中国の研究チーム、SupTACsで標的タンパク質分解を精密制御へ前進
病気に関わる特定のタンパク質だけを、体内の「狙った場所・狙った時間」に分解できる——。そんな標的タンパク質分解の精密化に向けた研究成果が最近、学術誌「Cell」に掲載されました。
何が起きた?「タンパク質を消す」技術を、より狙い撃ちに
報告したのは、中国科学院化学研究所(ICCAS)の研究チームです。研究では、生体内(in vivo)で特定の「病気の原因となるタンパク質」を選択的に分解・除去する新しい戦略を示したとされています。ポイントは、空間(どこで)と時間(いつ)の精度を高め、必要なタイミングと部位で作用させる考え方です。
背景:タンパク質は重要だが、薬で“止めにくい”標的も多い
タンパク質は、体の中で機能を担う部品であり、調整役でもあります。一方で、タンパク質の異常な発現や機能不全は、がんや神経変性疾患など多くの病気の土台になります。
従来の小分子薬は、タンパク質の「活性ポケット」に結合して働きを抑える設計が一般的です。しかし研究チームは、病気に関わるタンパク質の中には、こうした結合点が乏しく、従来型アプローチでは狙いにくいものがあると説明しています。
新戦略「SupTACs」とは:細胞の分解装置を“呼び寄せる”発想
研究チームが開発したのは、supramolecular targeting chimeras(SupTACs)と呼ぶツールです。狙ったタンパク質を、細胞内の分解機構であるユビキチン-プロテアソーム系(不要なタンパク質に目印を付け、分解する仕組み)に近づけることで、選択的な分解を促すとされています。
研究が示した要点(発表内容ベース)
- 標的タンパク質を選択的に分解・除去する戦略を提示
- いつ・どこで作用させるかの精密な制御を重視
- 複数の動物モデルで安定的かつ効率的な分解を示したと報告
オフターゲット(意図しない作用)をどう減らすか、という発想
ICCASの王明(Wang Ming)教授(本研究の責任著者)は、既存の標的タンパク質分解戦略には、作用する時間や場所の制御が十分でない場合があり、それがin vivoでの有効性や、意図しない作用(オフターゲット)のリスクにつながり得る、という趣旨の説明をしています。今回の研究は、そうした課題意識に対する一つの提案として位置づけられています。
非ヒト霊長類でも示したという点が示唆するもの
発表によれば、SupTACsは複数の動物モデルに加え、非ヒト霊長類でも安定的かつ効率的なタンパク質分解を示したとされています。王教授は、標的タンパク質分解技術の臨床応用(臨床への移行)に向けた重要な一歩になり得るとも述べています。
いま注目される理由:治療戦略が「抑える」から「取り除く」へ
この分野の面白さは、タンパク質の働きを“止める”だけでなく、病気に関わるタンパク質そのものを“減らす・消す”という設計が可能になる点にあります。もちろん、臨床応用までには安全性や制御性、対象疾患ごとの適用可能性など、越えるべき検討が残ります。それでも、がんから神経変性疾患まで幅広い領域で、治療設計の選択肢が増える可能性を示す研究として、静かに注目を集めそうです。
Reference(s):
Chinese scientists achieve breakthrough in precise protein degradation
cgtn.com







