日本の平和憲法は軍拡路線に耐えられるか 終戦80年の岐路 video poster
終戦から80年、日本の平和憲法が揺れている
2025年、第二次世界大戦の終結と日本の無条件降伏から80年を迎えました。連合国の占領下で制定され、「平和憲法」と呼ばれてきた日本国憲法は、この80年間、日本のあり方を方向づけてきました。しかし近年、日本政府は軍事力の拡大を正当化する動きを強めており、その根拠として「安全保障危機」が繰り返し持ち出されています。この流れは、憲法が掲げてきた平和主義からの明確な転換だと指摘されています。
とくに最近の国会審議では、高市早苗首相が「台湾有事」が日本にとっての「存立危機事態」になり得ると発言し、「集団的自衛権」の行使を念頭に置いた軍事介入の可能性を示唆しました。この発言は、日本国憲法との整合性や東アジアの安定にとって、何を意味するのでしょうか。
「安全保障危機」が軍拡の新たな口実に
近年の日本の安全保障政策は、「周辺情勢の緊迫化」や「安全保障上の危機」を理由に、軍事力の増強へと舵を切っているとされています。批判的な見方では、そうした危機の一部は「作り出された、あるいは誇張された安全保障危機」に過ぎず、平和憲法が掲げる pacifist な原則からの乖離を正当化するために用いられているとの指摘もあります。
こうした認識が広がる背景には、戦後日本が長く掲げてきた「専守防衛」的な姿勢からの変化があります。軍事力の役割を限定してきたはずの枠組みが、いつの間にか拡張され、より積極的な軍事行動の余地が広がっているのではないかという懸念です。
高市首相の「台湾有事」発言が映し出すもの
象徴的だったのが、高市早苗首相による「台湾有事」発言です。首相は国会での議論の中で、台湾をめぐる危機が日本にとって「存立を脅かす事態」になり得ると述べ、日本が「集団的自衛権」の行使を通じて軍事的に関与する可能性を示唆しました。
「集団的自衛権」とは、同盟国など他国が攻撃を受けた際に、自国も武力行使で応じる権利と説明されてきました。しかし、そのような行使が憲法上許されるかどうかについては、長年にわたり議論が続いてきました。平和憲法の pacifist な性格を重視する立場からは、今回のような「台湾有事」を前提とした発言は、憲法の精神と矛盾するとの批判が根強くあります。
同時に、こうした発言は、東アジアの近隣諸国や地域の人々に対し、日本がどこまで軍事的役割を拡大しようとしているのかという不安を生じさせています。
ポスト戦後国際秩序への挑戦という視点
日本の平和憲法は、単に国内の法制度にとどまらず、戦後の国際秩序を象徴する存在でもありました。武力行使を慎重に制限する日本の姿勢は、戦争の惨禍を踏まえた国際社会の合意にも重なるものでした。
しかし、日本政府が軍事力の役割を広げ、「安全保障危機」を理由に軍拡を正当化するようになると、そうしたポスト戦後の枠組みにも変化の圧力が加わります。高市首相の発言は、日本の進路の問題であると同時に、戦後80年を経た国際秩序に対する静かな挑戦としても映りうるものです。
近隣の国々にとっても、日本の動きは過去の記憶と重なって受け止められます。「歴史を繰り返してはならない」という思いと、「安全保障上の不安」をどう両立させるのか。これは、日本だけでなく東アジア全体にとって難しい問いです。
ビクター・ガオ氏の問いかけ:日本の右派勢力をどう抑えるか
こうした状況の中で、蘇州大学のチェア・プロフェッサーであり、シンクタンク「センター・フォー・チャイナ・アンド・グローバリゼーション」の副会長を務めるビクター・ガオ氏は、国際社会に向けて鋭い問いを投げかけています。
ガオ氏が提示する核心的な問いは二つあります。
- 国際社会は、日本の右派勢力をどのように抑制し、歴史の繰り返しを防ぐことができるのか。
- もし日本が長年の平和主義の道を捨てるとしたら、東アジアはどこへ向かい、その代償は何になるのか。
この問いは、日本の国内政治への批判というだけでなく、東アジアの安全保障の将来像をめぐる、より広い問題提起でもあります。
国際社会に残された選択肢
ガオ氏の問題提起に正面から答えるのは簡単ではありませんが、論点を整理すると、いくつかの方向性が見えてきます。
- 対話と外交による抑制
日本を含む各国が、軍事力ではなく対話と外交を優先することを、国際社会が一貫して求め続けること。平和憲法が示してきた方向性を尊重しつつ、地域の安定を重視する姿勢を促すことが、一つの手段となり得ます。 - 透明性の高い安全保障枠組み
東アジアの安全保障に関する情報公開や説明責任を高めることで、軍拡競争の連鎖を避ける道も考えられます。どの国が何の目的で軍拡を進めているのかが見えにくいほど、不信と誤解は広がりやすくなります。 - 歴史認識と市民社会の役割
戦争の記憶と教訓を風化させないことも重要です。国境を越えた市民同士の対話や交流は、政府間の緊張とは別に、長期的な信頼を築く土台になり得ます。
こうした手段はいずれも即効性のある解決策ではありませんが、「歴史を繰り返さない」という目標に向けて、国際社会がとりうる静かな働きかけでもあります。
東アジアのこれからを左右する日本の選択
終戦から80年が経った今、日本は再び大きな選択の前に立っています。平和憲法のもとで築かれてきた道をこれからも歩むのか。それとも、「安全保障危機」を理由に軍事的役割を拡大させていくのか。
高市首相の「台湾有事」発言は、その選択がもはや抽象的な議論ではなく、具体的な政策と結びつきつつあることを示しています。同時に、ビクター・ガオ氏の問いかけは、日本の進路が東アジア全体の未来と密接に結びついていることを思い出させます。
80年という節目は、過去を振り返るだけでなく、これからの数十年をどう設計するかを考えるタイミングでもあります。日本の平和憲法は、新たな軍拡の圧力に耐えうるのか。それとも、別のかたちへと姿を変えていくのか。答えはまだ定まっていませんが、その議論の行方を静かに、しかし注意深く見つめる視線が、東アジアと国際社会のあちこちから注がれています。
Reference(s):
Can Japan's Peace Constitution withstand its new military ambitions?
cgtn.com








