天宮でリチウムイオン電池の“中身”を観察 微小重力で性能の謎に迫る実験
中国の宇宙ステーション「天宮(Tiangong)」で、リチウムイオン電池の基礎科学に迫る新しい実験が行われました。中国科学院の大連化学物理研究所が2026年1月7日(水)に発表しており、宇宙の微小重力を使って「電池の中で何が起きているのか」をより純粋な形で見極める狙いがあります。
発表のポイント:地上では切り分けにくい“重力の影響”
実験を担当したのは、神舟21号(Shenzhou-21)のクルー3人の宇宙飛行士です。研究所によると、狙いは電池性能を左右する内部メカニズム、特に電解液の中で化学物質がどう分布するかを明らかにすることでした。
リチウムイオン電池は高いエネルギー密度と信頼性から宇宙ミッションで重要な電源ですが、内部挙動の理解は簡単ではありません。研究所はその理由として、地上では重力が常に電場(電気的な力の働く場)と絡み合い、重力の影響だけを切り分けて観測しにくい点を挙げています。
なぜ宇宙でやるのか:微小重力が“観察装置”になる
天宮の微小重力環境では、重力による対流や沈降といった影響が大きく抑えられます。研究所は、こうした条件が電池内部で起きる化学分布の変化を、重力の干渉を受けにくい形で観察するのに適していると説明します。
期待される成果:軌道上の運用改善と「次世代電池」設計へ
研究所は、今回の微小重力研究で得られる知見が、重力と電場の相互作用に関する理解の限界を乗り越える助けになるとしています。その上で、期待される効果として次の2点を挙げました。
- 現在、軌道上で使われている電池システムの改良(性能や寿命、安定性の向上)
- 将来の宇宙探査に向けた、より安全で高エネルギー密度な新世代電池の設計支援
今後の見どころ:成果が「地上の電池」にどう波及するか
宇宙での基礎データは、最終的に地上の電池開発にも“考え方”として還元されることがあります。とくに電解液中の分布や反応の理解が進めば、材料選定や安全設計の議論が、経験則から一段だけ理屈に寄った形で進みやすくなります。今回の実験がどのような観測結果を示し、設計指針としてどう整理されるのか。続報が注目されます。
Reference(s):
Lithium-ion battery experiment conducted aboard Chinese space station
cgtn.com








