中国本土吉林省に世界最大級グリーン水素拠点 不安定な再エネを安定燃料に
中国本土の吉林省で、風力と太陽光などの変動が大きい再生可能エネルギーを、安定したグリーン燃料の大量生産につなぐ大型プロジェクト「Qingqing No. 1」の第1期が稼働を開始しました。世界最大級とされるグリーン水素・アンモニア・メタノール一体型の施設で、再エネの新たな活用モデルとして注目されています。
「Qingqing No. 1」プロジェクトとは
このプロジェクトを手がけるのは、中国能源建設集団(China Energy Engineering Group)です。同社は、今回の施設について「変動の大きい新エネルギーと、途切れが許されない化学プラントの安定稼働を両立させるという世界級の難題を克服した」と説明しています。
プロジェクトの特徴は、次のような『風・太陽光・水素・アンモニア・メタノール一体化』モデルにあります。
- 風力発電と太陽光発電から直接グリーン電力を供給
- その電力で水を電気分解してグリーン水素を製造
- 水素を原料にグリーンアンモニアやグリーンメタノールを合成
- 燃料や産業原料として利用可能なかたちで外部に供給
電力と化学プロセスを一つの拠点に統合することで、送電ロスを抑えながら、再生可能エネルギーを最大限に活用する狙いがあります。
AIが支える「変動する電力」と「安定生産」の両立
風力や太陽光などの再生可能エネルギーは、天候によって発電量が大きく変動します。一方で、アンモニアやメタノールなどの化学プラントは、温度や圧力を一定に保つ必要があり、急な停止や出力変動は安全性や効率に直結します。
「Qingqing No. 1」では、このギャップを埋めるために、ビッグデータと人工知能(AI)を活用した高度な制御システムを導入しています。この制御システムは、プロジェクト側が「頭脳」と表現する中枢で、次のような役割を持ちます。
- 風力・太陽光発電所の出力予測とリアルタイム監視
- 化学プラント側のエネルギー需要の精密な把握
- 電力供給と需要のマッチング、設備の稼働率の最適化
- 急激な出力変動時のリスク回避と安全確保
この柔軟な制御により、再エネ特有の出力の揺らぎを吸収しつつ、下流のグリーンアンモニア・グリーンメタノール生産を安定して継続できる体制を整えたとされています。
第1期だけでグリーン水素4.5万トン 世界最大級の設備規模
プロジェクト全体の計画投資額は300億元(約42億ドル)近くに上ります。今回稼働を開始した第1期だけでも、次のような規模が公表されています。
- 新エネルギー電源容量:800メガワット
- 年間生産能力:グリーン水素4万5000トン
- 年間生産能力:グリーンアンモニアとグリーンメタノール合計20万トン
- 電解装置:64基の電解器(電気分解設備)
- 水素貯蔵:45万立方メートルの球形水素タンク群(運転中として世界最大規模とされる)
とくに、グリーン水素の年間4万5000トンという生産規模は、中国本土全体の現在の年間生産量のおよそ5分の1に相当するとされています。単一プロジェクトとして、国内の供給構造を左右し得るサイズです。
環境面では、年間で約140万トンの二酸化炭素(CO2)排出削減効果が見込まれています。これは、大規模な石炭火力発電所を複数基分置き換えるのに匹敵する規模の削減量です。
グリーンアンモニア・メタノールが運ぶ「ゼロカーボン燃料」
このプロジェクトで生産されるグリーンアンモニアとグリーンメタノールは、ゼロカーボン燃料として世界的に注目が高まっています。
水素そのものは軽く、貯蔵や輸送が難しいという課題があります。アンモニアやメタノールは、水素を化学的に含んだ形で運ぶことができ、液体燃料として扱いやすいことから、次のような用途が期待されています。
- 海運:大型船舶向けの次世代燃料
- 産業:化学・素材産業の原料や燃料の脱炭素化
- エネルギー:発電燃料としての活用や、水素キャリア(運搬役)としての利用
「Qingqing No. 1」のように、再生可能エネルギーから直接グリーン燃料を製造し、そのまま輸送しやすい形に変換する「一体型」のモデルは、電源と需要地が離れた地域でも再エネを活かす方法として、今後の応用が広がる可能性があります。
中国本土のグリーン水素戦略と国際的な位置づけ
今回のプロジェクト稼働により、グリーン水素分野における中国本土の存在感はいっそう高まりそうです。すでに、中国本土のグリーン水素生産能力は、世界全体の半分を超えているとされており、「Qingqing No. 1」はその流れをさらに後押しする取り組みと位置づけられます。
各国や地域が脱炭素とエネルギー安全保障をめぐってグリーン水素や派生燃料の活用を模索するなかで、こうした大規模実証を兼ねた商業プロジェクトが、技術面・コスト面でどのような波及効果をもたらすのかが注目されています。
変動の大きい再生可能エネルギーを、いかに安定した形で社会インフラに組み込むか――。その一つの答えを、中国本土北東部の吉林省で実装しようとする試みが、静かに走り始めています。
Reference(s):
China's innovation links unstable energy to stable green fuel output
cgtn.com








