中国本土の新AI計算アーキテクチャ、フーリエ変換を約4倍高速化
AIや通信の“基礎計算”として広く使われるフーリエ変換を、ハードウェア側の工夫で大幅に高速化する——そんな研究成果が2026年1月9日(金)、学術誌「Nature Electronics」に掲載されました。北京大学の研究者らは、新しい計算アーキテクチャにより計算性能を約4倍近く引き上げられるとしています。
何が起きた?要点を短く
- 北京大学の研究者チームが、周波数変換(フーリエ変換など)を効率よく処理する新アーキテクチャを開発
- 電流・電荷・光など、計算に向いた「物理領域」で処理を分担させる“マルチ物理領域”の設計が柱
- フーリエ変換の処理速度を、約1300億回/秒から約5000億回/秒へ引き上げたと報告
- 精度を保ちつつ消費電力を抑える方向での改善も狙う
フーリエ変換とは?「信号の翻訳機」
研究の中心にあるのは「フーリエ変換」です。これは、音声や画像のような複雑な信号を、周波数(どんな“波”がどれくらい混ざっているか)の情報に変換する計算手法で、科学・工学の幅広い場面で基盤になっています。
たとえば、通信の信号処理、画像処理、センサーの解析などでは、周波数の世界に“翻訳”してから扱うほうが効率的なことが多く、そこでフーリエ変換が頻出します。
新アーキテクチャの肝:計算を「得意な物理領域」に割り当てる
研究チームは、周波数変換に適した2つの新しいデバイスを、マルチ物理領域のアーキテクチャとして統合したと説明しています。ポイントは、計算の種類に応じて、電流・電荷・光など“それぞれが得意な物理領域”で動かす発想です。
北京大学の人工知能研究院(Institute for Artificial Intelligence)の研究者、陶耀宇(Tao Yaoyu)氏は、この設計により「異なる計算パラダイムを最適な物理領域で動作させ、計算効率を高められる」と述べています。
「補い合う」2デバイスで高速化
陶氏によると、統合システムは、周波数生成・変調・インメモリ計算(メモリ上で計算を進め、データ移動の負担を減らす考え方)において、2デバイスの相補的な利点を活用します。その結果、精度を維持しつつ消費電力を抑えながら、フーリエ変換の速度を約1300億回/秒から約5000億回/秒へ引き上げたとしています。
どんな分野に効く?「基盤計算」を速くする意味
研究チームは、この計算アーキテクチャが新しいハードウェアの高効率動作を後押しし、応用を加速し得る領域として、基盤AIモデル、エンボディド・インテリジェンス(身体性を伴う知能)、自動運転、ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)、通信システムなどを挙げています。
これらに共通するのは、現場(エッジ)やリアルタイムに近い形で「大量の信号処理」が必要になる場面が増えていることです。フーリエ変換のような“定番計算”が速く、省電力で回るようになれば、同じ電力・同じサイズでも、できることが増える可能性があります。
これからの見どころ:実装と適用範囲はどこまで広がるか
今回の発表は、周波数変換という普遍的な処理に狙いを定め、ハードウェアの構成そのものから速度と効率を引き上げるアプローチでした。今後は、どの処理にどの物理領域を割り当てると効果が大きいのか、また実システムへ統合した際の運用設計(精度・消費電力・遅延のバランス)がどうなるのかが注目点になりそうです。
Reference(s):
China's new AI computer architecture achieves multi-fold speed leap
cgtn.com








