年画が蔵書票に——「Gaining Wealth on Horseback」がつなぐ東西の版画文化 video poster
西洋の読書文化から生まれた蔵書票(ブックプレート)に、中国の年画(Nianhua)テーマ「Gaining Wealth on Horseback」を木版画として落とし込む——。異なる美意識を“同じ紙の上”で成立させる試みが、2025年のいま、国際文化交流の小さな橋として静かに注目されています。
蔵書票(ブックプレート)とは何か
蔵書票は、所有する本の見返しなどに貼り、持ち主を示すための小さな版画・印刷物です。実用品でありながら、細密な図柄やタイポグラフィ(文字のデザイン)を凝らし、「本の中の小さなアート」として収集・鑑賞の対象にもなってきました。
年画(Nianhua)——新年の空気を刷り込む民間版画
年画は、中国の旧正月(春節)前後に家々を彩る伝統的な絵で、吉祥(縁起のよさ)や豊穣、家内安全などの願いを視覚化してきました。木版画の技法と結びつき、地域ごとに画風や色づかいが発達したことでも知られます。
「Gaining Wealth on Horseback」を蔵書票にする、という発想
今回の題材は、年画で親しまれてきた「Gaining Wealth on Horseback」(直訳すれば「馬上で富を得る」)という伝統的テーマです。勢いのあるモチーフと“福”を呼び込むイメージは、新年の文脈だけでなく、「本を開くこと」への前向きな気分とも相性が良い、と受け止められています。
融合の要点:西洋の“品”と中国文化の“厚み”を同居させる
この蔵書票は、西洋の蔵書票が持つ「緻密でエレガントな佇まい」を保ちつつ、中国の年画らしい文化的手触りを重ねた点が特徴です。要素を分解すると、次のような“同居”が起きています。
- 機能:本の所有を示すという蔵書票の実用性
- 形式:小さな画面に情報と図像を整理して収める、西洋のデザイン感覚
- 題材:年画の吉祥モチーフが持つ物語性と祝祭性
- 技法:木版画の“刷り”が生む線と質感
制作は石岩清さんと同僚たち——「翻訳」ではなく「設計」に近い作業
制作に携わったのは、アーティストの石岩清さんと同僚たちです。年画の図像をそのまま縮小して貼り付けるのではなく、蔵書票というフォーマットに合わせて再構成する必要があります。
たとえば蔵書票は、視線が集まる範囲が小さい分、線の密度、余白の取り方、モチーフの強弱が読みやすさを左右します。年画の勢いを保ちながら、蔵書票としての「整い」をつくる作業は、異文化を“説明する翻訳”というより、同じ画面内で矛盾なく成立させる“設計”に近いものです。
なぜ今、この小さな版画が国際文化交流の「橋」になるのか
国際文化交流というと大きな展覧会や国家間のイベントを想像しがちですが、蔵書票はむしろ個人の生活の中で、静かに手渡され、語られていきます。読書、収集、贈り物といった日常の動線に乗るからこそ、文化が「理解」ではなく「実感」として届く余地が生まれます。
年画のモチーフが蔵書票になることで、見る人は「これは何の絵だろう」と自然に立ち止まり、背景の物語へと関心を伸ばします。一方で、年画側から見れば、祝祭のための絵が“本の中に住む”ことで、新しい居場所を得たとも言えます。
読者が持ち帰れる問い:あなたの本に貼るなら、どんな「縁起」を選ぶ?
蔵書票は、持ち主の好みや価値観がにじむ小さな名刺でもあります。年画のように願いを託す文化と交差すると、「自分は本にどんな時間を重ねたいのか」という問いが、少しだけ具体的になります。
東西の要素が混ざること自体が目的ではなく、混ざった結果として“使われ続ける形”が残るかどうか。2025年の年末、版画と読書の間にできたこの小さな接点は、そんなことを静かに考えさせます。
Reference(s):
cgtn.com








