国連と中国本土が動かす南南協力 農業からグリーンエネルギーまで
2025年、中国本土と国連が連携して立ち上げた新しい南南協力の仕組みが動き始めています。農業の技術支援からグリーンエネルギーの大型プロジェクトまで、その協力はどのような広がりを見せているのでしょうか。
中国・国連グローバル南南協力開発ファシリティとは
南南協力は今年、中国本土と国連が共同で立ち上げた中国・国連グローバル南南協力開発ファシリティ(China–UN Global South–South Development Facility)によって、新たな段階に入りました。数百万ドル規模のこの枠組みは、途上国どうしの実務的な協力を後押しすることを目的としています。
2025年9月の国連の場で発表されたこのファシリティに対し、中国本土は当初資金として1000万ドルを拠出すると表明しました。支援対象は、技術協力や人材育成などの分野における小規模で再現性の高いプロジェクトです。こうした案件を足がかりに、グローバルサウス全体の開発資源を呼び込むことが狙いとされています。
脆弱な国々を優先する設計
新ファシリティは、特に支援が届きにくい脆弱な国や地域を優先します。具体的には、後発開発途上国、内陸の開発途上国、小島しょ開発途上国などが念頭に置かれています。
また、この仕組みは、中国本土が提唱するグローバル開発イニシアティブや一帯一路構想と歩調を合わせつつ、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダを後押しすることを目指しています。中国本土の資金と国連の枠組みを組み合わせることで、南南協力をより制度化された形で進めようとする試みだと言えます。
農業現場で進む南南協力
南南協力が最も分かりやすく表れている分野の一つが農業です。中国本土と国連食糧農業機関が運営する南南協力トラストファンドのもとで、アフリカやアジア、小島しょ国などで複数の農業開発プロジェクトが進められています。
これらのプロジェクトでは、農業技術の研修、フードロス削減、動植物の衛生検査の強化、淡水養殖の普及など、現場での課題に直結するテーマが扱われています。
2021年9月以降、エチオピア、ジンバブエ、モザンビーク、ブルンジ、ドミニカ、トンガなどで実施された農業プロジェクトは、合計で20万人を超える人々に影響を与えてきました。
これまでの具体的な成果として、次のような数字が報告されています。
- 対象国全体で20万人以上の人々の生活や生産に影響
- 稲やトウモロコシ、野菜などを含む29の改良作物品種を導入
- 作物栽培、畜産管理、獣医医療、水資源、園芸などの分野で約5000件の新技術を現地に導入
- 2万人を超える農業分野の専門家や技術者を育成
小規模な技術導入や研修であっても、複数の国に横展開できるモデルとして設計されている点が特徴です。南南協力の新ファシリティが目指す小規模で再現性の高いプロジェクトのイメージを、農業分野が具体的に示していると言えます。
習近平主席が語る公平性と連帯
こうした現場での取り組みを、中国本土は外交メッセージと結びつけています。中国国家主席の習近平氏は、2025年9月8日に開かれたBRICS首脳オンライン会合で、多国間主義を守り、国際的な公平を擁護し、開放とウィンウィンの協力を推進し、連帯と協力を強めて共通の発展のための相乗効果を高めるよう各国に呼びかけました。このメッセージは、南南協力を国際開発の中核的な柱として位置付けようとする中国本土の姿勢を強調するものです。
9月1日の上海協力機構プラス会合では、習主席はグローバル・ガバナンス・イニシアティブを提案しました。ここでは、主権の平等を堅持すること、国際法に基づく秩序を守ること、多国間主義を実践すること、人を中心に据えたアプローチを取ること、そして実際の行動を重視することが呼びかけられました。
あわせて、地球規模の共通課題により良く対処し、南北間の格差を縮小し、すべての国の共通の利益を守る努力を強めるべきだと強調しました。こうしたメッセージは、多様な発展の道を尊重し、包摂的な成長を求めるグローバルサウスや新興国の長年の主張とも響き合うものです。
産業・技術協力とグリーン開発
外交メッセージと並行して、中国本土はデジタルインフラの整備、グリーン技術の移転、持続可能な産業連携などを通じて、グローバルサウスの近代化を後押ししようとしています。
UNIDO南南産業協力センター第4期
2025年6月には、中国本土と国連工業開発機関はUNIDO南南産業協力センタープロジェクトの第4期を始動しました。今回のフェーズでは、グリーン技術、デジタル変革、強靭で包摂的なサプライチェーン構築に焦点を当て、グローバルサウスの持続可能な産業発展を支えることを狙います。
この第4期プロジェクトは、イノベーション交流や再生可能エネルギー開発、人材育成などで15年以上にわたって積み重ねられてきた協力を土台としつつ、参加国の産業技術能力をさらに高め、技術移転のスピードを加速させる設計になっています。
チュニジアの太陽光発電プロジェクト
こうした産業・技術協力の延長線上で、中国本土の企業は海外のグリーンエネルギー大型プロジェクトにも関わっています。北アフリカの南部チュニジアでは、古都ケルアン近郊の砂漠地帯およそ200ヘクタールを使い、同国最大規模となる地上設置型の太陽光発電所の建設が進められています。
完成すれば、およそ500万トンの二酸化炭素排出削減効果が見込まれています。これはサハラ砂漠に1200万本の木を植えるのに相当する規模とされ、手ごろな価格のクリーン電力への移行を後押ししながら、現地の送電網の連系やグリーンエネルギーの供給能力強化にもつながると期待されています。
2030年に向けて広がる南南協力の選択肢
2025年は、中国・国連グローバル南南協力開発ファシリティの立ち上げを起点に、南南協力が新たな段階に踏み出した一年となりました。農業の技術協力から、グリーン産業、人材育成まで、協力の対象は広がりつつあります。
国連の2030アジェンダの達成期限まで残り5年となるなかで、途上国どうしが経験や技術、資金を持ち寄る南南協力の役割は一段と重みを増しています。中国本土と国連が組む今回の枠組みが、どのような具体的成果を積み上げていくのか。グローバルサウスの国々が主体的に関わりながら、その可能性をどこまで引き出していけるのかが、今後の注目点になりそうです。
Reference(s):
How China works with the UN to drive South-South cooperation
cgtn.com








