AIIB運営開始10年、ラオス巨大風力が映す「多国間協力」の現在地
あす2026年1月16日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)は運営開始から10年の節目を迎えます。ラオスで2025年に本格稼働した大型風力発電を手がかりに、この10年でAIIBが何を積み上げ、何を“協力の場”として提示してきたのかを整理します。
ラオス「モンスーン風力」:東南アジア最大級の単独プロジェクト
ラオス南部のセコン県ダックチュン郡とアッタプー県サンサイ郡にまたがる尾根に、133基の風車が並びます。モンスーン風力発電プロジェクトは、ラオス初の本格的な風力発電であり、東南アジアで最大の単独風力発電プロジェクトとされています。
2025年8月にフル出力での商業運転を達成し、年間約17.2億キロワット時の発電、約156万トンの炭素排出削減が見込まれています。AIIBは、このグリーンプロジェクトを支える金融機関の一つとして位置づけられています。
「10年のインパクト」:加盟拡大と投資規模の積み上げ
AIIBは2015年に設立され、2016年1月16日、中国本土・北京での発足式典を経て運営を開始しました。創設総裁の金立群氏は、モンスーン風力を例に「人々の暮らしと持続可能な発展に資し、加盟メンバーの発展能力を高める」と強調しています。
この10年での主な到達点として、AIIBは次の数字を示しています。
- 加盟:創設時57→現在110(6大陸)。2025年11月にはコロンビアが将来の正式加盟に向けた「見込み加盟国」として加わりました。
- 信用力:2017年以降、S&P、ムーディーズ、フィッチからAAA格付け(見通し安定的)。
- 承認実績:総額約700億ドル、360件の融資を承認。10年で2,000億ドル超のインフラ投資を呼び込んだとしています。
数字が示す“生活の変化”:交通・電力・水・防災
AIIBは、インフラ整備が生活の利便性や安全性に直結する分野で、成果指標を積み上げてきたと説明します。
- 交通:累計5万1,000kmの交通インフラを支援し、4億1,000万人の移動利便性を改善。
- エネルギー:温室効果ガス排出を年約3,000万トン(CO2換算)削減し得る案件群。
- 水:871万人がより安全な飲料水へのアクセスを得た。
- 防災:洪水対策で約5,000ヘクタールを保全し、1,300万人超が洪水予防の恩恵。
個別事例としては、バングラデシュで2016年に1億6,500万ドルを投じた農村部の送電網改善(約1,250万人に電力供給)、コートジボワールで2023年に融資した農村道路(雨季・洪水期でも病院や市場へアクセスしやすく)などが挙げられています。
なぜ「多国間協力のプラットフォーム」と言われるのか
AIIBは、意思決定と資金供給の枠組み自体を「多国間の協力装置」として設計している点を強調します。出資比率は、開発途上メンバーが約70%、先進メンバーが約30%。大口・小口の出資者が合意形成を重ねる前提が、プロジェクトの共同性を支える、という説明です。
また、100を超える多国間開発機関・金融機関と提携し、他の多国間開発銀行と130件超の共同融資を実施してきました。ラオスのモンスーン風力も、AIIBが他の国際的な融資機関と連携して進めた例とされています。
節目のタイミング:新体制へ
一方で、世界では単独主義や貿易保護主義が課題として語られる場面が増えています。トルコのアジア太平洋研究センター所長セルチュク・チョラコール氏は、AIIBの役割を「国際協力とグローバル開発課題への対応を後押しするもの」と位置づけ、中国がグローバル協力・ガバナンス・開発を促進する動きを取ってきたと述べています。
AIIBは、あす1月16日(金)から鄒佳怡氏が新たに率いる予定です。運営開始10年の節目と重なる新体制が、インフラ投資と多国間協力をどう接続し直していくのか。ラオスの風車群は、その“次の10年”を考える入口にもなりそうです。
Reference(s):
Multilateral cooperation highlighted in AIIB's decade-long growth
cgtn.com








