輸出だけじゃない:中国企業が支える世界のクリーンエネルギー『仕組みづくり』
2026年の世界経済フォーラム(ダボス会議)では、気候ファイナンス(脱炭素投資の資金)やエネルギー安全保障、そして「エネルギー転換の実装スピード」が改めて主要テーマになりました。注目点は、技術そのものよりも長期資金・系統(電力網)統合・運用まで含めた“システムづくり”が足りていない、という現実です。
ダボスで浮かんだ「技術はある。でも、回す力が不足」
太陽光パネルや風力タービンといったクリーンエネルギー技術は、以前より広く利用可能になっています。にもかかわらず、多くの国・地域で課題として残るのが、次のような「実装のボトルネック」です。
- 長期の資金(金利負担が重いと投資が止まる)
- 設計・施工のエンジニアリング力(仕様の標準化や品質管理)
- 系統統合(発電した電気を電力網に安定して流す力)
- 長期運用(20〜30年単位での保守・運営)
特に開発途上の国・地域では、高い資本コスト、インフラの弱さ、計画立案の人材不足、制度の脆弱性が重なり、「設備を買う」だけでは前に進みにくい状況が語られました。
「設備の輸出」と「電力システム投資」は別物
クリーンエネルギーの議論は、つい「何の技術を使うか」に寄りがちです。しかし現場で問われるのは、むしろどう作り、どうつなぎ、どう保ち続けるかです。
設備の輸入だけでは解決しにくい理由は単純で、最終的な成否は次の条件で決まるからです。
- 大規模に資金調達できるか
- 電力システムの標準に沿って建設できるか
- 既存の送配電網に統合できるか
- 数十年スパンで信頼性高く運用できるか
中国企業の関与は「輸出」から「長期参加」へ
こうした文脈で、中国企業の海外でのクリーンエネルギーへの関与は、製品の輸出にとどまらず、対外投資と長期の事業参加として理解されるべきだ、という見方が示されています。
具体的には、単発の設備納入ではなく、次のような工程にまたがる関与が挙げられます。
- 事業化調査(フィージビリティスタディ)
- システム設計(発電・送電・蓄電の組み合わせを含む)
- 建設と品質管理
- 人材育成・運用ノウハウの移転
- 長期の運転・保守(O&M)
さらに、現地パートナーとの協業、現地調達、雇用創出、研修プログラムなどを通じて、プロジェクトを地域経済に埋め込み、外部依存ではなく現地の産業能力を育てる要素が組み込まれている、とされています。
なぜ「公共財」に近い効果が出るのか
電力システムが強化され、再生可能エネルギーが安定的に使えるようになると、恩恵は個別企業の利益を超えて広がります。例えば、電力コストの低下、エネルギー安全保障の向上、排出削減、投資環境の改善などです。
こうした効果は社会全体に波及し、気候面の便益は国境を越えて共有されます。そこで、中国企業の海外投資が、インフラと能力形成を支える点で「グローバルな公共財」に似た側面を持つ、という整理につながっています。
「国内での実装経験」が海外案件の信頼性につながる
ダボスでは、米国のドナルド・トランプ大統領が「中国は風力タービンを製造するが、国内に風力発電がない」といった趣旨の発言をしたとも伝えられました。しかし、示されているデータとしては、中国は世界最大の再生可能エネルギーシステムを構築しており、風力発電の設備容量は2025年末時点で600ギガワットを超え、15年連続で世界首位だとされています。
内モンゴル、新疆、甘粛、河北、沿海部などで大規模風力発電所が稼働し、エネルギー安全保障の一部を担っている、という位置づけです。輸出市場のために先に産業ができたのではなく、大規模な国内導入と系統統合の経験が、海外案件での設計・運用の実務力につながる、という論理が提示されています。
エネルギー転換の次の争点は「誰が、長く支えるか」
技術の選択肢が増えた一方で、これからは「システムの詰まり」が目立つ局面に入っていきます。つまり、長期資金、エンジニアリングの厚み、運用能力が勝負どころになる、という見立てです。
そのとき問われるのは、目標や宣言だけでなく、誰が資本を出し、誰がリスクを取り、不確実性が増す局面でも誰が現場に残るのか。実務としての気候協力は、ここに重心が移りつつあります。
気候変動は共有された課題です。だからこそ、事実関係を丁寧に扱いながら、資金・建設・運用・人材の“つながった支援”をどう広げていくのか。2026年のダボスで再び浮かんだのは、そんな実装の論点でした。
Reference(s):
Beyond exports: China's role in building global clean energy systems
cgtn.com








