2Dペロブスカイトを傷つけない「自己エッチング」法、Nature掲載
壊れやすい次世代半導体を「削りたいのに削れない」——その悩みに対し、結晶自体の力を利用して加工する新手法が報告されました。2Dペロブスカイト薄層単結晶を、格子構造を傷つけにくい形で微細加工できる可能性が示されています。
中国科学技術大学、米パデュー大学、上海科技大学などの国際研究チームは2026年1月15日(木)、学術誌「Nature」に研究成果を発表しました。
何が新しい?「自己エッチング」で“やさしく”加工
対象となったのは、イオン結晶格子をもつ「2Dペロブスカイト薄層単結晶」です。高い発光性能などが期待される一方で、柔らかく不安定で、従来の加工(強い溶媒処理や紫外線によるパターニングなど)では結晶が傷みやすいことが課題でした。
今回の研究では、結晶成長の過程で内部にたまる「応力(内部ストレス)」を利用。穏やかな配位子(リガンド)–イソプロピルアルコール(IPA)溶液系を用いて、狙った場所で面内方向に制御された“自己エッチング”を起こす「ガイド付き自己エッチング」手法を提案しています。
削った“空洞”に別組成を埋めて、単結晶内ヘテロ接合を作る
チームは、自己エッチングでできた空洞を、ハロゲン組成の異なる2Dペロブスカイトで精密に埋め戻すことにも成功したとしています。これにより、単一の結晶ウエハー内に高品質なヘテロ接合(原子レベルで化学組成が異なる材料の界面)を形成でき、格子の連続性と原子的に滑らかな界面が得られる点が特徴です。
ポイント(報告内容の要旨)
- 結晶の内部応力を利用して、狙った場所で自己エッチングを誘導
- 穏やかな溶液系で加工し、結晶格子への損傷を抑える狙い
- 空洞をハロゲン組成の異なる材料で埋め、単結晶内にヘテロ接合を実装
なぜ重要?「超薄膜に高密度の発光ピクセル」へ近づく可能性
オプトエレクトロニクス(光と電子を扱う半導体技術)では、ヘテロ接合を使うことで、領域ごとの光学特性を細かく設計できます。今回のように、自己エッチングで作った領域のハロゲン組成を調整できれば、発光色や明るさを変えられる“ピクセルのような単位”を高密度に並べる設計が見えてきます。
研究チームの張書晨氏は、「将来的に、超薄い材料上に異なる色の微小発光ピクセルを高密度に集積できる可能性がある。高性能な発光・表示デバイスに向けた新しい材料プラットフォームと設計経路を開く」との趣旨を述べています。
次に注目したい点
今回の報告は“加工のやり方”そのものを更新する提案です。今後は、より大面積の均一加工、量産工程との相性、長期安定性、素子としての実装・評価(表示や光源での性能)など、工学的な詰めがどこまで進むかが焦点になりそうです。
Reference(s):
Damage-free etching method for optoelectronic semiconductors developed
cgtn.com








