Zhipu AIが香港上場、「大規模モデルIPO」初日高騰と低価格戦略の勝負
2026年1月8日、北京拠点のZhipu AI(智譜AI)が香港取引所に上場し、「汎用人工知能(AGI)向け基盤モデルに注力する上場企業として世界初」を掲げて市場の注目を集めました。上場初日の値動きだけでなく、同社が前面に出す“低価格”と海外展開の設計図が、2026年のグローバルAI競争を読み解くヒントになりそうです。
上場初日から存在感、「世界初の大規模モデルIPO」を標榜
Zhipu AIは新規株式公開(IPO)で約43億香港ドル(約5.58億米ドル)を調達し、公開価格は1株116.2香港ドルでした。初日の取引では、始値120香港ドルでスタートし、一時130香港ドル(+11.88%)まで上昇。時価総額は570億香港ドル超に達したとされています。
需給の強さを示した数字
- 香港の公募:1,159倍の超過応募
- 国際販売:15.28倍の超過応募
- コーナーストーン投資家:11社で約29.8億香港ドル(募集の70%)を引受
「大規模モデル(Large Model)」を軸にした企業が株式市場でどのように評価されるか。Zhipu AIの上場は、その試金石としても話題になりました。
武器は“低価格”:世界のAIサービスは値下げ競争に向かうのか
同社が強調するのが、AIサービスの低価格戦略です。AIコーディングツールは月額20元(3米ドル未満)からとされ、米国の競合AnthropicのClaudeのおよそ7分の1の水準だといいます。
2025年末時点で、この低価格の提供は184のcountries and regionsで15万人の有料開発者を獲得し、年間経常収益(ARR)1億元超に到達したとされています。Zhipu AIの劉徳兵・会長はBloomberg TVに対し、中国本土の市場で進んだ価格競争が海外でも価値として認識され、米国企業も同様の「利益を削る競争」に向き合う可能性がある、との見通しを語りました。
中核はMaaS(モデルのサブスク化)だが、赤字とR&D負担は重い
収益の軸はMaaS(Model as a Service)です。API(外部から機能を呼び出す仕組み)やサブスクリプション、現地向け導入などでAI機能を提供し、利用に応じてマネタイズするモデルと説明されています。
MaaSの拡大ペース
- ユーザー:290万人(うち15%が課金)
- 企業顧客:世界で1万2,000社
- 顧客例:中国本土の主要インターネット企業上位10社のうち半数に提供
- 2025年上半期売上:1.909億元(前年同期比+325%)
一方で続く巨額投資
同じく2025年上半期の純損失は23.6億元、研究開発(R&D)費は15.9億元とされ、売上を大きく上回りました。劉会長は「収益性は優先ではなくAGI前進が焦点」と述べ、手元資金は25.5億元あるとしています。
上場によって資金調達の選択肢が広がる一方、AI開発の“先行投資型”ビジネスが、市場の期待とどう折り合うのかは今後の見どころになりそうです。
海外展開は東南アジアから、「主権AI」パートナーシップへ
Zhipu AIは中国本土の外にも軸足を移しつつあります。2025年上半期の海外売上比率は11.6%で、そのうち東南アジアが11.1%(1,790万元)を占めたとされています。2024年には現地導入売上のうち東南アジア比率が0.5%だったとされ、伸びの大きさがうかがえます。
さらに同社は、各国が自国で管理できるAI基盤を整える「主権AI(Sovereign AI)」の潮流を意識し、「独立した大規模モデル共同構築の国際アライアンス」を主導。ASEAN 10カ国と「一帯一路」参加国10カ国と協力し、管理可能な国家AIインフラの構築を進めるとしています。OpenAIも2025年の報告書『Chinese Progress at the Front』でZhipu AIを主要な競合として言及したとされます。
このニュースを追ううえでの“次の焦点”
- 価格:低価格が市場拡大を促す一方、業界全体の採算はどう変わるのか
- MaaS:利用者・企業顧客の拡大が、継続課金(ARR)として積み上がるか
- 海外:東南アジアの伸びと「主権AI」協業が、売上構成をどう塗り替えるか
上場はゴールではなく、資金と市場の視線が同時に集まる“スタート地点”でもあります。Zhipu AIが掲げる低価格とグローバル展開が、2026年のAI競争の景色をどこまで変えるのか。静かに追いかけたいテーマです。
Reference(s):
4 key takeaways: Zhipu becomes first Chinese AI firm to go public
cgtn.com








