中国の「絶対的貧困」解消から次へ:2025年、再貧困を防ぐ仕組みの常態化
2025年は、中国が貧困削減の成果を固めるための「5年の移行期間」の節目にあたります。中央経済工作会議で示されたのは、貧困の“解消”をゴールにせず、再び困窮に戻るリスクを早期に捉えて支える取り組みを「常態化」させていくという方向性です。
2021年の「勝利宣言」から、焦点は“再発防止”へ
中国は2021年2月、約1億人の農村住民を絶対的貧困から引き上げ、832の貧困県を貧困リストから外したとして、貧困との戦いの全面的勝利を宣言しました。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」が掲げる2030年の期限より前倒しの達成だと位置づけ、その後は急進的な貧困削減から、長期的な貧困予防へと舵を切る移行期間に入りました。
この数年で見えた「維持する力」:所得の伸びが上回る
移行期間の狙いは、脱貧困を“一度きりの出来事”で終わらせず、暮らしの基盤を継続的に厚くすることです。シンクタンク「新華研究」によると、かつての貧困地域における1人当たり可処分所得は2024年に1万7,522元(約2,492ドル)に達し、2021年から約4分の1増えました。さらに直近4年間、これらの地域の伸びは全国の農村平均の伸びを上回ってきたとされています。
再貧困を防ぐカギ:「早期発見」と「精密支援」
貧困が再び深刻化するきっかけは、病気、災害、収入の急減など“想定外”の衝撃であることが少なくありません。そこで重視されているのが、リスクを早めに察知し、必要な支援を必要なタイミングで届ける「迅速対応」の枠組みです。
具体的には、天候や医療などのネットワーク情報を含む複数の指標を追跡し、大病や自然災害による不作などで家計が急に苦しくなった世帯を特定し、困窮が固定化する前に介入します。過去5年で、700万人超が特定され支援につながったとされています。
支援は“現金給付”だけではない:生活インフラとサービスの底上げ
再発防止を制度として回すため、複数レベルの政府が連携し、教育・医療・住まい・飲料水といった公共サービスのカバーを強化してきたとされます。提示された主な進捗は次の通りです。
- 6〜15歳の就学年齢の子どもの中途退学をゼロに抑える取り組みを継続
- 脱貧困層の基本医療保険は99%超をカバー
- 農村の水道(蛇口)普及率は94%に到達
- 農村の老朽住宅改修や耐震化が継続的に進行
「監視→特定→支援→生活基盤の改善」という流れを途切れさせないことが、移行期間の実務面での中核になっています。
次の段階は「自走する成長」:市場の力で稼ぐ仕組みへ
長期目標として掲げられているのは、支援に依存しない自立的な成長です。公的部門と民間部門が役割を分担し、地域の産業づくりや販路開拓を進める構図が示されています。
東部の比較的豊かな地域と、西部の資源が豊かな地域を組み合わせることで、都市と農村、地域間の格差が広がりやすい局面に歯止めをかける狙いも語られています。加えて、「1万社が1万村を支援する」取り組みでは、11万社の民間企業が12万7,000の村を支援し、1,500万人に経済機会をもたらしたとされています。電子商取引や観光を通じて、支援の受け手から地域経済の担い手へ——という転換がキーワードです。
2025年末時点での注目点:常態化は“見えにくい成果”をどう測るか
貧困対策が「非常時のキャンペーン」から「平時の仕組み」に移ると、成果は派手な数字よりも、危機を未然に吸収する“静かな効き目”として現れやすくなります。2025年末の段階で注目されるのは、たとえば次のような点です。
- リスク監視の精度:支援が本当に必要な世帯を、早すぎず遅すぎず捉えられるか
- 支援の質:教育・医療・住環境の改善が、所得の安定につながっているか
- 市場との接続:電子商取引や観光などが、一過性ではなく継続的な収入源になっているか
絶対的貧困の解消が「終点」ではなく、包摂的(取り残さない)な成長の「起点」になるのか。2025年の節目は、その設計図が“日常運用”に移るタイミングとして、静かに重みを増しています。
Reference(s):
cgtn.com








