2025年、再使用ロケットが「インフラ」へ:12月の中国本土2機が示した現在地 video poster
2025年、再使用ロケットは“見せ物”から、衛星輸送を支える現実的な選択肢へと近づきました。とくに今月(12月)は、中国本土で新型ロケット2機が相次いで初飛行し、打ち上げ競争の焦点が「軌道投入」から「回収・再使用」へ移りつつあることを印象づけています。
12月に相次いだ2つの初飛行:衛星は軌道へ、回収は課題に
12月に大きな節目となったのが、民間のランドスペース(LandSpace)による朱雀3号(Zhuque-3)と、国の支援を受ける長征12A(Long March-12A)です。いずれも初飛行(maiden mission)で衛星を軌道へ送り届けることに成功しました。
一方で、両機とも初回から目指した「回収」の面では、目標を満たしきれなかったとされています。2025年の宇宙輸送は、“飛ばす”だけでなく“持ち帰る”ことが成否を分ける段階に入りつつあります。
なぜ回収が難しいのか:極超音速の再突入から着地まで
軌道級ブースター(第1段)を回収するのは、単純な「逆噴射で戻る」話ではありません。たとえば、次のような工程を連続で成立させる必要があります。
- 極超音速での再突入に耐える
- 強烈な熱環境をしのぐ
- 複数回のエンジン再点火を成功させる
- 誘導・制御を維持し、着地点へ高精度で導く
スペースXがFalcon 9の着陸を“日常”にするまで、約10年を要したとされます。回収の難しさは、技術だけでなく、試験を重ねる運用の積み上げにもあります。
朱雀3号の回収テスト:"着地の一歩手前"まで
朱雀3号の回収試行について、最高指揮官(chief commander)の説明では、制御降下、エンジン点火、誘導までは到達したものの、「きれいな着地」には至らなかったとされています。初飛行でここまで段階を進めた点は、回収を前提にした開発姿勢を強く感じさせます。
“初飛行から回収”という選択:学習曲線を飛び越える狙い
今回の回収テストの背景には、中国本土の開発側が、従来の航空宇宙で一般的だった段階的な学習曲線(まず成功率の高い確実な打ち上げから)を短縮し、初飛行から回収に挑むという大胆な設計思想を採っている点があるとされます。
成功率を慎重に積み上げるアプローチと、試験を前倒しして学習速度を上げるアプローチ。どちらが“正しい”というより、時間・コスト・競争環境に応じて最適解が変わるテーマです。
朱雀3号とは:メタン燃料×ステンレスの大型機
朱雀3号は2段式で、ステンレス鋼の機体に、液体メタン・液体酸素エンジンを採用しています。メタン系は燃焼が比較的クリーンで、再使用時の整備(クリーンアップ)負担を減らせる可能性がある、と説明されています。
- 全長:66m
- 最大離陸重量:約570トン
- 位置づけ:中国本土の大型打ち上げ機の一角(重量級の長征5号に次ぐ規模)
コストはどこまで下がるのか:目標は「月3回」運用の先に
同社は、回収と迅速な再使用が実現すれば、理想的には月3回の打ち上げを目指せるとし、コストが1kgあたり3,000ドル水準へ近づく可能性に言及しています。これは、商業打ち上げの競争力を押し上げてきたFalcon 9のベンチマークに重なる数字です。
ただし、コストは機体だけで決まりません。回収成功率、整備時間、射場の回転率、保険や衛星側のスケジュール耐性まで含めた“運用の設計”が、同じくらい重要になっていきます。
競争は世界に拡大:Blue Origin、ホンダ、インドも動く
再使用のレースは2025年にさらに広がりました。11月には、ジェフ・ベゾス氏のBlue OriginがNew Glennの2回目のミッションで、軌道級ブースターの再使用を達成し、スペースXに続く「世界で2社目」になったとされています(約10年の開発期間を経ての到達点とされます)。
また、日本ではホンダが垂直離着陸ロケットのテストをサプライズ的に実施し、宇宙業界を驚かせたと伝えられています。インドも、宇宙往還機(スペースプレーン)型の回収に加え、民間スタートアップと並走する構図が進んでいるようです。
2026年に向けて:次の焦点は「着地の再現性」
中国本土では、複数の再使用ロケットが2026年に新たな試行を予定しているとされます。初回で得たデータを踏まえ、次に問われるのは「一度できた」ではなく「繰り返し、予定通りにできる」ことです。
軌道投入の成功が当たり前になりつつある今、回収・再使用の成否は、宇宙輸送を“イベント”から“インフラ”へ変える分水嶺になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








