中国本土・杭州で海上回収型「再使用ロケット工場」着工、年25機生産へ
中国本土の東部・浙江省杭州市で、海上回収が可能な再使用ロケットを量産する大型製造拠点の建設が始まりました。打ち上げコストを大きく下げる可能性があり、2026年の商業宇宙開発の競争図を読み解く上で見逃せない動きです。
杭州で「再使用ロケットの量産拠点」建設がスタート
報道によると、北京拠点の打ち上げ企業Space Epoch(スペース・エポック)が主導するプロジェクトで、総投資額は52億元(約7.4億ドル)。1月7日に着工しました。施設が稼働すれば、中〜大型の液体燃料ロケットを対象に、再使用・高い搭載能力・低コスト・海上回収を特徴とする機体を年間最大25機製造する計画だとされています。
「タクシーのようなロケット」—創業者の比喩が示す狙い
Space Epochの創業者で会長の魏毅(Wei Yi)氏は、再使用ロケットの狙いを次のように説明したと伝えられています。
「再使用ロケットはタクシーで、衛星は乗客。衛星コンステレーションは観光客のバス旅行のようなもの」
衛星を多数まとめて運用する「衛星コンステレーション」の時代では、打ち上げ頻度とコストが事業の成否に直結します。ロケットを“使い捨て”から“繰り返し使う輸送手段”へ近づけることが、産業全体の前提を変えていきます。
コストは「1kgあたり2万元」へ?数字が示すインパクト
同氏の説明として、現在の中国本土における主流ロケットの打ち上げコストは1kgあたり約8万〜10万元。一方、Space Epochが掲げる「ステンレス鋼+液体酸素・メタン」の方式では、1kgあたり2万元程度まで下げられる見通しがあるとされています。
もちろん、実際のコストは機体の運用回数、回収の成功率、整備(点検・交換)の手間などで左右されます。それでも、製造と運用を「量産・定常運航」に寄せていく設計思想は、商業宇宙が次の段階へ進むシグナルと言えそうです。
2025年後半から実験が相次ぐ—「点の実証」から「線の開発」へ
今回の着工は、再使用打ち上げ機の大規模製造・生産能力へ向かう一歩として位置づけられています。報道では、Space Epochの試験ロケット「Yuanxingzhe-1」が2026年5月に初の海上回収飛行を完了したことに加え、2025年後半以降、中国本土の複数の商業宇宙企業が再使用ロケットの実験を進めてきた流れが紹介されています。
具体例として、LandSpaceの「Zhuque-3」、国有系のLong March 12A、さらにSpace PioneerやGalactic Energyなどの取り組みが挙げられ、
- 垂直離着陸(VTVL)
- 準軌道での回収
- 推進系の重要デモ
といった幅広い領域で試験が行われているとされています。成功が積み上がるほど、開発は「単発の技術実証」から「工程と品質を前提にしたエンジニアリング」へ移っていきます。今回の“工場”は、その転換を支える土台になり得ます。
世界の潮流:米国ではSpaceXがStarbaseを運用
国際的には、SpaceXが米テキサス州のStarbaseでStarshipの組み立てと試験を進め、再使用技術の最前線を走っているとされます。中国本土側でも、民間企業が量産・回収・再運用のサイクルを整えようとしている点は、世界の商業宇宙が「打ち上げ回数」と「供給能力」を軸に再編されつつあることを静かに示しています。
見えてくる論点:次に注目すべき3つ
- 回収の信頼性:海上回収を含め、成功率がどこまで上がるか
- 整備の効率:再使用のたびに必要な点検・部品交換がコストを左右
- 量産の品質管理:年間25機という規模を安定して回せるか
2026年は、技術の派手さだけでなく「運用と生産の地味な強さ」が競争力になる年になりそうです。
Reference(s):
China breaks ground on its first sea-recovery reusable rockets plant
cgtn.com








