最近公表された「Nature Index 2025 Science Cities」補遺版によると、世界のトップ10科学研究ハブのうち、中国本土の都市が初めて過半数を占めました。なかでも北京は2016年以来、世界トップの科学都市の座を保っています。
「一部の大都市」から「広域の連携」へ広がるイノベーション
今回のポイントは、イノベーションが北京など限られた都市だけのものではなくなり、地域の協調や多層的な前進を伴いながら、全国的なインパクトを持つ段階に入っていると示唆されている点です。
京津冀:北京の“ハブ機能”を、天津・河北へつなぐ
北京は技術革新の拠点としての役割を生かし、天津市・河北省との連動を強めることで、京津冀(Jing-Jin-Ji)全体のイノベーション能力の底上げを進めています。京津冀の協調発展は、2014年2月に示された国家戦略で、以降、地域の技術革新は着実に伸びてきたとされています。
- イノベーション・プラットフォーム:14
- 国家級の先進製造業クラスター:7
- 2024年の域内GDP合計:11.5兆元(約1.6兆ドル)
また、雄安新区の中関村サイエンスパークでは、北京からの11のプラットフォーム機関(科学技術、金融、産業研究など)がワンストップのサービス体系に統合され、企業が域外に出ずとも高品質なイノベーション資源へアクセスできる仕組みが整えられたといいます。
長江デルタ:産業の厚みが「新しい質の生産力」を押し上げる
中国沿岸の中ほどに位置する長江デルタ(上海市、江蘇省、浙江省、安徽省)は、産業の歴史的な蓄積を土台にしつつ、強いイノベーション能力で「新しい質の生産力(new quality productive forces)」の形成を後押ししているとされています。
- 域内のハイテク企業は全国の3割超
- デルタに拠点を置く国家レベルの総合技術イノベーションセンター「National Innovation Center par Excellence」は、200超の国内外大学・研究機関と連携
- 約600の有力企業と共同イノベーションセンターを設立
研究と産業が結びつく“接点”が増えるほど、技術が都市の外へにじむように広がり、次の投資や人材の移動を呼び込む循環が生まれやすくなります。
広東・香港・マカオGBA:インフラと共同研究で「厚み」をつくる
中国南部の広東・香港・マカオ・グレーターベイエリア(GBA)でも、技術革新能力が大きく伸びたとされます。地域には主要な技術インフラプロジェクトが9件整備され、広東・香港・マカオの共同ラボは31設立され、GBAの技術革新の基盤を形づくっているといいます。
いま何が起きているのか——「研究都市ランキング」以上の意味
都市の研究力が注目される背景には、研究成果が産業クラスターや製造業の高度化、さらに地域をまたぐ制度・資源の接続へとつながっている、という見取り図があります。北京の首位維持と、中国本土の都市がトップ10で過半を占めたという事実は、こうした“点から面へ”の動きが進んでいることを静かに映しています。
今後の焦点は、各地域で整備されたプラットフォームや共同研究の枠組みが、どれだけ継続的に人材・資本・研究成果を行き来させ、実装(社会や産業で使える形にすること)まで結びつけられるか——その運用力に移っていきそうです。
Reference(s):
How China drives high-quality development through tech innovation
cgtn.com








