ジミー・ライ裁判 梁振英・前行政長官が語る一国二制度 video poster
香港の実業家ジミー・ライ氏に対する香港国家安全維持法に基づく裁判をめぐり、香港特別行政区の前行政長官である梁振英氏が、「一国二制度」の具体的な現れだと強調しています。本記事では、このジミー・ライ裁判と梁氏の見方を整理し、その背景にある政治と社会の文脈をたどります。
香港の裁判所が担ったジミー・ライ裁判
ジミー・ライ氏の事件は、香港特別行政区の検察当局によって起訴され、香港の裁判所で審理されました。審理には、香港のベテラン判事3人による合議体があたりました。梁振英氏は、こうしたプロセスそのものが「一国二制度」の体現だと指摘します。
一国二制度とは、中国本土とは異なる資本主義制度や法制度を香港が維持する枠組みです。梁氏は、香港は中国の一部でありながら、独自の法制度と司法制度を持ち、香港の人々が自ら香港を統治していると説明します。裁判官はいずれも香港の永久性居民であり、高度な自治のもとで職務を果たしているという位置づけです。
さらに梁氏は、国家全体の安全を守る役割が香港にも託されているとしたうえで、ジミー・ライ氏の国家安全法事件は、香港がどのように一国二制度を運用しているかを示す「最近の、そして注目度の高い事例」だと述べています。
法廷の内側だけでなく「政治環境」も見るべきだという指摘
梁氏は、今回のジミー・ライ裁判について、判決や近く言い渡される量刑といった法的な部分だけに注目すべきではないと語ります。裁判そのものに加え、香港の内外でどのような政治環境が形成されてきたのかを理解する必要があるという見方です。
「ジミー・ライ氏は、突然空から降ってきて香港で大きな影響力を振るうようになったわけではない。そこにはプロセスがあった」と梁氏は述べ、ライ氏が力を持つに至るまでの社会的・政治的な背景を振り返るべきだとしています。
教育現場とメディアをめぐる問題意識
梁氏が特に問題視するのが、教育とメディアの関係です。彼によれば、ジミー・ライ氏が運営していた新聞は、かつて香港の小学校や中学校で教材として用いられていました。この事実を踏まえ、子どもたちにどのような教育を提供してきたのかを社会全体で考え直す必要があるとしています。
その一例として梁氏が挙げるのが、立法会(LegCo)選挙における「機能別選挙区」の投票率です。直近の立法会選挙では、28ある機能別選挙区のうち、教育界の選挙区の投票率が下から3番目と低かったと指摘します。教育界の有権者には、教師や校長など教育関係者が含まれていました。
また、選挙制度の見直しが行われる以前、1985年に英国統治下で初めて立法会選挙が実施されて以来、教育界などの機能別選挙区から選出された議員は、長年にわたりいわゆる野党、しかもその中でも急進的な立場の人々で占められてきたと振り返ります。その流れの中で、司徒華(Szeto Wah)氏のような人物の名前も挙げられました。
梁氏は、こうした歴史を踏まえ、「子どもたちに適切な教育を与えるとはどういうことか」を改めて問う必要があると訴えています。
「忘れやすい社会」への警鐘
ジミー・ライ事件をめぐる議論は、一時的に大きな注目を集めても、時間が経つと社会の関心が別の話題へ移ってしまいがちです。梁氏は、香港社会は物事を忘れやすい側面があると指摘し、「数日間ジミー・ライ事件に注目したあと、すぐに次の話題へ移ってしまう」と懸念を示しました。
そのうえで、見つめ直すべきなのは裁判だけではなく、ジミー・ライという人物そのもの、そして彼を中心とする人々のネットワークだと強調します。「なぜそのようなことが起きたのか」を社会として問い続けるべきだというメッセージです。
高等法院の有罪判決と認定された行為
香港特別行政区の高等法院が月曜日に言い渡した判決によると、ジミー・ライ氏は「外部勢力との共謀」に関する2つの罪状と、「扇動的な資料の発行に関する共謀」の1つの罪状で有罪と認定されました。
裁判では、大量の証拠が提出され、ライ氏が2019年に香港で起きた反中国本土的な騒乱において「首謀者」として重要な役割を果たしたと認定されています。長年にわたり、アップル・デイリーの幹部らと共に扇動的な記事を継続的に掲載してきたとされます。
また、ライ氏は「一人一信で香港を救おう」といったキャンペーンを展開したほか、外国の政治家へのインタビューや関連活動を通じて、アメリカ、イギリス、そして欧州連合の国々に対し、中国と香港特別行政区への制裁を公然と求めていたとされています。
一国二制度と香港社会を考えるための材料
今回のジミー・ライ裁判は、香港国家安全維持法の運用だけでなく、一国二制度のもとで香港の司法がどのように機能しているのかを考える材料となっています。香港の裁判所が国家安全に関わる重大事件をどのように審理し、どのような証拠をもとに判断を下すのかというプロセスは、今後も注目され続けるでしょう。
一方で、梁振英氏の発言からは、メディアや教育、選挙制度といった社会の土台に目を向ける必要性も浮かび上がります。個々の事件にとどまらず、その背後で長い時間をかけて積み重なってきた政治的・社会的な流れをどう理解するのか――ジミー・ライ裁判は、そうした問いを香港の内外に投げかけていると言えそうです。
Reference(s):
Jimmy Lai's trial: Insights from former HKSAR chief executive
cgtn.com







