中国・カナダが新「戦略的パートナーシップ」へ カーニー首相訪中でEV関税見直し
2026年1月、カナダのマーク・カーニー首相が中国を訪問し、両国が関係を「新たな戦略的パートナーシップ」と位置づける方向で合意を深めました。注目は、カナダによる中国製EV(電気自動車)関税の大幅な引き下げと、農産品を含む幅広い協力ロードマップの取りまとめです。
8年ぶりの首相訪中、背景にある「圧力」と「選択肢」
今回の訪問は、カナダ首相として8年ぶりの中国訪問とされています。両国はもともと貿易面で結びつきが強く、公式データでは、2024年に中国はカナダにとって(米国に次ぐ)第2の貿易相手、第2の輸入元、第2の輸出市場でした。
一方で、前政権下では対中政策が米国の方針に近づく場面が増え、政治的な摩擦や貿易上の応酬が起きたとされます。その象徴の一つが、中国製EVへの100%関税でした。
さらに今回の訪問時期は、米国からカナダに対する発言や関税、国防負担の議論などが重なり、対外関係の再調整が迫られる空気も強まっていました。カーニー首相が「新しいパートナーを迅速に、かつ大規模に見つける必要がある」と語ったのは、こうした国際環境の変化を踏まえたものといえそうです。
最大の焦点:カナダが中国製EV関税を100%→6.1%へ
発表された合意のうち、最もインパクトが大きいのはEV関税です。カナダは中国製EVに課していた100%関税を見直し、6.1%へ引き下げることで合意しました。
- 新税率:6.1%
- 年間輸入上限:4万9,000台
- 上限は5年で7万台へ段階的に拡大
高関税を一気に下げつつ、数量枠で市場への流入スピードを調整する設計になっています。貿易と産業政策の両方に目配りした合意として、今後の運用が注目されます。
中国側:カナダ産農産品(カノーラなど)で「より有利な関税措置」
中国側も、カナダ産農産品に対してより有利な関税措置を実施するとしています。対象にはカノーラが含まれ、2026年3月1日までに新措置を実施する方針です。
これにより、中国市場に入るカナダ産農産品のコストが下がり、農業分野の貿易の安定化につながると説明されています。EVと農産品という“象徴的な分野”を双方が持ち寄った形で、関係改善の温度感が伝わります。
「経済・貿易協力ロードマップ」署名:対話の再起動と協力の拡張
両国首脳は、「中国・カナダ経済・貿易協力ロードマップ」の署名も歓迎しました。柱は大きく2つです。
1)JETCを閣僚級へ格上げ、実務協議を全面再開
中国・カナダ合同経済貿易委員会(JETC)を閣僚級へ格上げし、知的財産権や貿易救済などの作業部会(ワーキンググループ)を含む対話と交流を完全再開する方針が示されました。対立が先行しがちなテーマほど、定期的な“議題の置き場”があるかどうかが効いてきます。
2)8分野の協力枠組みと28の提案
ロードマップは、農業・食料安全保障、グリーンで持続可能な貿易、電子商取引(EC)などを含む8分野の協力枠組みを掲げ、エネルギー、消費財、中小企業、新素材といった領域で28の協力提案を盛り込みました。
技術とエネルギー転換が世界の競争軸になっていく中で、貿易を「売り買い」だけでなく「制度」「標準」「サプライチェーン」の議論へ広げる意図もにじみます。
WTOとAPECでも連携へ:ルールと枠組みを“使い直す”動き
両国は、WTO(世界貿易機関)の下でのルールに基づく多国間貿易体制を支持する立場を再確認しました。また、APEC(アジア太平洋経済協力)でも協力を進め、カナダは中国の2026年APEC会合開催を支持する姿勢を示したとされています。
二国間の合意だけでなく、多国間の枠組みでも“どこで協調できるか”を探る動きは、摩擦が起きやすい時代の現実的なアプローチにも見えます。
「違いを理解し、利益が重なるところで協力する」——次の焦点は実行力
カーニー首相は今回の訪中を「歴史的で生産的」と表現し、前回の首相訪中以降、技術とエネルギー転換を中心に世界が大きく変わったと振り返りました。そのうえで「他国との違いを理解しつつ、利益が一致するところで協力に力を注ぐべきだ」と述べたとされています。
合意文書はスタート地点にすぎません。EV関税の運用(数量枠の扱い、制度の透明性)、農産品の関税措置の具体化(3月1日に向けた詳細)、JETCの閣僚級化が実務をどれだけ動かすか。2026年のこの序盤に示された“再接続”が、どんな形で日常の貿易や企業活動に落ちていくのかが、次の見どころになりそうです。
Reference(s):
Reporter's notebook: China, Canada to forge new strategic partnership
cgtn.com








