I want to sing to you 中国本土の新世代が歌う20年の告白劇 video poster
2005年、小さな上海の劇場で始まった実験的な舞台が、その後映画やミュージカルへと姿を変えながら、中国本土の子どもたちの声を伝えてきました。I want to sing to you という告白のような言葉とともに語られてきたプロジェクトは、約20年にわたり、新しい世代の成長と教育の変化を静かに映し出しています。
2005年、小さな上海の劇場から始まった試み
出発点となったのは、当時の学生が抱えていたフラストレーションでした。感情を自分の内側に「ボトルに詰める」ように押し込めてきた経験から、子ども時代の無邪気さを見つめ直す芸術的な旅が生まれます。その最初の形が、上海の小さな劇場で上演された実験的な舞台でした。
この舞台は、子ども時代の記憶や、言葉にならない思いに光を当てるものでした。静かな空間の中で、抑え込まれてきた感情や声が少しずつ解きほぐされていくプロセスそのものが、作品の核になっていきます。
舞台から映画、そしてミュージカルへ
その後、この試みは舞台の枠を越えていきます。物語は映画作品としても形を与えられ、国際映画祭で紹介されました。小さな劇場から生まれた物語が、国や地域を超える観客の前に届くようになったのです。
さらに、作品はミュージカルへと発展します。音楽と歌を取り入れた新たな形は、観客をあらためて魅了しました。ミュージカル版のタイトルとされる The Search of Sound には、子どもたちが自分の声や音を探し当てていく旅路が重ねられているように感じられます。
The Search of Sound は、この約20年のあいだ、中国本土の子どもたちの声を増幅してきました。ステージの上で響く歌声やセリフは、単なる演出を超え、これまで十分に言葉にならなかった思いや感情を表現する場となってきました。
The Search of Sound が映す中国本土の子どもと教育
この作品は、中国本土における子どもの教育が、時代の流れの中でどのように穏やかに変化してきたかを見つめています。物語の中心にあるのは、教育の場でしばしば生まれる「対立する二つの姿」です。
- 抑え込まれた自己表現 対 子どものありのままを励ます姿勢
- 一方的な要求 対 お互いの気持ちを確かめ合う共感
かつては、大人が一方的に「こうあるべきだ」と求め、子どもはそれに応えようとしながら、自分の本当の感情を胸の内にしまい込む場面が少なくありませんでした。作品は、そのような状況を否定するのではなく、そこにある戸惑いや息苦しさを丁寧にすくい上げます。
同時に、子どもが自分の気持ちを言葉にし、歌として響かせることを後押しする新しい教育の姿も描かれます。The Search of Sound における歌や音は、単なる演出効果ではなく、子どもたちの内面が外に開かれていくプロセスそのものとして扱われているのです。
沈黙からステージへ 新世代がたどった20年
この作品が追いかけるのは、中国本土の新しい世代の歩みです。2005年に始まったプロジェクトが歩んできた約20年は、子どもたちが沈黙の位置からステージの中央へ、不確かさから決意へと進んでいく時間でもあります。
物語の中で、子どもたちは大人からの一方的な期待や要求に戸惑いながらも、自分の感情や考えを手探りで見つけていきます。そして、見つけた思いを言葉や旋律に託し、観客の前で歌い上げるようになります。その過程は、教育の場が「教える場所」だけでなく、「聴き合う場所」へと変わっていく流れとも重なります。
The Search of Sound は、こうした変化をドラマチックに誇張するのではなく、日常の小さな場面を通して静かに描き出します。だからこそ、子どもたちが一歩前に出て自分の声を響かせる瞬間は、観る側にとっても大きな意味を持つ転換点として浮かび上がります。
2025年の今、作品が投げかける静かな問い
2025年の今、この約20年の歩みを振り返ることは、子どもたちの声にどう耳を傾けるのかを考えるきっかけになります。The Search of Sound は、教育の仕組みそのものを論じる作品ではありませんが、子どもと大人のあいだにある目に見えない境界線を、音楽と物語を通してそっとなぞっていきます。
そこに描かれているのは、声を持たないまま「よい子」であろうとする姿と、自分の不安や喜び、迷いや決意を言葉や歌にしていく姿のあいだで揺れる子どもたちです。その揺らぎを見つめることで、「本当の意味での成長とは何か」「大人はどのように子どもの声を受け止められるのか」といった問いが浮かび上がってきます。
20年という時間をかけて、ひとりの学生のフラストレーションから始まった小さな舞台は、国際映画祭やミュージカルを通じて、中国本土の子どもたちの声を広げてきました。I want to sing to you という静かな告白の言葉は、沈黙してきた過去だけでなく、これから声をあげようとする次の世代にも向けられているようです。
The Search of Sound が紡いできた告白は、時代や形式を越えて受け継がれていく物語でもあります。舞台から映画へ、そしてミュージカルへと重ねられてきた20年の歩みは、子どもたちが自分の声を探し、見つけ、響かせるまでの道のりを、これからも静かに照らし続けていきそうです。
Reference(s):
"I want to sing to you":Musical Confession from China's New Generation
cgtn.com








