2025年の中国本土サイエンスニュース5選 半導体から幽霊粒子まで video poster
2025年の終わりが近づくなか、中国本土発の科学ニュースを振り返ると、まるで未来のダイジェストを先取りしているかのような話題が並びます。今年多く読まれた5つのトピックから、その勢いと背景を整理します。
2025年、中国本土の科学ニュースは何が注目されたか
今年のランキングを眺めると、次世代半導体、砂漠の緑化、ヒト型ロボット、がん研究、そして中微子と呼ばれる幽霊粒子まで、分野は多岐にわたります。一見ばらばらに見えるこれらのニュースには、長期の投資が実を結びつつあるという共通点が見えてきます。
1. 次世代半導体:インジウムセレン化物が切り開く新時代
半導体チップは、2025年も世界の科学技術ニュースを席巻しました。その中でもとくに注目を集めたのが、インジウムセレン化物と呼ばれる黄金の半導体を用いた新しい量産技術の開発です。
中国本土の研究チームは、固液固成長法という手法を用いて、インジウムとセレンの原子比を1対1で厳密に制御しながら、大面積のインジウムセレン化物を作ることに成功しました。これにより、シリコンを超える性能を持つ次世代チップの量産に道が開けたとされています。
2次元半導体の製造では、原子レベルでの組成のばらつきが技術的な壁となってきました。今回の成果は、その長年の課題を克服したものであり、将来の高性能コンピューティングや人工知能向けチップの基盤技術として期待されています。
2. 砂漠を緑のベルトに:工学的アプローチで砂漠化と向き合う
環境分野で大きな話題となったのは、中国北西部・寧夏回族自治区に広がる騰格里砂漠の縁に築かれた防護帯です。中国で4番目に大きいこの砂漠の南東縁に沿って、チェッカーボード状の緑の格子が延々と続く光景は、2025年6月に防護帯が完成したことで象徴的な意味を持つようになりました。
この地域では、夏の短い雨期に合わせて草や低木を植え、砂丘を固定する取り組みが何十年も続けられてきました。防護帯の完成は、砂漠の拡大を抑え、周辺の農地や集落を守るうえで一つの節目となっています。
さらに新疆ウイグル自治区のタクラマカン砂漠では、太陽光パネルの下で農作物を栽培する新しいモデルが導入されています。砂丘の上に太陽光発電設備を並べ、その日陰を生かして作物を育てるこの仕組みは、エネルギーと食料、そして砂漠の緑化を同時に進める試みとして評価され、世界工学機構連盟の「2025年世界十大工学成果」にも選ばれました。
3. ヒト型ロボットが舞台と街へ:研究室から現実世界へ
2025年は、ヒト型ロボットにとっても飛躍の年でした。春節の前夜に放送された大型テレビ番組では、中国本土の企業が開発した16体のヒト型ロボットが登場し、ステージ上でハンカチを投げてはキャッチするパフォーマンスを披露しました。
体操選手のようなしなやかさにはまだ届かないものの、複雑な動作を遅延なくそろえてこなす姿は、ロボットの運動能力が人間に近づきつつあることを印象づけました。
年内には、世界初とされるヒト型ロボットのハーフマラソンやヒト型ロボット競技大会も中国本土で開催されました。これらのイベントは、ロボット技術が研究室のデモを超え、屋外の長時間走行や多様な競技という現実的な条件の下で試される段階に入ったことを示しています。将来的には、物流や災害対応、介護など、日常の現場で活躍するロボットの姿を想像させるニュースでした。
4. 肝がん細胞の増殖を抑える天然化合物:伝統医薬と分子生物学の交差点
人の健康に関する研究も、2025年の重要なテーマでした。中国本土の研究者は、シリビンと呼ばれる天然の化合物が肝がん細胞の増殖を遅らせる可能性を持つことを明らかにしました。
シリビンは、伝統的な中国医学で用いられてきた生薬由来の成分です。実験室レベルの研究では、この物質ががん細胞の代謝バランスを乱すことで、腫瘍の成長を効果的に抑えることが示されたとされています。
まだ前臨床段階にあり、実際の治療薬として使えるようになるまでには時間がかかりますが、伝統医薬の知見と現代の分子生物学を組み合わせることで、新しいがん治療のヒントが生まれうることを示した例と言えます。
5. 幽霊粒子・中微子に挑む巨大観測装置:太陽ニュートリノの謎に手がかり
宇宙と素粒子の世界でも、中国本土の大型プロジェクトが存在感を示しました。十年にわたる建設を経て稼働を始めた江門地下中微子観測所は、運用開始からわずか数か月で、最初の大きな成果を出しました。
この巨大な中微子検出器は、「太陽ニュートリノ・テンション」と呼ばれる物理法則の食い違いに関する謎を検証し、その存在を確認することに成功したと報じられています。観測結果は、この装置が世界トップクラスの精度で動作していることを示すものでもあります。
さらに、中国本土では深海中微子検出器「Hailing」の建設も進んでいます。2025年には海上試験が完了し、深海に設置する最初の検出器は2026年に投入される予定とされています。海底から宇宙を聞くように信号をとらえるこの試みは、宇宙線や高エネルギー天体の理解をさらに一歩進めるものになりそうです。
5つのニュースが示すもの:地上から宇宙まで続く一本の線
こうして並べてみると、今年話題になった中国本土の科学ニュースは、計算資源を支える半導体、気候変動と砂漠化に向き合う環境工学、日常に近づくヒト型ロボット、がんとの闘いを支える生命科学、そして宇宙の成り立ちを探る素粒子物理という、互いに異なる5つの世界を映し出しています。
しかしその背景には、長期にわたる投資やインフラ整備、大規模な観測装置やフィールド実験を通じて、社会課題と基礎研究の両方に取り組もうとする姿勢が共通して見えてきます。これらの動きは、アジアや世界の研究ネットワークの中でも、今後ますます存在感を増していきそうです。
2025年の科学ニュースを振り返ることは、単に一年を総括するだけでなく、これからの10年や20年にどのような技術や発見が社会に影響を与えていくのかを想像するためのヒントにもなります。来年以降、どの分野で次の大きなブレイクスルーが生まれるのか、静かに注目していきたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








