中国本土チーム、PFASが魚から人体へ移行するルートを世界規模で可視化
いわゆる「永遠の化学物質」と呼ばれるPFASが、海産魚を通じて人の体内に入りうることを、中国本土の研究チームが世界規模で示しました。普段の魚料理と健康リスクの関係を考えさせる国際ニュースです。
科学誌サイエンスに今週掲載
今回の研究成果は、今週金曜日付で科学誌サイエンス(Science)のオンライン版に掲載されました。研究チームには、中国本土の Southern University of Science and Technology、Southeast University、Fuzhou University、Eastern Institute of Technology, Ningbo などの科学者が参加しています。
研究の中心となったテーマは、「PFASがどのように海産魚に蓄積し、その魚を食べる人間の体内へと移行していくのか」を、世界レベルで地図のように描き出すことです。
PFASとは何か:「永遠の化学物質」の正体
PFAS(ペルフルオロアルキル・ポリフルオロアルキル物質)は、日常生活で広く使われてきた合成化学物質の一群です。フライパンの焦げ付き防止コーティング、防水性能を高めたアウトドア用品、食品包装材など、私たちの身近な製品に利用されています。
これらの物質は自然環境の中で非常に分解されにくく、長期間残り続けることが知られています。そのため、PFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれています。
PFASは水や空気を通じて広がり、やがて海洋環境に到達します。海の中では、PFASが水から魚の体内に取り込まれ、時間とともに蓄積していきます。そして、その魚を人が食べることで、PFASが人間の体内にも入り込み、蓄積していく可能性があります。今回の研究は、この一連の流れを世界規模で可視化し、健康への潜在的なリスクに光を当てた形です。
世界212種の海産魚を対象に汚染度をマッピング
研究チームは、海産魚を通じたPFAS暴露の全体像をつかむため、世界各地の魚における汚染状況を整理し、数値モデルを用いて分析しました。
- 世界の海域ごとに、魚に含まれるPFAS汚染レベルをマッピング
- 一般的に消費されている212種の海産魚について、PFAS濃度を予測
- さまざまな地域で、魚の摂取を通じたPFAS暴露リスクを比較・評価
この結果、どの海域・どの魚種でPFAS濃度が高くなりやすいのか、また、どの地域の人々が相対的に高い暴露を受ける可能性があるのかを検討するための基盤が整えられました。
魚を通じて人の体内にPFASが入りうる経路が、地球規模で「見える化」されたことで、これまで点在していた情報が一本の線としてつながりはじめたと言えます。
海の向こうから食卓へ:貿易が変える暴露パターン
研究チームのメンバーである Qiu Wenhui 研究員は、世界の水産物貿易がPFASへの暴露パターンを静かに変えつつあると説明しています。
PFAS残留レベルが高い海域で獲れた魚が、国際貿易を通じて、残留レベルの比較的低い地域へも運ばれているためです。つまり、住んでいる地域の近海のきれいさだけでは、自分の食卓に並ぶ魚のPFASリスクを語りきれない状況が生まれています。
スーパーの鮮魚コーナーや外食店のメニューに並ぶ魚は、その産地が世界各地に広がっています。今回の研究は、そうしたグローバルな流通の動きが、PFASへの暴露パターンにどのような影響を与えているのかを考える手がかりを与えるものです。
食の安全、漁業管理、PFAS規制への手がかり
研究チームは、この成果が食の安全を守る上での科学的基盤となるとしています。世界212種の海産魚を対象にしたPFAS濃度の予測と暴露リスク評価は、今後の政策づくりにもつながる可能性があります。
- どの海域・どの魚種を優先的にモニタリングすべきかを検討する材料
- 漁獲や流通の管理など、漁業管理の方針を考える際の参考情報
- PFASの使用や排出に関する規制のあり方を検討するための科学的根拠
魚を食べることは、多くの地域で健康や文化を支える重要な習慣です。その一方で、見えない化学物質がどのような経路で私たちの体に届いているのかを把握し、どの程度の監視や規制が必要なのかを考えることは、社会全体のテーマになりつつあります。
静かに広がるPFAS問題をどう捉えるか
PFASは、便利な製品を支える一方で、環境中でほとんど分解されずに残り続けるという性質を持ちます。そのため、「気づかないうちに体内にたまっていくかもしれない」物質として、国際的な関心を集めています。
中国本土の研究チームによる今回の成果は、海から魚へ、そして人間の体へとつながるPFASの移行を世界規模で追跡しようとする試みです。海産物を通じたPFAS暴露のリスクは、住んでいる地域や食習慣によって異なりますが、自分や家族が日常的にどのような魚をどれくらい食べているのかを、一度振り返ってみるきっかけになるかもしれません。
静かに広がる「永遠の化学物質」の問題を、どのように捉え、どのような情報に基づいて判断していくのか。今回の研究は、そのための材料を一つ提供したと言えそうです。
Reference(s):
Chinese team maps how 'forever chemicals' move from fish to humans
cgtn.com








