清華大学で国際ファイバーアート・ビエンナーレ、「糸の森」で工芸再生 video poster
北京の清華大学芸術博物館で開かれている「第13回 国際ファイバーアート・ビエンナーレ」が、糸・線・繊維という古くて身近な素材で、現代の“見る体験”を更新しています。
会場に広がる「糸の森」—何が起きているのか
今回のビエンナーレを象徴するのは、案内文にもある「thread, line, and fiber(糸・線・繊維)の森」というイメージです。布として“面”になる前の、細い素材や線が空間に伸び、鑑賞者の身体感覚に直接触れてくる——そんな展示の方向性がうかがえます。
絵画のように遠目で完結するのではなく、近づいたときに素材の気配が立ち上がる。工芸の延長でありながら、インスタレーション(空間全体を使う表現)として成立している点が、この分野の面白さでもあります。
「ファイバーアート」とは:布の外へ出た繊維の表現
ファイバーアートは、繊維素材を使った表現の総称として語られます。織る・編む・結ぶ・縫うといった技法は古くからありますが、現代美術の文脈では、必ずしも「衣服」や「実用品」に着地する必要がありません。
- 素材:糸や繊維そのものが主役になる
- 線:描く線ではなく、張られた線・垂れた線が空間をつくる
- 身体性:触れられなくても、触覚の想像を誘う
なぜいま「古い技」が新しく見えるのか
2025年のいま、視覚体験の多くがスクリーン上で完結しがちな一方で、糸や繊維は、時間のかかる手の動きや、素材の抵抗、重力の影響といった“遅さ”を連れてきます。だからこそ、会場で立ち止まる理由が生まれます。
また、糸は一本だと弱いのに、束ねると強くなる。ほどける可能性を抱えながら、結び直せる。そうした性質が、鑑賞者に「これは何を象徴しているのだろう」と静かな問いを残します。
見どころの読み方:まず「面」ではなく「線」を追う
ファイバーアートを初めて見る人ほど、布=面として捉えがちです。今回は「糸の森」という言葉の通り、線の集まりが空間をどう変えるかに注目すると、入り口が開きやすくなります。
- 一本の糸(線)がどこから来て、どこへ消えるかを目でたどる
- 密度(混み合う場所/抜ける場所)で、空間のリズムを感じる
- 影や重なりがつくる“もう一つの線”に気づく
工芸の復活ではなく、境界の組み替え
このビエンナーレが示しているのは、単純な「伝統回帰」ではありません。古い技法をそのまま保存するのではなく、糸・線・繊維を使って、美術館という場所での鑑賞体験を組み替える試み、と読むこともできます。
糸の“軽さ”が、空間の“重さ”を変える。そんな逆転が、観る側の感覚を少しだけ更新してくれる展示になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








