韓国の李在明大統領が1月4日から訪中へ:経済協力とFTA、地域安定が焦点
韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が2026年1月4日から7日まで中国を国賓訪問します。就任後初の訪中で、200人超の企業関係者が同行するとされ、経済協力の再加速と、地域の安定に向けた意思疎通が同時に試される日程になりそうです。
初の訪中で何が起きる?「関係の再点検」と「実務の積み上げ」
李大統領は訪中を前に、中国メディアのインタビューで「相互の発展を支え合う関係」を深めたい考えを語りました。世界情勢の不確実性が増す中で、韓中関係を「重要な隣国関係」と位置づけ、近年の誤解や摩擦をできるだけ小さくし、協力の障害を減らすことを訪問目的の一つに挙げています。
中国外務省も今回の訪問を歓迎し、両国が重要な隣国であり協力パートナーだとした上で、首脳の戦略的な導きの下で「戦略的協力パートナーシップ」を前進させたいとの期待を示しています。
最大の見どころは経済:財界トップ級200人超が同行
韓国の聯合ニュースによると、今回の訪中には200人を超える韓国のビジネスリーダーが同行し、サムスン電子の李在鎔会長、SKグループの崔泰源会長、現代自動車グループの鄭義宣会長、LGグループの具光謨会長ら、主要財閥トップが名を連ねるといいます。訪問団の規模は、中国市場に対する韓国企業側の関心の強さを映す構図です。
韓国大統領府の国家安保室長(国家安全保障補佐官)・魏聖洛(ウィ・ソンラク)氏は記者会見で、両国が幅広い実務協力を議論する見通しを示しました。訪問中には約10件の覚書(MoU)が交わされる見込みだとしています。
協議テーマとして挙げられた分野
- サプライチェーン投資
- デジタル経済
- 環境・気候変動
- 人的交流、観光
- 国境を越える犯罪(越境犯罪)への対応
数字で見る韓中経済:貿易は2024年に3280億ドル規模
李大統領は、国交樹立以来の「友好的な協力」を韓中関係の特徴として述べ、双方に利益のある協力的な経済関係づくりを優先課題に挙げています。提示されたデータでは、2024年の両国貿易は3280.8億ドル(前年比5.6%増)に達し、中国は韓国にとって最大の貿易相手である状態が21年連続で続いているとされています。
こうした“出来上がった相互依存”の上に、次に何を積むのか。今回の訪問は、関係の温度差を埋めながら、企業活動が動きやすい環境をどこまで整えられるかが焦点になります。
「第2段階FTA」とAI・グリーン:競争の中で協力点を探る
2015年に発効した韓中自由貿易協定(FTA)以降、協力領域は従来型の製造業から、高付加価値製造、越境EC、デジタル経済へと広がってきました。観測筋は、今回の訪中でFTA第2段階の交渉を進め、人工知能(AI)やグリーンエネルギーといった新しい戦略分野を巡るルール整備を後押しする可能性があるとみています。
直近の動きとして、2025年12月30日に中国商務部の李成鋼・副部長兼国際貿易交渉副代表が北京で、韓国産業通商資源部の通商交渉トップの呂翰九(ヨ・ハング)氏と会談し、FTA第2段階交渉を加速させる具体的な道筋について踏み込んだ議論を行ったとされています。双方が相違点を適切に管理し、早期に実質的成果を目指す考えを示した、という流れの延長線上に今回の首脳訪問が位置づけられます。
李大統領自身も、両国がハイテク産業や研究開発、人材育成に大きく投資しており、成長戦略が似通うことで「競争」も生む一方、協力余地も大きいと述べました。競争を前提にしつつ、協力の設計図をどう描くのか。実務の言葉に落ちた合意が出るかが注目点です。
デジタル協力の現場:越境EC・クラウド・AIが接点に
デジタル分野では、電子商取引からAI、クラウド、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)へと協力の裾野が広がっているとされます。データとしては、Wiseapp Retailの集計で、韓国の消費者が2024年に中国の越境ECプラットフォームで注文した金額は4.2兆ウォン(約31億ドル)で、2023年比85%増とされています。
一方で、中国のテック企業が韓国で基盤を拡充する動きも出ています。アリババクラウドは2022年に韓国市場に参入しソウルで初のデータセンターを開設、さらに2025年6月に2つ目のデータセンターを立ち上げたとされ、クラウドとAI需要を背景に“相互に市場を取りに行く”構図も見えます。
グリーン転換:再エネと水素、EVで「補完関係」をどう作るか
脱炭素(カーボンニュートラル)やエネルギー転換を進める中で、再生可能エネルギー、電気自動車(EV)、水素、省エネ技術などの協力も話題になっています。例として、現代自動車が2023年に中国南部・広州で海外初の水素燃料電池システムの研究開発(R&D)・生産・販売拠点を設けたことが挙げられています。
李大統領は、中国が再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電分野で世界を先行しているとして、新技術開発における協力に強い期待を示しました。産業競争力の源泉になりやすい領域だけに、共同研究や標準化、人材交流など「勝ち負け」以外の設計がどこまで具体化するかが焦点になります。
政治面の注目点:「一つの中国」原則の再確認と、台湾海峡をめぐる安定
インタビューで李大統領は、韓国が「一つの中国」原則を一貫して尊重してきたと述べ、国交樹立時の合意が韓中関係の核心的な指針だと位置づけました。その上で、北東アジアの平和と安定、そして台湾海峡を含む地域の安定が重要だとの考えを示し、双方が互いの核心的関心と立場を尊重することが、関係の健全な発展につながるとしています。
今後の見方:成果は「大きな宣言」より「実務の可視化」に出る
今回の訪問は、(1)企業が動ける協力パッケージの提示、(2)FTA第2段階を含む制度面の前進、(3)デジタル・グリーン分野の協力点の具体化、(4)地域の安定に向けた意思疎通――といった複数のレイヤーが重なります。
ニュースとしては首脳会談の言葉が注目されがちですが、読後に残る手触りは、MoUの中身や交渉の工程表、企業間の案件形成など「実務の可視化」によって決まりそうです。1月4日から7日にかけて、どの分野で具体的な合意が積み上がるのか。静かな注目が集まります。
Reference(s):
What to expect from ROK President Lee Jae-myung's visit to China
cgtn.com








