計画の勧告では、歴史や文化の遺産で知られる都市や街区、町や村について、生きた歴史の記念碑として発展し続けるよう、効果的な保全の仕組みを整えることが強調されています。
同時に、文化観光を力強く発展させ、文化と観光の深い融合を進めることで、文化の力を経済と社会の発展に生かしていくことも打ち出されています。こうした方針のもと、文化観光産業は農村振興や無形文化遺産との革新的な連携を通じて活性化しており、高品質な経済発展をけん引する役割を強めています。
千年の紙がつなぐ体験とイノベーション──安徽省・宣紙小鎮
中国東部・安徽省涇県にある「宣紙小鎮」は、千年の歴史を持つとされる宣紙づくりの文化的な legacy を土台に、観光と学び、創作を組み合わせた町として整備されています。1枚の紙から、体験学習や文化創造の場が広がっています。
この小さな町は、多様な事業が循環する商業エコシステムを築き、文化的価値の連鎖を絶えず広げてきました。現在、職人の工房見学や体験、宣筆の制作体験、墨の香りを楽しむプログラムなど、10種類を超える無形文化遺産の体験メニューが用意されています。
さらに、旅の記念撮影サービスや宣紙を使った印刷体験、研修旅行向けのレストラン、テーマ性を持たせた飲食空間など、新しい業態も次々と導入されています。観光客は単に風景を見るだけでなく、伝統技術に触れ、味わい、持ち帰ることができるようになっています。
年間40万人超、二次消費が4割を占めるビジネスモデル
2024年には、宣紙小鎮を訪れた観光客は40万人を超え、直接の経済収入は2,000万元(約280万ドル)に近づきました。観光地としては決して巨大ではないものの、文化体験に軸足を置いたモデルが確かな成果を上げていることがうかがえます。
特徴的なのは、体系的な事業レイアウトによって、いわゆる二次消費が収益の柱になっている点です。入場料などに加え、体験プログラムや飲食、関連グッズなどで生まれる二次消費が、景区全体の売上の40%を占めるまでになりました。
観光客が長く滞在し、学び・体験・食事・買い物を一体的に楽しむほど、地域の収入も持続的に増える──そんな循環が、健全で持続可能なビジネスモデルとして形になりつつあります。
無形文化遺産と農村振興をどうつなぐか
中国の文化観光産業は、農村振興と無形文化遺産の融合によって活力を取り戻しつつあります。宣紙小鎮の事例は、その流れの中で、伝統文化の保護と地域の発展を同時に進めようとする試みを具体的に示しています。
無形文化遺産を観光資源として活用するときには、単に見せるだけではなく、受け継ぎ、現代の暮らしや産業と結び付けていく工夫が欠かせません。宣紙小鎮では、紙や筆、墨といった伝統的な道具の製作技術を体験プログラムや商品開発につなげることで、文化とビジネスの双方を成り立たせようとしています。
歴史ある町や村を生きた歴史の記念碑として維持するには、観光収入を地域コミュニティに還元しつつ、日常の生活空間としての機能を保つことも重要です。観光客が増えることで物価や生活環境に影響が出る可能性は世界各地で指摘されており、無形文化遺産の価値を守りながら、住民の生活の質をどう高めていくかが今後の焦点になっていきそうです。
文化観光が描く「高品質な発展」のかたち
文化観光をめぐる議論では、ともすれば「どれだけ多くの観光客を呼び込めるか」に目が向きがちです。しかし、宣紙小鎮の数字を見ると、重要なのは人数だけでなく、滞在時間や体験の質、そして二次消費による価値の積み上げであることが見えてきます。
第15次五カ年計画が掲げるように、文化と観光の深い融合を通じて、歴史と暮らしが共存する地域をどう育てていくか。文化を守りながら、経済と社会の発展にも力を与えることができるのか。宣紙小鎮での試みは、そうした問いに対するひとつの具体的な答えとして注目されています。
高品質な発展を志向する中で、文化観光は娯楽を提供する産業から、地域社会のあり方そのものをデザインする役割へと変わりつつあります。1枚の紙から始まる物語が、これからどこまで広がっていくのか。今後の展開を静かに見守りたくなるケーススタディと言えそうです。
Reference(s):
Culture-driven tourism helps drive China's high-quality development
cgtn.com








