UNEA-7がナイロビで開幕:分断の時代に「環境の多国間協力」は機能するか
2025年12月、世界各国の代表団がケニア・ナイロビに集まり、第7回国連環境総会(UNEA-7)が開かれています。地政学的な緊張が協調を難しくする一方で、気候変動・生物多様性の損失・汚染というリスクは加速しており、「国際的な環境ガバナンスは、いまも成果を出せるのか」が正面から問われています。
UNEA-7とは:環境分野で最高位の意思決定の場
UNEA(国連環境総会)は、環境問題に関する世界最高レベルの意思決定機関と位置づけられ、各国が決議を協議します。今回のUNEA-7でも、気候変動、生物多様性の損失、汚染対策といった「複合危機」への対応が主要テーマです。
1. UNEA-7は何を「届ける」べきか:求められる明確な優先順位
アフリカ健康・環境・水サービスセンター(ケニア)のエグゼクティブ・ディレクター、アリ=サイード・マタノ氏は、決議の役割を「これまで以上に明確な方向性を示すこと」だと強調しました。
マタノ氏は、各国が議論する決議が「気候変動・生物多様性の損失・汚染」という“トリプル・プラネタリー・クライシス”に対して、世界の優先順位をはっきりさせるべきだと述べています。
アフリカ諸国が期待する主な成果
- 高リスク汚染物質の段階的廃止の加速
- プラスチックと農薬使用への強い対応(特に開発途上地域)
- 生態系回復(エコシステム・レストレーション)に関する野心的なコミットメント
- 脆弱な地域に向けた資金・支援の仕組みの改善
同氏は、UNEAの「使命そのものは重要」だとしつつ、いま必要なのは理想論だけでなく、現実に届く実行力だとして「ダイナミズムと現実的な対応(プラグマティズム)」を求めました。
2. 中国の「生態文明」アプローチが交渉に与える影響
中国の公衆・環境研究センター(Institute of Public and Environmental Affairs)理事の馬軍(Ma Jun)氏は、COP30(ブラジル・ベレン)を経た流れの中で、中国の環境戦略が途上国、とりわけグローバルサウスの関心を集めていると指摘します。
馬氏によれば、COP30の中国パビリオンには海外からの参加者が多く、特にグローバルサウスの関係者が「生態文明」モデルに学ぼうとしていたといいます。
統合的な政策パッケージとして語られた要素
- 大気・水の汚染対策による迅速な改善
- 大規模な植林(森林回復)の取り組み
- 再生可能エネルギー、EV(電気自動車)、先端製造業などを通じた、気候対策と経済発展の同時追求
馬氏は「気候のための気候対策ではなく、社会にとっての実益のためだ」と述べ、環境政策を生活の改善や産業の高度化と結びつけて設計する発想が、交渉の現場でも参照されていると示唆しました。
3. 多国間主義は壊れているのか:『崩壊』ではなく『摩耗』という見方
「国際協調はもう機能しないのでは」という疑念が強まる中で、マタノ氏は「崩壊ではない」との認識を示しました。背景にあるのは、各国の国益の浮上、地政学的な再編、そして交渉疲れだという整理です。
馬氏も緊張の高まりを認めつつ、「多国間の仕組みの信頼性が損なわれている」と述べながらも、「それでも多国間主義は最善の希望だ」と語っています。完全な合意よりも、積み上げ型の前進をどう確保するかが、今回のUNEA-7の空気感を形づくっているようです。
4. 開催地・アフリカのアジェンダ:公平性を前面に
ホスト地域であるアフリカは、UNEA-7を「戦略的なプラットフォーム」として活用し、優先順位の形成に関与する姿勢を強めています。マタノ氏は、公平性(エクイティ)を軸にした気候行動の確保が重要だと述べました。
影響力の源泉として挙げた点
- 大陸としての統一的な立場の形成
- 地域ブロックの強化
- 排出が相対的に少ない一方で影響が大きいという「道義的な重み」
前進をめざす政策テーマ
- グリーン産業化
- サーキュラー・エコノミー(資源循環型経済)
- 適応資金(アダプテーション・ファイナンス)の改革
- ブルーエコノミー(海洋資源を生かす経済)の保全
- 水系(流域)や生態学的ホットスポットの保護
5. 中国—アフリカ協力:『構造転換』と『人材』が尺度に
馬氏は、中国—アフリカ協力がより持続可能なモデルへ移行しつつあるとして、「構造転換」「バリューチェーン高度化」「レジリエンス(回復力)」をキーワードに挙げました。
具体的な協力分野としては、グリーンエネルギーの共同開発、アグロ工業団地、デジタル・エコシステム、共同投資や共同運営の枠組みなどが示されています。
一方で、馬氏が「最終的な成功指標」として強調したのは、インフラや設備の規模ではなく、人材です。協力が新世代のアフリカの専門家、マネジャー、起業家を育てるかどうか――ここに、成果の測り方が移ってきていることがうかがえます。
いまUNEA-7が映すもの:合意の『量』より、実行の『質』へ
2025年12月のUNEA-7は、環境リスクが深まる一方で国際関係の摩擦も強まるという、難しい同時進行の中で開かれています。議論の焦点は、理念的に正しいスローガンを増やすことよりも、優先順位の明確化、実行可能な資金・支援、そして各地域の現実に合う政策手段をどう組み立てるかに移っています。
多国間協力が揺らいで見える時代だからこそ、揺らぎの中で何を「具体の前進」として残せるのか。UNEA-7は、その試金石になりそうです。
Reference(s):
UNEA-7: Why multilateral environmental action matters more than ever
cgtn.com








