中国本土・重慶で『トゥーランドット』巡演 “第二の皮膚”をまとう衣装デザインの舞台裏 video poster
中国本土の重慶で巡演中の『トゥーランドット』。注目を集めているのは、物語を“語る”衣装です。衣装は主人公の「第二の皮膚」として感情を可視化し、きらびやかさから厳かな深みへ——心の変化を正確に映し出す、とデザイナーは語ります。
衣装は「感情の地図」——トゥーランドットの内面をどう見せるのか
今回の衣装づくりで軸に置かれたのは、トゥーランドットの感情の動きそのものです。デザイナーによると、衣装は単なる“装い”ではなく、彼女の警戒心から感情の目覚めへと至る旅路を、観客が一目で追える「視覚のマップ」になるべきだといいます。
そのため、場面ごとの衣装替えは「豪奢さを足す/引く」という単純な設計ではなく、感情の温度や距離感が変わる瞬間を捉えるように組まれているのが特徴です。
「まばゆい輝き」から「深い荘厳さ」へ——変化の設計図
デザイナーは衣装の変化を、次のような“段階”として捉えていると話します。
- 最初の防御:近寄せないための存在感。視線を跳ね返すような強い印象
- 揺らぎ:硬さの中に生まれる微細な変化。観客が「何かが動いた」と気づける差分
- 目覚め:重心が変わる瞬間。外側の強さより内側の決意が前に出る
- 荘厳さ:派手さではなく深度で語る。沈黙にも耐える“重み”
「衣装は、人物のセリフを増やすのではなく、沈黙の時間を豊かにします。観客が“説明なしに理解できる”状態をつくりたい」とデザイナーは述べています。
巡演(ツアー)ならではの難しさ:再現性と瞬発力の両立
巡演では、会場ごとの舞台環境が異なることもあります。その中で衣装が担う役割は、毎回同じ強度で物語を届けること。デザイナーは、舞台上の動きや転換に合わせて衣装が“遅れない”こと、そして衣装替えが物語のテンポを崩さないことを重視しているといいます。
「どの会場でも、同じ感情の曲線が立ち上がるように。衣装は“作品の速度”に追いつけなければならない」という言葉は、ツアーの現場感をにじませます。
見どころは「衣装替えの瞬間」ではなく「変化が残る瞬間」
派手な衣装替えは分かりやすい見せ場ですが、今回のポイントは、衣装が変わった直後ではなく、少し時間が経ったときに残る印象だといいます。まばゆさが引いたあとに現れる厳かな気配、そして表情や所作と衣装が噛み合う瞬間——そこに“目覚め”の説得力が宿る、という見立てです。
2026年1月のいま、舞台作品の見え方は、映像クリップの拡散も含めて加速しています。その中で、衣装が担う「一瞬で伝える力」と「見返して深まる余韻」は、静かに存在感を増しているのかもしれません。
Reference(s):
'Turandot' in Chongqing: Interview with touring costume designer
cgtn.com








