ゴビ砂漠に巨大「空気電池」 青海の液体空気エネルギー貯蔵が最終調整へ
中国本土・青海省のゴビ砂漠で、空気を“液体”にして電気をためる巨大施設が最終調整段階に入りました。再生可能エネルギーの「余る時間」と「足りない時間」をつなぐ、新型蓄電として注目を集めています。
白いタンクの中身は「液体の空気」:氷点下194℃でエネルギーを貯蔵
舞台は、中国本土 شمال西部(北西部)にあたる青海省・ゴルムド市(海西モンゴル族チベット族自治州)のゴビ砂漠です。砂礫の平原に並ぶ巨大な白いタンクの内部では、マイナス194℃という超低温環境で、エネルギーが液体空気の形で保存されます。
建設が進むのは「青海 60,000キロワット/600,000キロワット時(kWh)液体空気エネルギー貯蔵・実証プロジェクト」。中国緑発投資集団(CGDG)が手がけ、建設中の液体空気エネルギー貯蔵として世界最大級とされています。2025年12月時点で、プロジェクトは最終コミッショニング(試運転・調整)段階に入ったといいます。
仕組みは?「余剰電力で液化」→「必要な時に発電」
プロジェクトチームによると、このシステムは「夜間など需要が小さい時間帯の電力(オフピーク)」をため、「需要が大きい時間帯(ピーク)」に放出する設計です。流れを整理すると次の通りです。
オフピーク:電気を使って空気を圧縮・冷却し、液体として貯める
- 余剰電力でコンプレッサーを動かす
- 浄化した空気を圧縮し、高圧・高温のガスにする
- 冷却して「コールドボックス」で液化し、常圧の極低温タンクに貯蔵する
- 圧縮で生まれた熱は回収し、高圧の球形タンクに貯める
ピーク:液体空気を気化させ、膨張の力でタービンを回して発電
- 液体空気を加圧・気化させる
- 冷熱(冷熱媒体)と、回収しておいた熱の“二段加熱”で高圧・高温ガスへ
- 膨張機(エキスパンダー)を回して発電する
この循環により、いわゆる「オフピークの電力をピークに回す」閉ループのエネルギー運用を狙います。
なぜ「液体空気」?密度は約750倍、常圧で安全に貯蔵
プロジェクト側は、液体空気の密度が周囲の空気のおよそ750倍で、しかも常圧で安全に貯蔵できる点を特徴として挙げます。運転中の作動媒体は空気であり、運用プロセス全体で二酸化炭素や汚染物質の排出がないという「クリーン・低炭素」面も強調されています。
また、設備寿命が長いことや、地理的制約が小さく、ゴビ砂漠や高原のような厳しい環境でも安定運転しやすいことが利点として説明されています。
規模感:6万kW・60万kWh、1回の充電で10時間放電
今回の実証プロジェクトは、出力と容量の両面でベンチマークになることが期待されています。公表されている主な数値は以下の通りです。
- 総出力:60,000kW
- 貯蔵容量:600,000kWh
- 放電:1回の充電で連続10時間の放電を想定
- 年間供給:約1億8,000万kWhの電力供給見込み
- 家庭換算:30,000世帯の年間電力需要を満たす規模と説明
さらに、250,000kWの太陽光発電プロジェクトが併設され、「空気電池」へのグリーンな自家充電能力を持たせる構想も示されています。
“ボトルネック”は超低温:技術チームで課題を突破
技術面では「極低温で空気をエネルギー貯蔵の担体(キャリア)に変える」ことが核心だといいます。技術者の銭亜東(Qian Yadong)氏は、CGDGが中国科学院・理化学技術研究所と共同チームを組み、繰り返しの試験を通じて次の課題をクリアしたと述べています。
- 冷熱貯蔵のための超低温カスケード技術のボトルネック克服
- 常圧・低温貯蔵システムの開発
- 空気の貯蔵と定圧放出に関わる中核課題の解決
いま重要視される理由:再エネの「出力抑制」と需給ギャップ
プロジェクトチームは、この技術が再生可能エネルギーの出力抑制(発電できても使い切れない問題)や、電力系統の需給バランスの揺れに対応する手段になり得ると位置づけています。特に、ゴビ砂漠など乾燥地域における再生可能エネルギー拠点づくりの選択肢として、新型エネルギー貯蔵の一つの方向性を示すものだとしています。
大きな白いタンクが並ぶ風景は、派手な装置というより、電力の“時間のズレ”を埋めるインフラの顔つきです。最終調整を経て、どこまで安定運用とコスト面の現実解を示せるのか。2025年末の段階では、その実証の行方が注目点になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








