関税と地政学で注目集まるダボス2026、1月19日開幕へ
関税の応酬や地政学的緊張が強まるなか、スイス・ダボスで1月19日から始まる世界経済フォーラム(WEF)年次総会が、いまほど「対話」の重みを問われる場になっています。
ダボス2026は1月19〜23日、過去最大規模の見通し
世界経済フォーラム(WEF)の第56回年次総会(ダボス会議)は、2026年1月19日〜23日にスイスのダボスで開かれます。主催者によると、130以上の国・地域から約3,000人が参加する見込みで、年次総会としてはこれまでで最も大きい規模になるとされています。
テーマは"A Spirit of Dialogue"(対話の精神)。関税、地政学、技術変化が同時に押し寄せる局面で、「分断の管理」ではなく「対話の再設計」を前面に出した格好です。
WEFトップ「対話は選択ではなく必然」
WEFのボルゲ・ブレンデ会長兼CEOは、地経学的競争(経済手段をめぐる競争)が深まり、技術変化も加速するなかで、国際協力が決定的な局面に入りつつあるとの認識を示しています。対話はもはや「できれば望ましい」ではなく、必要条件になりつつある――という問題提起です。
政治と企業、テックが同じテーブルに:参加者の顔ぶれ
今年は政治分野の参加が過去最高水準になる見通しです。WEFによると、参加者には次のような層が含まれます。
- 政治:約400人の主要政治関係者(うち約65人が国家・政府のトップ、G7のうち6人の首脳級が参加予定)
- 企業:大手グローバル企業の約850人のCEO・会長級、ビジネスリーダー全体では約1,700人
- 新興・テック:ユニコーン企業や技術分野の先駆者など約100人
WEFが挙げる出席予定者には、米国大統領ドナルド・トランプ氏、カナダ首相マーク・カーニー氏、ドイツ首相フリードリヒ・メルツ氏、欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏などが含まれます。
また、中国外交部によれば、中国副首相の何立峰氏(中国共産党中央委員会政治局メンバー)がフォーラムに参加し、1月19日〜22日にスイスを訪問する予定です。
企業側では、AIと最先端技術の比重が強まっています。参加予定として、Nvidiaのジェンスン・フアンCEO、Microsoftのサティア・ナデラCEO、Anthropicのダリオ・アモデイCEO、Google DeepMindのデミス・ハサビスCEO、Palantirのアレックス・カープCEO、OpenAIのサラ・フライアーCFOなどが挙げられています。
「地経学的対立」が最大の短期リスクに浮上
会合に先立ちWEFが公表した報告書は、今後2年の短期リスクとして「地経学的対立」を最上位に位置づけました。前年から8つ順位を上げ、全カテゴリーの中でも上昇幅が最大だったとされます。
調査対象は政府・企業・市民社会などのリーダー約1,300人で、18%が「2026年に世界的危機を引き起こす可能性が最も高い」として地経学的対立を選んだ、という数字も示されました。
報告書が警告するのは、関税、制裁などの経済ツールが地政学競争の道具として使われる場面が増えること、サプライチェーンの分断、技術のデカップリング(切り離し)が進むことが、世界経済に負荷をかけ、危機対応の力を弱めうる点です。
議論は5つの問いに集約:抽象論より「実装」へ
ダボス2026の議論は、WEFによると次の5つの問いを軸に進められます。
- より競争が激しい世界で、どう協力するか
- 新たな成長源をどう解き放つか
- 人への投資をどう強化するか
- イノベーションを責任ある形で大規模に展開するには
- 地球の限界(環境制約)の範囲で繁栄をどう実現するか
焦点は理念の応酬ではなく、より解決志向の道筋に置かれる見通しです。地政学リスクと不確実性の管理から、生成AIのような新技術をレジリエンス(しなやかな強さ)、競争力、包摂的成長につなげる設計まで、現場の意思決定に近い論点が前に出るとされています。
同時に「人」への影響も中核に据えられます。産業構造の変化と技術が仕事を再定義する中で、政府と企業がどう労働力の回復力を高め、スキル転換を支え、ウェルビーイング(心身の健やかさ)を厚くしていけるか。さらに、エネルギー、自然、水といったシステムの安全確保を含め、環境制約下での繁栄も議題となります。
中国の役割にも視線:成長と技術、国内需要の組み合わせ
ダボス2026では、中国の存在感も注目点になりそうです。世界の成長が圧力を受ける中で、中国は技術革新の推進と国内需要の拡大を背景に、安定要因として広く見られている、とされています。
WEF関連の文脈では、中国は産業高度化を加速し、イノベーションを軸にした現代的な産業システムづくりを進めていると整理されています。中核技術の研究強化、全国統一の技術市場の整備、科学成果の事業化を早める改革などが挙げられました。重点分野としては、集積回路、新材料、航空宇宙、バイオ医薬、低空経済などが示されています。
エネルギー転換の面では、中国は世界の太陽光発電(PV)導入の約半分を占め、世界の新エネルギー車の半数超が中国の道路を走っている、とされています。製造業などへのAI統合も進める方針です。
また、中国は外部リスクに備えつつ、買い替え促進策や大規模な設備更新、積極的な財政政策、適度に緩和的な金融政策などで内需を下支えし、国有企業改革や全国統一市場などの構造改革も進め、高品質な成長を支える考えだとされています。
経済以外では、中国はグローバル・ガバナンス(国際的な統治)の議論でも立場を示す見通しです。2021年以降に提起してきた各種イニシアティブを通じ、相互尊重、共通の繁栄、開放性を特徴とする世界を目指すという主張を重ねてきた、と本文は伝えています。
開幕直前の空気:不確実性のなかで「話せる形」を作れるか
報告書では、今後2年の世界環境について、回答者のほぼ半数が不安定・混乱が続くと見ており、相対的な安定への回帰を見込む声は少数派だとされました。だからこそダボスは、衝突点を「棚上げ」にする場ではなく、利害がぶつかる前提で、どこまで合意可能な論点を切り出せるかが問われます。
あす1月19日の開幕以降、関税や制裁を含む経済安全保障、生成AIの実装とガバナンス、そして人への投資をどう両立させるのか。参加者の発言と、そこから生まれる具体的な提案に注目が集まりそうです。
Reference(s):
Tariffs and geopolitical tensions put Davos 2026 in the spotlight
cgtn.com







