南京大虐殺の記憶を受け継ぐ人たち 第4期「継承者」38人の意味
南京大虐殺の記憶をどう未来に手渡すのか――2025年8月中旬、「南京大虐殺の歴史記憶の継承者」の第4期メンバーが発表されました。生存者が減るなか、誰がどのように語り継いでいくのかを示す動きとして、静かな注目を集めています。
第4期「記憶の継承者」発表 国際的な顔ぶれ
2025年8月中旬に発表された第4期の「南京大虐殺の歴史記憶の継承者」には、初めて海外の「国際友人」の子孫が加わりました。認定者には証書が授与され、歴史の証言を引き継ぐ役割が公式に託されています。
今回のメンバーには、次のような人びとが含まれます。
- ジョン・ラーベの孫であるトーマス・ラーベ氏。ジョン・ラーベは南京大虐殺のさなかに安全区を設け、数えきれない民間人の命を救ったとされる人物です。
- 米国人医師で南京大虐殺の目撃者でもあったリチャード・ブレイディのひ孫、メーガン・ブレイディ氏。
- 虐殺から生き延びた生存者の子孫や、当時の資料・遺品を守り続けてきた人びとの子孫。
こうして海外と中国の双方から選ばれた人びとが「歴史記憶の継承者」として公式に認められたことで、これまでに合計38人の中国人と外国人が継承者として認定されたことになります。
生存者から「継承者」へ 世代交代が進む記憶
南京大虐殺は、20世紀の戦争が市民にもたらした暴力を象徴する出来事として語られてきました。しかし、当時を直接知る生存者は高齢化し、証言できる人は年々減っています。歴史の証人がいなくなったあとも記憶を保つためには、生存者以外の世代が責任を引き継ぐ仕組みが必要になります。
「歴史記憶の継承者」という枠組みは、まさにその世代交代を支える試みだといえます。被害の記憶を悲劇として語り継ぐだけでなく、戦時下で他者を守ろうとした人びとの行動や、資料を残そうとした努力も含めて伝えていく役割が期待されています。
国境を越える家族史 ラーベ家とブレイディ家
今回の特徴は、国境を越えた家族の物語が正式に「継承者」として位置づけられたことです。
トーマス・ラーベ氏にとって、祖父ジョン・ラーベは単なる歴史上の人物ではなく、家族の記憶の中心にいる存在です。南京で安全区を設け、多くの民間人を守ろうとした祖父の行動は、今の時代から見れば、人道的な勇気として語られます。その記憶を家族として、そして歴史の継承者として共有していくことになります。
メーガン・ブレイディ氏もまた、医師として南京に滞在し、虐殺の現場を目にしたリチャード・ブレイディのひ孫として、自分の家族史と向き合うことになります。遠い国で起きた出来事が、自分の祖先を通じて突然「自分ごと」になる感覚は、多くの人にとって想像しやすいものかもしれません。
こうした国際的な家族の記憶が公式に認められたことは、南京大虐殺の歴史が一国の問題ではなく、世界が共有する記憶として扱われていることを象徴しています。
記録・教育・国際交流という3つの柱
発表によれば、今回認定された継承者たちは、生存者の使命を引き継ぎ、主に次の3つの分野で活動していくとされています。
- 記録:証言や資料の収集・整理、映像や出版物を通じた記録化。
- 教育:学校や地域社会での講話、ワークショップなどを通じて、若い世代に歴史を伝える取り組み。
- 国際交流:海外での展示や発表、各国の研究者や市民との対話を通じた経験の共有。
こうした活動は、特定の国や地域を一方的に批判するためではなく、戦争が市民にもたらす被害を具体的な記憶として示し、同じ過ちを繰り返さないために何ができるのかを考えるきっかけを提供するものでもあります。
「語り継ぐこと」をめぐる静かな問い
南京大虐殺のような痛ましい出来事をどう語り継ぐかは、どの社会にとっても簡単ではありません。過去を直視することは、ときに不快な感情や対立を呼び起こす可能性もあります。それでも記録を残し続けるのは、悲劇そのものだけでなく、その中で人びとが選んだ行動や、命を守ろうとした試みも含めて未来に伝えるためです。
世界を見渡すと、大量虐殺や空襲、植民地支配など、複雑な記憶を抱えた地域は少なくありません。南京大虐殺の継承者たちの取り組みは、そうした記憶をどう共有し、対話につなげていくのかという、より普遍的な問いを静かに投げかけています。
今年認定された38人の「記憶の継承者」は、証言者の時代から、記憶を引き受けて語る世代への移行が着実に進んでいることを示しています。過去の出来事をめぐるニュースでありながら、「自分なら何をどう受け継ぐだろうか」と考えさせる、現在進行形の国際ニュースでもあると言えそうです。
Reference(s):
Remembering history: Preserving the legacy of Nanjing Massacre
cgtn.com








