中国科学院、骨なしフナ「中科6号」を開発 CRISPRで小骨を消去
小骨だらけで食べにくい淡水魚の“宿命”を、遺伝子編集でほどく研究が中国で進みました。中国科学院(CAS)の研究チームが2025年12月23日(火)、筋肉の間にあるY字型の小骨(筋間骨)を持たないギベルフナ(Carassius gibelio)の新系統「中科6号(Zhongke No. 6)」を作り出したと発表しました。
何が発表されたのか:80本超の“小骨”がないフナ
フナやコイの仲間は、身がやわらかく高たんぱくで食材として評価される一方、筋肉内に多数の細かな小骨があり、食べるときのストレスが大きいことで知られます。今回の「中科6号」は、この“食べにくさの原因”となる筋間骨が出ないように設計された品種候補だといいます。
どうやって実現した?カギは「runx2b」とCRISPR
発表によると、研究チームはまずギベルフナの複雑な遺伝情報を解析し、小骨形成を指示する「設計図役」の遺伝子としてrunx2bを特定しました。
ギベルフナは染色体セットが複数あるため、狙った遺伝子を確実に改変する必要があります。そこで、CRISPR/Cas9(分子のはさみのように特定の遺伝子配列を切る技術)を用い、胚の段階でrunx2bのコードを狙って編集したとされています。
ポイント:骨格は保ちつつ“小骨ルート”だけを止める
研究チームの説明では、主な骨格は通常どおり発達させながら、筋間骨が生まれる生物学的な経路を作動させないことで、厄介な小骨が形成されない状態を目指したということです。
「中科6号」が狙う3つの改良点
「骨なし」だけでなく、養殖で使いやすい性質も合わせて最適化したとされています。発表で挙げられた特徴は次の3点です。
- 高い生産性(高収量)
- 高密度養殖環境での病気への強さ(耐病性)
- 同じ量の高品質なたんぱく質を得るための飼料要求量を抑える
背景:6年がかりの「精密な種づくり」
この成果は、中国科学院の戦略的研究プログラム「Precision Seed Design and Creation(精密な種の設計と創製)」のもとで進められた6年間の系統的な取り組みの結果だとされています。研究は、Gui Jianfang(桂建芳)院士が率いるチームが主導したと発表されました。
食卓と養殖に何が起きる?“食べやすさ”と“効率”の同時追求
小骨の多い淡水魚は、調理法の工夫で魅力を引き出せる一方、日常の食卓では「食べにくい」という一点で選択肢から外れがちです。筋間骨がない(または大幅に減った)系統が普及すれば、調理や食事の体験そのものが変わる可能性があります。
同時に、耐病性や飼料効率の改善は、養殖の現場にとっては安定供給や資源の使い方にも関わります。今回の発表は、遺伝子編集を「見た目の改良」ではなく、食の現場の摩擦(食べにくさ、コスト、環境負荷)を減らす技術として位置づけようとしている点が印象的です。
今後、「中科6号」がどのような形で“食卓向け”として展開されていくのか。遺伝子編集という手段が、味や価格だけでなく、食体験の設計にまで踏み込む時代が近づいていることを静かに示すニュースと言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com








