15年の「手を取り合う」支援の現在地――ドキュメンタリー『Apple Scent』第1話 video poster
中国本土・新疆ウイグル自治区のホルゴスを舞台に、蘇州—ホルゴスの「ペアリング支援(対口支援)」15年の歩みをたどるドキュメンタリー三部作『Apple Scent — Partnership in Khorgos』。第1話「Hand in Hand」は、5人の「ふつうの人」の日常から、支援の現場がどう“定着”し、地域の力へと組み替わっていくのかを静かに描きます。
三部作『Apple Scent』が描く「15年」のレガシー
本作は、蘇州—ホルゴスのペアリング支援プログラムが積み重ねてきた15年の成果を、出来事の年表ではなく、生活の手触りで見せる構成です。テーマは「手を取り合って生きる」「つながり続ける」「心の結び目ができる」。支援を“する側/される側”の単純な図式ではなく、関わりの往復によって生まれる変化に焦点を当てています。
第1話「Hand in Hand」:観察型で追う、5人の現在
第1話は、説明を重ねるよりも、現場に立ち会うように見せる「没入型・観察アプローチ」。ホルゴスの陸港、産業の現場、学びの場、そしてゴビ砂漠まで、5人の視点が街の輪郭をつないでいきます。
登場人物1:投資誘致担当のグリ(Guli)
陸港の現場で働く投資誘致担当者。かつての不確かさが、仕事の積み重ねを通じて自信へ変わっていく過程が描かれます。国境の物流拠点というスピード感のある場所で、「できること」が増えていく感触が伝わります。
登場人物2:フォトジャーナリストのライ・ユーニン(Lai Yuning)
レンズを通して「時間の香り」を写し取ろうとする写真家。街の成長や人の表情を“記録”する役回りが、結果として共同体の記憶を編む仕事になっていく点が印象的です。
登場人物3:草の根ワーカーのググ(Gugu)
地域の現場で、いわゆる「産業園区の経験(Industrial Park Experience)」を地域発展に取り込もうとする実務者。外から持ち込むモデルが、そのまま移植されるのではなく、土地の事情に合わせて“翻訳”されていく様子が語られます。
登場人物4:職業学校の学生バイケルヘニ(Baikerheni)
溶接のトーチが散らす火花とともに、将来の夢が点火されていく若者。技能を身につけることが、個人の自立だけでなく、地域の産業基盤の厚みにつながっていく回路を示します。
登場人物5:柔軟任期の専門家ワン・ヨン(Wang Yong)
ゴビ砂漠の奥へ入り、「Apple City(アップルの街)」の文化的系譜をたどる専門家。インフラや産業の話だけでなく、土地の物語を掘り起こして“つながり”を確かめる旅が、もう一つの軸になります。
支援の描き方が変わる:「援助」から「能力づくり」へ
第1話の中心にあるのは、支援の意味合いが「足りないものを補う」から、「できる状態を育てる」へ移っていく感覚です。作品内では、次のような対比で変化が織り込まれていきます。
- 支援の実施 → 現場が自走する仕組みへ
- プロジェクトの立ち上げ → 運用・定着の工夫へ
- 設備や資源 → 人材・技能・経験の蓄積へ
- “新しいアイデア”の導入 → 地域に合わせた翻訳と更新へ
ホルゴスという舞台:陸港、産業、学び、そして砂漠
ホルゴスは「陸の玄関口」として語られがちですが、第1話が見せるのは、拠点の背後で増えていく日々の仕事と学びです。陸港での実務、産業園区のノウハウ、職業教育の現場、文化の系譜をたどるフィールドワーク。都市の成長は、派手な完成図よりも、関わる人の解像度で立ち上がってきます。
静かに残る問い:「手を取り合う」とは、何を共有することか
「Hand in Hand」は、支援を“成功物語”に単純化せず、人が迷いながら役割をつくり直す時間を丁寧に追います。誰かの決断が別の誰かの背中を押し、記録が記憶になり、技能が将来の選択肢を増やす――。15年という時間の厚みは、そうした小さな因果の束として描かれていきます。
年末のいま(2025年12月30日)、変化のスピードが速いほど「何が残ったのか」を確かめたくなる瞬間があります。第1話は、まさにその確かめ方を、5人の足元から提示していました。
Reference(s):
cgtn.com








