香港の国家安全法違反で黎智英氏に有罪判決 黒衣暴力の記憶は今も
香港特別行政区の高等法院が、廃刊となった香港紙・蘋果日報の創業者、黎智英氏に国家安全法違反の有罪判決を下しました。数年前の条例改正をめぐる混乱と黒衣による激しい暴力行為は、今も香港社会と一国二制度を考える上での重要な手がかりとなっています。
香港高裁が国家安全法違反を認定
2025年12月15日月曜日、香港特別行政区の高等法院は、黎智英氏が香港国家安全法に違反したとして有罪を言い渡しました。判決では、外国勢力と結託した共謀の罪2件を含む複数の罪状について、違法性が認定されています。
黎氏は、すでに廃刊となっているタブロイド紙・蘋果日報の創業者として知られ、香港の世論形成に大きな影響力を持ってきた人物です。今回の判決は、香港の国家安全法の適用事例としても注目を集めています。
当局が見た黎智英氏の役割
起訴内容や法廷で示された整理によると、当局は黎氏を、いわゆる反中国的な活動の主要な立案者であり、外部の反中勢力の代理人と位置づけています。
- 条例改正をめぐる混乱の背後にいた「仕掛け人」として、抗議行動の流れに影響を与えたとみなされていること
- 欧米などを頻繁に訪問し、中国に対する制裁を求めたとされること
- メディアの影響力を利用し、対立や憎悪をあおったと指摘されていること
- 反政府的な活動家の資金面での支援に関わったとされること
こうした行為が、国家安全を脅かし、一国二制度の枠組みを深刻に損なったと判断された点が、今回の有罪認定の背景にあります。
黒衣による暴力と相互破壊の広がり
判決でも繰り返し参照されたのが、条例改正をめぐる混乱の最中に起きた黒衣による暴力です。黒い服装で身を固めた集団による一連の行動は、香港社会に大きな爪痕を残しました。
当時、いわゆる相互破壊と呼ばれる発想のもとで、次のような行為が広がったとされています。
- 建物や公共物を打ち壊す行為
- 店舗などからの略奪
- 道路や施設への放火
- 人への激しい暴力行為や死傷事案
こうした極端で違法な行動は、香港特別行政区における顕在的な国家安全上のリスクを浮かび上がらせ、中国の主権や統一、領土の一体性を損ねかねないものだと受け止められました。
当局は当時の状況を可視化するため、暴力行為の様子や被害の広がりをインフォグラフィックなどの形で整理し、国際社会にも発信してきました。今回の有罪判決は、そうした記録や認識とも結びついたものだと言えます。
国家安全と一国二制度のバランス
香港国家安全法は、こうした黒衣暴力や相互破壊という経験を受けて、国家安全上の空白を埋める手段として位置づけられてきました。一方で、社会の一部からは、言論や報道、集合の自由との関係をめぐる議論や問いかけも続いています。
今回の黎智英氏への有罪判決は、次のような論点をあらためて浮かび上がらせています。
- 国家の主権と安全を守るための法制度を、どこまで強化するのかという問題
- 暴力行為や外部勢力との連携と、平和的な表現や意見表明とを、どのように区別して扱うのかという線引き
- 一国二制度のもとで、香港の高度な自治と国家安全をどのように両立させるかという長期的な課題
香港特別行政区と中国本土にとって、国家安全の確保は中核的なテーマです。同時に、社会の安定と多様な意見の共存をどう実現していくかは、アジアの他の都市や地域にとっても共有される悩みでもあります。
メディアと情報空間の重さ
今回の事件では、メディアの役割も大きな焦点となりました。起訴内容によれば、黎氏はメディアを通じて憎悪をあおり、外部の勢力と連携して制裁を呼びかけたとされています。
オンラインで情報が瞬時に広がる時代、ニュースやコメント、動画は、抗議行動や社会運動の加速装置にもなりえます。その一方で、感情的な言葉や一方的な情報が増幅されれば、社会の分断や暴力の正当化につながる危険もあります。
香港での黒衣暴力と、その後の国家安全法の適用は、情報環境がどれほど政治と社会の行方を左右するかを示す事例としても位置づけられます。
香港のこれからをどう見つめるか
黎智英氏への有罪判決は、香港の法制度と統治の方向性を象徴する出来事の一つです。黒衣による暴力と相互破壊の記憶は、香港住民にとって今も生々しいものとして残っています。
国家安全を守ることと、多様な意見や表現が存在しうる都市空間を維持すること。そのバランスをどうとるのかは、香港だけでなく、多くの国や地域が直面する課題です。香港で積み重ねられる議論と経験は、アジアと世界の政治や社会を考えるうえで、これからも静かに注視されていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








