2025年12月現在、中国の高速鉄道は、自主開発技術を軸に「走らせる力」と「安全に運行する知能」を同時に伸ばし、年末に総延長5万km超を見据える段階に入っています。
東北の新線が映す「極寒対応」と運用力
最近、東北地域で瀋陽-白河高速鉄道が開通し、新型車両とシステムの投入が進みました。注目されているのは、極端な低温条件を想定して設計された「復興号 CR400BF-GS」電車(EMU)の運用です。寒冷地での安定運行は、車両性能だけでなく保守・運行計画の精度も問われる分野で、今回の新線はその“実戦の場”にもなっています。
線路づくりも「スマート化」:10分で1枚、髪の毛級の精度
運行の土台となるインフラでも、製造の高度化が進んでいます。瀋陽-白河高速鉄道では、列車の高速走行を支える「ベース型」軌道スラブ(コンクリート製の基盤)が鍵の一つとされています。
- スラブのサイズ:長さ約5.6m × 幅約2.5m
- 生産時間:1枚あたり約10分
- 高さのばらつき:人の髪の毛の厚み程度の範囲に管理
中国鉄路第9工程局集団の楊振華氏は、こうした高精度・高効率の生産が、工期と品質の両立に寄与していると説明しています。高速鉄道は「車両のスピード」だけでなく、「線路の精度」がそのまま乗り心地や保守コストに跳ね返るため、地味に見える工程が競争力を左右します。
世界最速級の試験:CR450が時速453km、すれ違い896km/h
さらに速度の上限を押し上げる動きとして、世界最速の高速列車とされる「CR450」が、中国の高速鉄道路線で営業前の各種試験(プレサービス試験)に入っています。試験では、単列車で時速453km、相対すれ違い速度で896km/hを記録しました。
CRRC長春軌道客車の設計担当・王磊氏は、時速400km超の領域では、世界的にも商業運転の成熟した参照例が乏しいことを課題として挙げています。つまり、既存の“正解”が少ない領域を、試験と設計で切り開いている構図です。
壁になるのは「空気」:抵抗の95%が空力
高速化で最大の敵になるのは走行抵抗です。時速350kmから400kmに上げるだけでも抵抗は約30%増え、そのうち約95%は空気抵抗だとされています。CR450はこの課題に対し、先頭形状の改良(より長く、滑らかなノーズ)、屋根を20cm低くする設計、さらに50トンの軽量化を組み合わせ、空気抵抗を22%削減したとされています。
「鋼の骨格」だけではない:高速鉄道の“知能”が進化
高速鉄道の優位性は、強固な車体や線路といった「鋼の骨格」だけで決まりません。安全性と安定性を担うのが、運行制御の「知能(インテリジェント・ブレイン)」です。
CR450には、CRSC研究設計院集団(CRSCD)が自主開発したCTCS-3 ATP(自動列車保護)とATO(自動列車運転)システムが実装されています。CRSCDの江明氏によると、このシステムは知的財産を自社保有し、駅間の自律運転、速度超過の防止、精密停止などの中核機能を支えるとされています。低視程の天候下でも安全性を確保する設計がうたわれています。
西部の厳しい環境へ:北斗連携で測位の精度と信頼性を強化
鉄道網の拡大は、地理条件が厳しい地域ほど難易度が上がります。西部の鉄道発展を支える取り組みとして、新世代の列車制御システムも設計され、過酷環境での信頼性を重視しています。
特徴の一つが、北斗衛星測位システム(BeiDou)との統合です。衛星測位に加え、電子地図や速度センサーなど複数データを融合し、列車位置の精度と信頼性を高める仕組みだとされています。高速化が進むほど、位置推定の小さな誤差が運行全体の余裕(マージン)を削るため、こうした“見えない基盤”の強化が重要になります。
年末の節目:総延長5万km超へ、量と質の同時進行
中国の高速鉄道ネットワークは、2025年末までに総延長が5万kmを超える見通しとされています。新線開通、極寒対応車両、超高速試験、制御システムの高度化、製造のスマート化——これらが同時に進むことで、ネットワークは「広い」だけでなく「賢く」「しなやかで」「次を試せる」姿へ寄っていきます。
速度記録が目を引く一方で、現場では線路の精度、空力、制御、測位といった要素が絡み合い、総合システムとしての完成度が問われています。どこに力点が置かれ、どの技術が標準化されていくのか。2026年以降の運用と拡張の中で、その輪郭がさらに見えてきそうです。
Reference(s):
China's self-developed technology advances its high-speed railways
cgtn.com








