歯ぐきの腫れに見えがちな歯周炎(歯周病)は、世界の成人の約半数に影響しうるとされ、全身の健康とも関連が指摘されます。届きにくい「歯周ポケット」の奥へ、光を使って狙い撃ちする治療法「抗菌光線力学療法(aPDT)」が、次の選択肢として注目されています。
歯周病は“口の中だけの問題”ではない
歯周炎は、放置すると歯を失う原因になるだけでなく、糖尿病や心血管疾患、さらに認知機能の不調といった全身の問題とも近い関係があるとされています。
また、世界保健機関(WHO)によれば、重度の歯周病は世界で10億件を超える規模にのぼると推計され、主なリスク要因として不十分な口腔衛生とたばこが挙げられています。
なぜ従来のクリーニングだけでは“取り切れない”のか
患者が「不快感のあるスケーリングやルートプレーニング(歯石除去など)以外に方法はないのか」と感じる背景には、構造上の難しさがあります。
- 深い歯周ポケットや根の分岐部(furcation)など、器具が届きにくい“隠れ場所”がある
- そこに細菌が定着し、バイオフィルム(細菌を守る膜のような層)を作る
- 全身投与の薬に頼ると、薬剤耐性や副作用の懸念が出やすい
つまり課題は、細菌そのものだけでなく、細菌が身を守る「バイオフィルムの要塞」をどう崩すか、という点にあります。
aPDT(抗菌光線力学療法)とは:光で“狙って壊す”発想
aPDTは、100年以上前に見いだされた考え方に、現代の技術を組み合わせた方法です。イメージは「標的を定めた破壊」です。
- まず、光感受性物質(光増感剤)を細菌の表面に結びつける
- 次に光を当てると、光増感剤が活性酸素種を発生させる
- その作用で細菌を壊し、周囲の健康な組織へのダメージは抑えやすい。さらに耐性が生じにくいとされる
「強い薬で広く叩く」よりも、「必要な場所で必要な作用を起こす」ことを狙う点が特徴です。
鍵は“深部に届けて、とどめる”こと——ナノ技術が期待される領域
一方で、この“精密攻撃”を歯周ポケットの奥(複雑で湿った環境)まで届けるのは簡単ではありません。薬剤がうまく入り込めなかったり、十分にとどまれなかったりすると、有効な濃度を保てず効果が伸びにくいからです。
このため、aPDTを基本治療の補助として十分に生かすには、深部へ運び、局所で維持する工夫が重要になります。ここで「ナノテクノロジー(微小材料などの工夫)」が、薬剤の到達・滞留の課題を解く手がかりとして語られることがあります。
2026年のいま、日常ケアと先端治療が交差する
2026年現在も、歯周病対策の土台は毎日の歯みがきや定期的なプロケアです。ただ、取り残されやすい“見えない場所”がある以上、光を使ったaPDTのような補助的アプローチが、今後の選択肢を広げる可能性があります。
「どこまでを日常ケアで守り、どこからを医療技術で補うのか」。口の中の小さな“境界線”が、健康観そのものを静かに更新していくのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








