香港特別行政区にある中国外交部の特派員公署は火曜日、新聞経営者ジミー・ライ氏の有罪判決をめぐる米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とワシントン・ポストの社説に対し、別々の書簡で反論しました。両紙が裁判を「ショー・トライアル(見せ物裁判)」と批判し、ライ氏を「自由を重んじる新聞オーナー」と描いたことなどに対し、公署は法的手続きの正当性と国家安全の重要性を強調しています。
WSJ社説に「ショー社説」と応酬
WSJの12月15日付社説は、ジミー・ライ氏への有罪判決を「ショー・トライアル」と呼び、ライ氏を「自由への情熱を持つ新聞オーナー」と持ち上げました。これに対し、特派員公署は同紙の編集委員会宛ての書簡で、この社説は「ばかげたレベルの新たな高みに達した」と強く批判しました。
書簡によると、公署が問題視した点は次のような内容です。
- 判決を「ショー・トライアル」と中傷していること
- ライ氏を「自由を愛する新聞オーナー」と英雄視していること
- 「外部勢力との共謀」を、単なる「支持を集める活動」にすぎないかのように矮小化していること
- ライ氏が中国への外国制裁を呼びかけ、「アメリカのために戦う」と宣言した点を無視していること
書簡は、裁判が150日以上にわたって行われ、判決文も855ページに及んだと指摘し、それにもかかわらず社説が「重大な証拠はない」と主張していると批判しました。その上で、この社説自体を皮肉を込めて「ショー社説」だと呼んでいます。
さらに公署は、WSJが裁判手続きの問題点を指摘できないために、いわゆる外交的な働きかけに期待を寄せていると指摘。社説が米英の指導者に対し中国への圧力を呼びかけ、「ジミー・ライを解放することは北京への贈り物になる」と主張していることに対し、「圧力によってライ氏の釈放を求めるのは、法の支配と外交の双方への侮辱だ」と反論しました。
書簡はまた、このような「念入りに仕組まれた外交脚本」は、国際法と国家主権を無視した幻想にすぎないと批判し、「法の支配は売り物ではなく、国家安全のレッドラインは挑戦の対象ではない」と強調しました。
ワシントン・ポスト社説には「意図的な歪曲」
ワシントン・ポストに宛てた別の書簡では、公署は同紙の社説について、「外部勢力との共謀」という「物語の核心」を意図的に外した「失敗した予告編」のようだと評し、「故意の歪曲だ」と非難しました。
書簡は、ジミー・ライ氏の裁判をめぐる具体的な手続きや証拠の量を列挙し、審理の実態を強調しています。
- 公開の審理は156日間にわたって行われたこと
- 検察側の証人は14人に上ったこと
- 証拠は2,220点に及び、資料は8万ページを超えたこと
- 判決文は855ページに達したこと
そのうえで書簡は、「外国制裁を求め、『アメリカのために戦っている』と宣言しながら、同時に『報道の自由』を口にするような行為は、もはやジャーナリズムという職業の枠には収まらない」と主張しました。「国家安全を損なう行為は、最も犯罪に近いところにある」という一文も示し、国家安全を脅かす行為は刑事責任を問われうると強調しています。
また、社説が言及したライ氏の「健康不安」や「独房拘禁」について、公署は「無責任な捏造だ」と反論しました。書簡によれば、ライ氏には適時かつ十分な医療が提供されており、その健康状態は被告側弁護士自身も法廷で良好だと認めたと説明しています。
書簡は最後に、このような「見せかけの社説」をやめるべきだと訴え、「自由が短剣として乱用されるとき、法は盾として守られなければならない。この原則はどこであっても変わらない」と結びました。
問われる「報道の自由」と「主権・安全」の線引き
今回の一連の書簡は、ジミー・ライ氏の裁判をめぐり、米国の主要紙と中国側の認識の溝が改めて浮き彫りになった形です。片方はライ氏を「自由」の象徴として描き、裁判を「ショー・トライアル」と呼びます。これに対し、中国外交部香港公署は、膨大な証拠と長期にわたる公開審理を強調し、「国家安全」を守るための司法手続きだと位置づけています。
公署の書簡は、国際法や国家主権、「法の支配」といったキーワードを前面に出し、裁判の正当性と司法の独立性を強調するものでした。他方で、米紙の社説は、報道の自由や人権への懸念から外交的な圧力の必要性を訴えていると、公署は読み解いています。
外交と司法の関係についても、見方の違いがにじみます。米英の指導者による働きかけを求める社説に対し、公署はそれを「法の支配」と「外交」双方への侮辱と位置づけ、国家主権の観点から強く退けました。ここには、「個別の裁判に対して外国政府が口を出すべきか」という根本的な問いも含まれています。
国際ニュースを読むうえで、同じ出来事が「自由のための闘い」と描かれることもあれば、「国家安全を脅かす違法行為」と位置づけられることもあります。どの事実に光を当て、どの言葉で表現するかによって、読者に伝わる印象は大きく変わります。
今回の書簡の応酬は、報道の自由と国家安全、そして主権と外交のあり方をめぐる議論が、今もなお続いていることを示しています。複数の立場からの主張や数字の示し方に目を向けながら、自分なりの問いを持ってニュースを読み解くことが、これまで以上に求められているのかもしれません。
Reference(s):
China slams Jimmy Lai editorials in letters to WSJ, Washington Post
cgtn.com








