水深1,500mの沈没船が語る歴史:南シナ海の陶磁器と保存科学 video poster
南シナ海の水深約1,500メートルで見つかった、500年以上前の沈没船由来の陶磁器が、保存科学(文化財を傷めず守り、情報を引き出す技術)によって「物語」を取り戻しつつあります。深海から引き揚げられた“美しい器”は、いま歴史資料として再読され始めています。
水深1,500mから引き揚げられた「500年以上前」の陶磁器
今回注目されているのは、南シナ海の海底に眠っていた沈没船から回収された陶磁器です。船が沈んだのは500年以上前とされ、長い時間を海中で過ごした遺物が、現在になって地上へ戻ってきました。
深海は光が届きにくく、環境も特殊です。だからこそ、見つかった陶磁器は「見た目の美しさ」だけでなく、当時の暮らしや流通、航海の手がかりを内側に抱えた“記録媒体”としても価値があるとみられています。
なぜ今、保存科学がカギになるのか
海から上がった陶磁器は、その瞬間から劣化リスクにさらされます。海水に含まれる塩分が内部に残ったままだと、乾燥の過程でひび割れや表面の剥離につながることがあります。そこで重要になるのが、保存科学の工程です。
保存科学が行うこと(代表例)
- 塩分の管理:海水由来の塩類を段階的に取り除き、乾燥で傷まない状態に近づけます。
- 安定化:脆くなった部分を補強し、形状を保てるようにします。
- 記録化:形・寸法・表面の痕跡を丁寧に記録し、比較研究につなげます。
- 科学分析:素材や製法を調べることで、由来や流通の可能性を検討します。
「きれい」だけでは終わらない:器が持つ情報
陶磁器は、用途や製作技術、運搬のされ方などが表面や形に残りやすい遺物です。沈没船から出る陶磁器のまとまりは、当時の物流や需要を推測する材料になり得ます。ただし、どこで作られ、どこへ向かっていたのかといった結論は、断片的な情報だけで決めつけられません。
だからこそ、保存処置と並行して、個々の破片の特徴を積み上げていく地道な作業が必要になります。深海から上がった遺物は、回収した時点では「答え」ではなく、ようやく読み解きが始まる「問い」に近い存在です。
“1,500m潜って歴史を読む”という時代感
陸上の遺跡調査と同じく、海底の遺物もまた時間を閉じ込めています。水深1,500m級の現場は、人間の身体感覚から遠い場所です。その距離を越えて遺物を扱うには、回収技術だけでなく、回収後に情報を失わない保存科学が欠かせません。
美術品としての鑑賞と、歴史資料としての読み解き。その間をつなぐのが、いま進んでいる保存と分析のプロセスだと言えるでしょう。
今後の焦点:保存の先にある「ストーリーの復元」
今後は、保存処置で状態を安定させたうえで、素材の特徴や痕跡の比較などから、陶磁器が持つ背景情報を少しずつ組み立てていくことになります。深海の沈没船から回収された器は、過去を飾るだけでなく、過去を説明するための手がかりとして、これからも静かに注目を集めそうです。
Reference(s):
cgtn.com







